平成30年4月より精神障害者の雇用が義務化され、障害者雇用率の算定基礎に精神障害者が加わります。これにともなって、企業における障害者雇用率が現在の2.0%から引き上げられます。
障害者法定雇用率の見直し
現在、身体障害者および知的障害者は、一般労働者と同じように常用労働者となる機会があり、常用労働者の数に対する割合(障害者雇用率)を設定して、事業主等に障害者雇用率達成義務を課すことにより、それが保障するものとされています。
これに平成30年4月から精神障害者が加わります。それにともない障害者雇用率の算定基礎に精神障害者が加わること等の事情を踏まえ、「障害者雇用の促進等に関する法律施行令(昭和35年政令第292号)」等が改正されます。
出所:東京労働局
改正のポイントとしては、以下の2点です。
・精神障害者が雇用義務に含まれる
・法定雇用率の算定の基礎に精神障害者を含めて計算する
精神障害者は雇用義務とみなされていませんでしたが、すでに、平成18年度から身体障害者、知的障害者と同様に精神障害者を雇用すると、雇用率のポイントにはカウントされています。
障害者雇用促進法の主な改正内容
「障害者雇用の促進等に関する法律施行令」(以下、障害者雇用促進法)の改正点についてみていきましょう。
現在の民間事業者における障害者雇用率は2.0%ですが、これが平成30年4月より2.3%へ引き上がります。ただし、経過措置として、しばらくの間は、民間事業者における障害者雇用率は2.2%となります。
出所:東京労働局
そのため障害者の雇用状況報告義務を負う事業主は、現在は常時雇用する労働者数が50人以上の民間事業主が対象となっていましたが、経過措置適用期間の平成30年4月からは常時雇用する労働者数が46人以上の民間事業主が対象となります。
また、経過措置廃止後は、常時雇用する労働者数が44人以上の民間事業主が対象となります。
障害者の雇用状況報告義務のある事業主が求められること
毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告
事業主である企業は、毎年1回6月1日現在の身体障害者、知的障害者及び精神障害者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告書)を本社の所在地を管轄するハローワークに報告する必要があります。この報告は、「ロクイチ調査」と呼ばれており、毎年11月か12月頃に全国の障害者雇用の状況として報告が発表されます。
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障害者雇用の企業担当者がおそれる社名公表とは
障害者雇用推進者を選任する努力義務
原則として常用労働者数50人以上の規模の民間企業では、障害者雇用推進者を選任するよう努めなければならないとしています(障害者雇用促進法78条の3) 。
つまり、常用労働者数50人以上の規模の民間企業では「努力義務」となります。完全な任意ではありませんが、「法的義務」でもありません。
ちなみに障害者職業生活相談員は、事業主は「5人以上の障害者を雇用する事業所」に障害者職業生活相談員を選任し、その者に障害者の職業生活全般についての相談・指導を行わせなければならないとしています(同法第79条)。 こちらは「5人以上の障害者を雇用する事業所」の場合「法的義務」となります。
障害者職業生活相談員の資格を取得するには、障害者職業生活相談員資格認定講習を受けることが必要です。障害者職業生活相談員資格認定講習は、各都道府県内の会場で毎年実施しています。
平成29年度の実施はこちら
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平成29年度障害者職業生活相談員資格認定講習の実施予定一覧
障害者職業生活相談員資格認定講習の回数や人数は決められていますので、受講を希望する場合は、早めにお問い合わせされることをおすすめします。
近年、障害者雇用に取り組む企業が増え、地域によっては、障害者職業生活相談員資格認定講習が受講できにくくなる状況が見られます。
障害者雇用のカウント
障害者雇用とカウントされるには、「障害者手帳」を保持していることが必要となります。障害等級に該当する人でも、障害者手帳を所有していなければ、障害者雇用率の算定としてカウントすることができないので、注意が必要です。
「障害者手帳」は、身体障害、知的障害、精神障害の3つの種類に分類することができます。雇用人数のカウント方法は、常時雇用する労働者として、フルタイムで働く障害者を雇用した場合、1人に雇うごとに1カウントと数えます。
雇用率のカウントは、以下のとおりです。
出所:東京労働局
身体障害者・・・身体障害者手帳1級~6級、及び7級に掲げる障害が2以上重複
重度身体障害者・・・身体障害者手帳1級、2級、及び3級に掲げる障害が2以上重複
知的障害者・・・療育手帳※知的障害者判定機関により判定を受けた者も含む
重度知的障害者・・・療育手帳で重度知的障害※知的障害者判定機関により重度知的障害の判定を受けた者も含む
精神障害者・・・精神障害者保健福祉手帳所持者を算定
今回の法改正で変更のない点
障害者雇用納付金および障害者雇用調整金
障害者雇用納付金および障害者雇用調整金の額には変更はありません。
障害者雇用納付金、障害者雇用調整金についての詳細はこちらから
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徴収された障害者雇用納付金の活用方法とは?
障害者雇用納付金の支払い義務の発生する事業主の範囲については変更がありません。常時雇用している労働者数が100人を超える障害者雇用率(2.0%)未達成の事業主は、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて1人につき月額50,000円の障害者雇用納付金を納付しなければならないこととされています。
常時雇用している労働者数が100人を超え200人以下の事業主については、平成27年4月1日から平成32年3月31日まで障害者雇用納付金の減額特例(不足する障害者1人につき月額「50,000円」を「40,000円」に減額)が適用されます。
まとめ
平成30年4月からの障害者雇用促進法の改正にともない、障害者法定雇用率の引き上げについて見てきました。
障害者法定雇用率が引き上げられるのは、精神障害者の雇用が義務化され、障害者雇用率の算定基礎に精神障害者が加わるからです。これにともない企業における障害者雇用率が現在の2.0%から2.3%に引き上げられます。(平成30年4月からは2.2%、3年以内に2.3%)。
障害者雇用は始めようと思ってもすぐにできるものではありません。雇用までには、それなりの準備が必要となりますので、早めに準備を進めることをおすすめします。
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