【中小企業の障害者雇用】障害者雇用をはじめるときのきっかけはどのようなもの?

障害者雇用を始めるときには、障害者にどのような業務をさせるのか、社員にはどのように説明したらよいのか、経営層にどうやったら理解してもらえるのか・・・など、考えていかなければならない点が多く、ハードルが高いことがよくあります。

では、実際に中小企業で障害者雇用をはじめることになった企業は、どのようなきっかけで行っているのでしょうか。

中小企業で障害者雇用をはじめることになった理由のトップは?

人材サービス会社「エン・ジャパン」(東京)が、中小企業を対象に、8~9月に従業員50人以上の企業にインターネットで実施したアンケート結果から見ていきたいと思います。このアンケートは、中小企業を中心に480社が回答した結果となります。

参照:障がい者雇用について(エン・ジャパン)

これによると、障害者雇用をはじめるきっかけとしては、次のことがあげられました。

・法定雇用率を達成するため
・企業としての社会的責任を果たすため
・既存社員が障害者になった
・障害に関係なく、雇用条件や人柄を見て採用している
・ハローワークから紹介があった

その他に、自由回答では「障害者雇用の人数が0名だったため、採用しないと業務改善命令を出すと監督署より指導があった」「関連会社にて同法人の経営陣が障害者の就労支援を行っている」などがありました。

障害者雇用はやらされている感が強い?

回答として多いのは、圧倒的に【法定雇用率を達成するため】【企業としての社会的責任を果たすため】が多くなっています。
確かに、民間企業では、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)に定める法定雇用率を上回る障害者を雇用することが定められています。このため民間企業では、法定雇用率2.2%の障害者を雇用する義務があります。

しかし、法律で決められているから、法定雇用率を達成する、企業としての社会的責任を果たすためという理由では、「障害者雇用をやらなければならないからやっている」というやらされ感が強く、なかなか障害者雇用が社内で広がらないことにつながっているように感じます。

障害者雇用に対する温度差も原因

また、障害者雇用の状況をよく知っている管理部や人事部のスタッフは、直接業務として関わっているので、障害者雇用に対しての関心は高い傾向にあります。しかし、そうでない社員にとっては、普段の業務で忙しいのに、どうして障害者雇用を行う必要があるのか・・・と、なかなか理解することが難しいのが現実です。この社内の温度差をうめていくことが必要になってきます。

ちなみに私がいろいろな企業を見てきた中で、障害者雇用を進めるきっかけになる一番の強制力は「企業が社名公表になる」「雇入れ計画作成命令の対象になりそうだ」「厚生労働省、労働局から呼び出しがある」などの、行政からすでに何らかの指導などを受けていて、その次のステップに入りそうという段階や時期のときでした。

社名公表の流れや、雇入れ計画書については、下記の記事も参考にしてください。
↓  ↓  ↓
障害者雇用の企業担当者がおそれる社名公表とは

このような場合、本当に障害者雇用を真剣に取り組もうとする企業と、とりあえず雇用率を達成するためにという企業にわかれることが多くあります。とりあえず雇用率を・・・と考える企業の場合、障害者を受け入れる準備ができていないのに採用してしまうため、付け焼き刃的な雇用になってしまう傾向が見られます。そして、多くの場合、すぐに障害者が退職してしまったり、受け入れた部署の社員もその対応で疲れ切ってしまうという悪循環を生み出すことになってしまいます。ですから、障害者雇用を行なうときには、特にはじめて雇用するときには、十分な準備を行う必要があります。

とはいえ、障害者雇用は大変なことばかりなのでしょうか。障害者雇用をしていてよかったことについて、見ていきたいと思います。

障害者雇用をしてよかったこと

「エン・ジャパン」(東京)が、中小企業を対象に実施したアンケート結果から、「障害者雇用をしてよかったこと」と回答した内容について見ていきたいと思います。

•障がい者に対する理解が深まったことと、様々な団体と繋がりが持てたこと。
•弊社は障がいの中で、精神障がい社員のウェイトが高いのですが、一つのことを一生懸命にしてくれます。従って、一度覚えたら間違いは滅多なことで発生しません。
•全従業員にとって働きやすく安全な職場になった。
•雇用すると、お金がもらえる点。
•仕事が出来る出来ないは、障がいがある無いは関係ないという事を従業員に認知してもらえたこと。
•業容拡大。客先との仕様で求められていない業務を担ってもらうことで客先から高評価を得ることができた。
•障害者のための職種開発が、結果として健康上の問題が生じた既存社員の雇用の受け皿になることがあった。
•聴覚障がい者を雇用することになって思い切って手話を覚えた。息子の少年野球のチームメイトに聴覚障がいを持った子がいて通訳として役に立った。

職場が働きやすい場所になる

障害者を雇用することによって、職場の環境を見直す企業は少なくありません。きっかけは、障害者を雇用することあったとしても、それによって改善することが、結果的に職場にいる全員にとって働きやすくなることがあります。

このアンケートをみても、「全従業員にとって働きやすく安全な職場になった。」「障害者のための職種開発が、結果として健康上の問題が生じた既存社員の雇用の受け皿になることがあった。」という回答がありますが、それを示している一つの例と言えるでしょう。

障害者が思ったよりも仕事ができることに気づいた

障害者雇用をはじめて取り組もうとする企業に多いのが、「障害者だから◯◯の仕事はできない、難しいだろう・・・」という心配をすることです。もちろん経験や特性、専門性によって、誰でもできる業務ばかりではありませんが、まずはこちらが思い込んでしまわないで、試しにやらせてみるということも大切です。

おそらく、次のように回答した企業でも、はじめに思っていたよりも仕事ができた障害者社員がいたのではないかと考えられます。
「精神障がい社員のウェイトが高いのですが、一つのことを一生懸命にしてくれます。従って、一度覚えたら間違いは滅多なことで発生しません。」
「仕事が出来る出来ないは、障がいがある無いは関係ないという事を従業員に認知してもらえたこと。」

確かに、今まで行っていた業務のやり方をそのまま障害者社員にやらせることは難しいこともあるかもしれません。しかし、業務を組み替えたり、定型的な部分だけを切り取ることによって、業務全体の効率化を図れることもあります。うちの会社では難しいと判断する前に、一度検討してみるとよいかもしれません。

障害者を雇用して大変だったこと

逆に障害者雇用をして大変だったことは、どのようなことでしょうか。その点も見ていきたいと思います。

•特に精神疾患の方はとても大変でした。専門の相談員の方のサポートを受けたり、フォローを常にしないといけないため。また出来る業務も限られてくるので、その方の負担にならないような業務を探すという業務も増えました。継続的に就業も難しかったりと、精神疾患の方の雇用は課題が多く残っています。
•目の不自由な障がい者の方が通勤時に違法駐車している車に杖をぶつけてしまい、会社の外、通勤経路でトラブルがありました。
•障害も様々で対応が無限にある。採用しようにも候補者がいない。
•お仕事になじめず比較的短い半年ほどで退職された方がいたこと。完全な一般就労であり、仕事の面ではかなり早くから対等に扱っていることも少し難しかったかと思います。
•バリアフリー対策。
•よく休むため、雇用のカウントができないことがある。
•法定雇用率を守るため、質ではなく数として雇用したことがあるが、スキルがとても低く納付金を払ったほうが良かったかも、と思ったことがある。
•仕事の与え方に工夫が必要である。障がいと仕事能力のバランスを上手く見出して,必要な仕事を割り振る事が大変である。

精神障害者が増加、それに対応する方法を検討しておく

精神障害者の雇用が増加しているので、それに対応することを事前に考えておくことが必要になってきます。

精神障害者を雇用した企業の意見として、次のような意見がありました。

「特に精神疾患の方はとても大変でした。専門の相談員の方のサポートを受けたり、フォローを常にしないといけないため。また出来る業務も限られてくるので、その方の負担にならないような業務を探すという業務も増えました。継続的に就業も難しかったりと、精神疾患の方の雇用は課題が多く残っています。」

確かに精神障害の継続雇用は、他の障害種別に比べて難しいと言われています。しかし、事前に実習などを行って、1日どのくらいの業務を行えるのか、仕事中の休憩のペースや勤務時間などを本人とよく話し合い、調整することによって、回避されることが多くあります。

また、就労支援機関などに所属している人も多いので、本人からだけでなく、支援機関からの情報も受けながら行なうと、さらに精度は高くなるでしょう。入社後も支援機関と連携することによって、定着支援をサポートしてもらうことも可能です。

まとめ

中小企業で障害者雇用をはじめるきっかけが、どのようなものだったのかについて見てきました。

障害者雇用をはじめるきっかけとして多かった回答は、【法定雇用率を達成するため】【企業としての社会的責任を果たすため】でした。「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)に定める法定雇用率を上回る障害者を雇用することが定められており、この拘束力が強いことがわかります。

行政からすでに指導などを受けていると、とりあえず雇用率を・・・と考えてしまう企業も見られますが、このような場合、障害者を受け入れる準備ができていないのに採用してしまうため、付け焼き刃的な雇用になってしまう傾向がよく見られます。そして、結局すぐに障害者が退職してしまったり、受け入れた部署の社員もその対応で疲れ切ってしまうという悪循環にはいりがちです。ですから、障害者雇用を行なうときには、十分に準備を行えるときから障害者雇用について検討することをおすすめします。

また、障害者雇用は大変なこともありますが、企業にとっても社員にとってもメリットとなることもあります。法律を遵守することはもちろん大切ですが、企業としての全体の仕事のあり方、社員の働きやすさなどの面からも考えていく機会にしてほしいと思います。

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