障害者雇用を行う時に、企業は障害に合わせた配慮を行う必要があります。一方で、障害者だから、配慮されるのは当然という態度を取られ、社内の雰囲気が悪くなった。どのように接したらよいのかという相談を受けることもあります。今回は、障害者雇用だから配慮されて当たり前と考えている障害者にどのように接したらよいのかを考えていきます。
障害者の合理的配慮は、すべて受け入れなければいけないのか?
障害枠で働く当事者の方から、障害者として採用されるので、自分の希望や要望は聞いてもらえて当然と感じている人に出会うことがあります。
特に、障害者雇用に長年取り組んでいたり、複数人雇用している企業などに就職した障害者の方からは、「障害者雇用に取り組んでいると聞いて入社したのに、あまり配慮がされていない」という話をよく聞きます。
このような障害者には、どのように対応したらよいのでしょうか。
まずは、合理的配慮について、企業側、障害当事者側の意見をお互いにしっかり話し合っておくことが大切です。
合理的配慮とは、平成28年に「障害者雇用促進法」の一部が改正されたときに定められたもので、障害者が職場で働くにあたり何らかの支障がある場合には、その支障を改善するための措置を講ずることを義務づけています。
ただし、合理的配慮とされる措置が事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなる場合には除かれます。
合理的とは、「道理や論理にかなっているさま」や「むだなく能率的であるさま」を指します。ですから、合理的配慮を行なうために、事業活動に多大な影響が出る場合や、過度に社員の負担がかかる、費用負担が非常にかかる場合など明らかに対応することが困難な場合には、該当しません。
どの程度が過度な負担にあたるのかは、企業の規模や財務状況等により異なるため、一概にどこまでが合理的配慮に当たるかどうかは、状況に応じたものとなります。そのため障害の特性上必要な配慮であっても、受け入れ側の企業が大きな負担になる場合には該当しないこともあります。この判断は、各企業で行うことになります。
もし、障害者本人から申し出のあった配慮について、企業で対応できないことも生じてくることもあるでしょう。このような時には、どうしてできないのかを申し出のあった障害者本人へ説明する義務を果たす必要があります。
大事なのは伝えることではなく「伝わったかどうか」
説明をする時に気をつけておきたい点は、伝えることを目的とするのではなく、伝わったかどうかを確認することです。企業側として説明したから、障害者本人はわかっただろうと判断するのではなく、申し出のあった障害者本人が本当に理解しているのかまでを見るようにしてください。
合理的配慮でよく見るのが、企業側は説明したつもり(実際にはしっかり説明できていることも多い)でも、障害者本人には伝わっていなかった、または違ったニュアンスで受け止めていたという場合が少なくありません。障害者本人の申し出を検討した結果をわかりやすく伝えるとともに、企業側の意図が本人に伝わったのかを、しっかり確認することが必要です。
いくら伝えても、本人にその意図が伝わっていないのであれば、誤解を生み出す状況を作ってしまったり、誤解が生じたままになると信頼関係にかかわってくることもあります。
また、企業側が気を利かせて配慮しているつもりでも、それが伝っていないと、逆に捉えられることもあるので、コミュニケーションを十分に図るようにしてください。ある企業では、障害者社員が同じ部署に配属したほうが働きやすく、相談しやすいだろうと敢えて一緒の部署にしたものの、当事者にはその意図が伝わっておらず、逆に差別されていると感じている人もいました。
なお、合理的配慮については、厚生労働省から合理的配慮指針事例集が示されています。合理的配慮として想定される例や、障害別ごとにどのような対応ができるのかが書かれていますので、参考にするとよいでしょう。
また、障害者の中には、障害者枠で雇用されると、いろいろな面で配慮されると過度に期待するケースも見られます。障害者雇用といえども「雇用」ですので、仕事をして、それに見合うものが給与として支払われています。この基本を認識できていない場合には、「働く」とはどのようなことかを伝えることも必要です。
まとめ
障害者雇用だから配慮されて当たり前と考えている障害者にどのように対応すればよいのかを考えてきました。
まず、合理的配慮について、企業側、障害当事者側の意見をお互いにしっかり話し合っておくことが大切です。障害者の方から「障害者雇用に取り組んでいると聞いて入社したのに、あまり配慮がされていない」という話を聞くことがよくあります。このようなことが起こる原因はコミュニケーション不足です。時間を十分にとるようにしてください。
また、企業側は説明したつもりでも、障害者本人には伝わっていなかった、または違ったニュアンスで受け止めていたという場合も見られます。障害特性によっては、こちらの意図を同じように捉えるのが難しいこともありますので、企業側の意図が本人に伝わったのかを、しっかり確認することが必要です。いくら伝えても、本人にその意図が伝わっていないのであれば、誤解を生み出す状況を作ってしまうことを覚えておいてください。
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