障害者雇用の中で大切だとあげられる点の1つにコミュニケーションがあります。
コミュニケーションがうまくいかないとどうなるのでしょうか。
コミュニケーション不足は、離職につながりやすい
厚生労働省が公表した「平成25年度障害者雇用実態調査」の中では「障害者の離職理由」の上位に挙げられた点は「職場の雰囲気・人間関係」でした。
出典:平成25年度障害者雇用実態調査(厚生労働省)
障害者雇用が進んでも、人間関係で悩み退職してしまう人が多く見られます。このようにならないためには、障害者にどのような対応を心がけるとよいのか、考えていきたいと思います。
障害者として見るのではなく、◯◯として見ることが大事
まず大事なのは、障害者としてではなく、一人の同僚、職場の仲間としてみることです。
障害者と働くことが初めての人は障害者と聞いただけで、「障害者にどう接するべきか分からない」と悩む人も多いですが、何らかの障害があっても、同じ職場で仕事をするために来ているので、一人の同僚、職場の仲間として見て、接してください。
障害者というと、サポートが必要な人、一人では何もできない人のように捉える人がいますが、職場の何らかの仕事ができる人や見込みがある人を採用しているわけですから、相手の「人格」を尊重し、相手の立場に立って応対してください。
もちろん障害者ということを示しているので、何らかの苦手さがあり、必要な配慮などが求められることもありますが、基本的な接し方は変わりません。何らかの配慮やサポートをしたほうがいいと感じたときでも、こちらの思い込みや押し付けではなく、本人が必要と考えていることを確認してから行うようにするとよいでしょう。
配慮したつもりでも、意図が伝わらないと誤解を与えることになりかねない
なお、こちらが配慮したつもりでも、その意図が伝わっていないと、障害当事者に誤解を与えてしまうことがあります。
例えば、仕事中に話しかけると集中が途切れてしまうので、直接業務に必要なことしか伝えていないという職場がありました。業務自体には問題がありませんでしたが、社内の中で共有されている情報をほとんど聞く機会がないことから、障害当事者は組織の中で疎外感を感じてしまっていました。
また、他の職場では、社内研修の受講に自分に声がかからなかったことで、障害者だから参加できない、差別されていると感じてしまった人がいました。実は、この研修の受講者に該当していなかっただけなのですが、ちょっとしたニュアンスを取り違えたことから組織に対して不信感を抱いてしまうことになりました。
これらの例は、いずれも本当に些細なことに思えるかもしれませんが、このような疎外感や不信感が積み重なることによって、組織の中の居場所の悪さを感じることが多くあります。
苦手さを補う手段を知っておくと、配慮を示しやすくなる
また、障害特性の中にはコミュニケーションが苦手で、配慮を示してほしいことの中にコミュニケーションの手段を具体的に示してくることが多くあります。耳で聞くよりも視覚的に見えたほうが理解しやすいので、メモやホワイトボードにも示してほしいとか、あいまいな表現だとわかりにくいので具体的にはっきり伝えてほしいなどです。
このような配慮についての要望がある場合、職場の一部の人が知っているだけでは、十分な配慮が示せません。一部の職場では、本人への配慮のつもりから、人事部や直属の上司にだけ、このような情報を伝えることも多いのですが、職場で関わる人には知っておいてもらうほうが、適切な配慮を示しやすく、コミュニケーションも取りやすくなります。
障害者雇用で採用される多くの場合、一緒に働く職場の人には自分の苦手さを知ってもらい、必要な配慮を示してほしいという考えの人は多いものです。当事者本人の意見を尊重しながらになりますが、できるだけ職場の人に伝えておいたほうがコミュニケーションや仕事がスムーズに進みます。
企業における合理的配慮の確認方法
なお、基本的に職場で配慮してほしいことは、障害当事者から合理的配慮として申し出をすることになっていますが、必要な配慮を認識し、伝えられない人もいます。このような場合もありますので、実習や採用面接のときに、どのような配慮が必要なのか、またそれを一緒に働く職場の人たちに伝えても問題がないかなどの確認をとっておくとよいでしょう。
合理的配慮は、障害当事者から申し出があったもの全てを行うということではなく、組織の実情に合わせて実施できるかどうかを企業側が検討していくことになります。「過重な負担」にならない範囲で行うものとされていますので、それぞれの企業ごとに検討する必要があります。
動画での解説はこちらから
まとめ
職場で一緒の障害者とコミュニケーションをとるときに大切なことについて考えてきました。障害者の離職の理由として多いのは、職場の雰囲気や人間関係です。職場の雰囲気がよくない原因の一つはコミュニケーションがうまく取られていないことが多く見られます。
まず意識してほしいのは、障害者としてではなく、一人の同僚、職場の仲間として接することです。他の同僚と同じようなコミュニケーションや情報提供をするようにしてください。
それでも障害者手帳をもっているということは、何らかの苦手さや困難さを持っているということです。障害特性の中には配慮を示してほしいことの中にコミュニケーション手段が含まれることもあります。どのような苦手さがあり、それをサポートするための配慮の方法や、それを誰に伝えるのかを確認するようにしてください。
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