平成30年度4月から精神障害者の雇用が義務化されます。これにともない厚生労働省では、企業が精神障害者を雇用するための特例措置を平成30年4月から設けることにしました。職場定着が難しいと言われている精神障害者の雇用を確保しやすくするためのようです。どのような特例措置なのか見ていきたいと思います。
精神障害者の雇用率カウントの特例措置とは
従業員のうち一定割合以上の障害者の雇用を事業主に義務づける法定雇用率は、現在2.0%ですが、改正障害者雇用促進法が施行される平成30年4月から、障害者雇用率に算定する障害者が、身体障害者と知的障害者に加え、精神障害者の雇用も義務化されることに伴い、2.2%に引き上げられます。
法定雇用率は原則として、週30時間以上働く障害者を1人、週20時間以上30時間未満働く障害者は0.5人に換算して算出されています。しかし、平成30年4月以降は精神障害者に限り、週20時間以上30時間未満の労働でも、雇用開始から3年以内か、精神障害者保健福祉手帳を取得して3年以内の人は1人と数えることになります。これは、5年間の時限措置となります。
週30時間未満勤務も1人分の雇用カウントへ引き上げ
精神障害者の短時間労働の雇用カウント引き上げは、長時間の勤務を不安に思っている精神障害により働く機会を生みだすとともに、雇用する企業にとってもメリットが大きいでしょう。
実際に、精神障害者を雇用する企業において、短時間労働から働くことを希望する精神障害者を雇用することが珍しくありません。特に働いた経験がなかったり、数年間休職している場合などは、急に1日8時間の勤務時間をこなすのは、かなり厳しいことが容易に想定されますし、雇用する企業側でも少しずつ仕事にも、職場環境にも慣れていったほうが、職場定着すると考えているからです。そのため、カウント数が減っても、短時間労働から雇用を考える企業も少なくありません。
一方、企業や一緒に働く職場としては、精神障害者に短時間(20~30時間)で働いてもらっても、30時間以上働いてもらっても、雇用管理にかかる時間やリソースは雇用時間にほとんど関係ないという状況も見られます。
また、雇用される精神障害者も体調面を考えて短時間勤務を選ぶ人が増えていますし、この改正は一層の雇用促進につなげるため企業と障害者団体の双方が障害者雇用カウントの引き上げを求めていたという経緯もあります。まずは、平成30年4月から5年間、特例措置として実施して、その後雇用への影響を踏まえて継続を検討してほしいと思います。
出所:労働政策審議会の分科会資料(厚生労働省)
精神障害者の就職状況
精神障害者の職業紹介状況を見ると、この10年間で新規求職者数は3.8倍、就職者数は4.9倍と増加しています。とはいえ、精神障害者の雇用が障害者雇用としてカウントされるようになったのは、平成18年からですから、ようやく精神障害者の雇用が企業や社会的に受け入れられるようになってきたという見方もできるでしょう。
出所:労働政策審議会の分科会資料(厚生労働省)
国の調査では、精神障害者は就職後の定着率が低いことが示されていますが、一方で、短時間勤務は増加しており、勤務時間別で見ると、短時間勤務の定着率がよいことが示されています。
出所:労働政策審議会の分科会資料(厚生労働省)
出所:労働政策審議会の分科会資料(厚生労働省)
今後の課題と対策
今回の精神障害者の短時間勤務のカウント数特例措置については、労働政策審議会の分科会で検討されています。平成30年4月から、雇用率が2.2%に引き上げられ、対象も45.5人以上を雇う企業に拡大するため、分科会では、企業の数合わせへの懸念から「短時間勤務の求人だけが増えるのではないか」との意見も出たそうです。
しかし、今まで働くことが全くできなかった精神障害者の人が短時間でも働くことができるのであれば、勤務時間を増やすまでに時間はかかるかもしれませんが、就職するときのハードルに比べれば、ぐっとハードルは下がっています。
また、今後も障害者雇用率が上がることが十分予想されますので、今のうちに精神障害者を短時間勤務で雇用して、5年間の時限措置の間に育成することもできるでしょう。
まとめ
平成30年4月から精神障害者の雇用率カウントに特例措置が設けられることになりました。その内容について説明をしてきました。
法定雇用率は原則として、週30時間以上働く障害者を1人、週20時間以上30時間未満働く障害者は0.5人に換算して算出されています。しかし、5年間の時限措置となりますが、平成30年4月以降は精神障害者に限り、週20時間以上30時間未満の労働でも、雇用開始から3年以内か、精神障害者保健福祉手帳を取得して3年以内の人は1人と数えることができるようになります。
今後も障害者雇用率が上がることが十分予想されますので、今のうちに5年間の時限措置を有効に活用してください。
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