軽度知的障害とは?特徴・原因・社会での支援をわかりやすく解説

軽度知的障害とは?特徴・原因・社会での支援をわかりやすく解説

2025年01月29日 | 障害別の特性・配慮

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「知的障害」と聞いて、どのようなイメージを持つでしょうか?知的障害という言葉自体は耳にすることがありますが、具体的な特徴について正しく理解している人は少ないのが現状です。知的障害に対する誤解や偏見は、社会全体での正しい認識の欠如から生じていることもあります。
例えば、「知的障害を持つ人は仕事ができない」や「特別な環境でしか生活できない」と考えている人もいますが、実際には、知的障害のある人々が自分の特性を活かして仕事や生活を楽しんでいる事例が数多く存在します。
今回は「知的障害」について定義や特徴、社会的な課題についてわかりやすく解説します。

知的障害の特徴

知的障害とは、知的能力と適応行動に制約がある状態があるため、個人の日常生活や社会生活において困難が生じる障害のことです。
知的障害は知的機能の障害(例:学習や問題解決能力)と適応行動の障害(例:日常生活や社会参加能力)の両方が存在する状態とされており、知能指数(IQ)が70以下であることを基準としています。

知能指数(IQ)を用いた診断では、以下のような基準が一般的です。
IQ70未満:知的障害に該当する可能性があるとされる。
IQ50〜69:軽度の知的障害
IQ35〜49:中度の知的障害
IQ20〜34:重度の知的障害
IQ20未満:最重度の知的障害
しかし、知能指数だけで判断されるわけではありません。適応行動や生活環境、社会的な参加の状況を総合的に評価することが重要とされています。

知的障害では、次のような特徴が見られます。
・学習や理解の速度が遅い
知的障害のある方は、新しい概念やスキルを習得するのに時間がかかる場合があります。そのため、反復学習や具体的な例を使った指導が効果的です。
・抽象的な思考や判断が難しい
数字や時間などの抽象的な概念を理解するのが難しい場合があります。例えば「将来の計画を立てる」などの長期的な時間をイメージすることや、直接的でない例えのような説明などは言葉の意味を把握しにくいことがあります。
・記憶力や注意力の課題
短期的な記憶や複数のタスクを同時に処理することが難しい場合があります。シンプルで明確な指示や情報を小分けにする工夫があるとわかりやすくなります。
・生活や社会活動での支援の必要性
自己管理や金銭管理、公共交通機関の利用など、日常生活の一部で支援が必要なことがあります。社会的なルールや他者との適切な関わり方を学ぶための指導は効果的です。
ただし、これらの特徴は個人ごとに異なり、一律に当てはまるわけではないことを留意しておくことが大事です。

知的障害の原因と診断の基準

知的障害の原因は、先天性または出生時などに、脳になんらかの障害を受けたために知的な発達が遅れると考えられています。遺伝的要因では、遺伝子や染色体の異常が原因となるものがあります。例えば、ダウン症候群は21番染色体が従来2本であるところ、何らかの原因によって3本になることで生じます。
また、妊娠中や出生時の環境が知的障害の発生に影響を与えることがあります。妊娠中の母体が風疹などに感染することで胎児に影響を受けたり、母親のアルコール摂取、出産時に胎児への十分な酸素を供給されなかったことで脳が損傷を受ける場合などがあります。
知的障害の診断は、知能指数(IQ)を指標として活用します。IQが70未満の場合、知的障害の可能性があるとされ、IQの値によって、軽度、中度、重度、最重度に分類されます。このIQ検査は、学習や問題解決能力を評価するもので、医療機関や専門機関で実施されます。
知的障害の診断は、知能指数だけでなく、適応行動も重要な診断基準となります。適応行動と呼ばれる日常生活や社会生活において必要なスキルも判断に必要な内容です。例えば、他者と意思疎通する能力であるコミュニケーション能力や時間管理や食事の準備などの日常生活スキルなどの自己管理能力、集団の中でルールを守る能力や協調性を見る社会性なども含まれます。

知的障害は、発達期(通常18歳未満)以前に発症する障害です。そのため、診断は主に小児期や学齢期に行われます。多くの場合、発達の遅れや行動の異常が見られる場合には乳幼児期に、学校での学習や社会性の発達に課題が見られる場合には学齢期に行われることが多いです。
知的障害の診断が早いと、適切な教育や支援を受けられやすく、本人の生活の質を大きく向上させることができます。また、家族や教育機関、医療機関が連携して支援する体制を整えられるかどうかも大切なポイントになります。

知的障害の分類

知的障害は、その程度に応じて大きく4つのカテゴリーに分類されます。それぞれの分類によって、必要な支援の内容や日常生活への影響が異なります。

軽度(IQ50~70)

・特徴
軽度の知的障害は基本的な学習能力があり、ある程度の自立した生活が可能です。ただし、抽象的な概念や複雑な課題への理解が難しく、支援が必要な場合があります。
・生活状況
一般的な環境での生活が可能ですが、学校教育では個別指導や特別支援教育を受けることが適切な場合が多いです。就労している人も多く、周囲からのサポートを受けつつ職場での役割を果たすことができます。
支援について見ると、金銭管理や計画の立て方などは、具体的な指導が必要なことがあります。また、対人関係の構築や職場でのコミュニケーションでもサポートが求められることがあります。

中度(IQ35~50)

・特徴
中度の知的障害は、基本的な日常生活スキル(食事、着替えなど)を習得できますが、社会的なスキルや問題解決能力に課題があることが多く、定期的な支援が必要となります。
・生活状況
日常生活は支援があれば、自立的なことも可能です。学校は特別支援学級や特別支援学校で個別指導が中心になることが多いです。就労は簡単な作業や繰り返しの業務が中心となり、支援員のサポートが必要です。
支援は定期的な生活指導や介助が必要となることが多く、社会的なルールや適切な行動を身につけるための訓練が有効的です。

重度(IQ20~35)

・特徴
重度の知的障害は、日常生活の多くで介助が必要であり、周囲の支援がなければ生活が難しい場合が多いです。言語やコミュニケーション能力が非常に制限されます。
・生活状況
日常生活のほとんどの場面で支援や介助が必要となります。特別支援学校や施設での教育や支援を受けることが多いでしょう。就労する人は少なく、作業所などでの簡単な活動に携わることが多いです。
食事、排泄、着替えなどの基本的な生活スキルに常時支援が必要になることが多く、コミュニケーション手段(ジェスチャーや視覚的サポート)の提供が求められることがあります。

最重度(IQ20未満)

・特徴
最重度は知的な活動や身体的な自立が極めて難しく、全ての場面で完全な介助が必要です。コミュニケーションは非常に限られ、表情や反応を通じた意思疎通が中心となる場合があります。
・生活状況
日常生活は完全な介護を必要とし、施設や家庭での継続的な支援が求められます。教育や就労よりも、生活の質を向上させるためのケアが中心となることが多いです。
支援には、呼吸器管理や経管栄養等の医療的なケアが必要な場合が多く、安全で快適な生活環境を整えるための全面的な支援が必要です。

一般的な知的障害の分類を見てきました。ただし、同じ分類に該当する場合でも特性や能力は一人ひとり異なることがあります。また、周囲のサポートや環境の整備によって、生活の質や自立の可能性を大きく変わることもあります。

知的障害の日常生活と社会参加

知的障害のある人の日常生活には、さまざまな支援が必要となります。どのような場面で、どんな配慮がされているのかを見ていきます。

教育・学習

知的障害のある生徒や学生は、学校での学習や指導を受ける際に、個別支援が必要な場合があります。そのため理解を助けるための視覚教材や反復学習を行うことや、特別支援学級や個別指導を通じて、一人ひとりの進度に合わせた教育を受けます。

雇用・職場の対応

知的障害で働いている人も多くいます。令和6年 障害者雇用状況の集計結果では、約15万7千人の知的障害者が働いていることが示されています。職場では、業務内容の調整やサポートが必要なことが多いです。
例えば、定型的な業務や繰り返しの作業など障害者雇用に対応した業務設計をすることや、ジョブコーチや職場内での専任者を配置しておくなどの配慮をしていることが多く見られます。

生活スキル

日常生活を送る上での基本的なスキルとして、金銭管理、交通機関の利用などを学んだり、サポートを受けることで、自立度を高めた生活をしやすくなります。
例えば、金銭の管理や買い物の練習やバスや電車の利用方法を反復して学ぶことは生活に役立つ学びになります。

知的障害者の雇用

知的障害者の中には、支援を受けながら職場で働く人も多くいます。最近では、特別支援学校での職業訓練が充実しており、就職率の高い学校も増えています。
知的障害者が活躍している仕事や業務内容の例としては、次のようなものがあります。
・軽作業業務
倉庫や物流センターでの軽作業は、知的障害を持つ方に適した職種の一つです。指示書やバーコードをもとに、必要な商品を棚から取り出すピッキング作業や、商品に傷や汚れがないかチェックしたり、種類ごとに仕分ける検品・仕分け作業、商品を箱詰めし、発送準備を行う梱包作業などは、知的障害の適性に向いている業務です。
・オフィスサポート業務
企業のオフィス内でのサポート業務も、知的障害者が活躍できる職種の一つです。例えば、書類を決められたルールに従って整理・保管する書類整理・ファイリング業務、テンキー操作や簡単な入力作業が中心となるデータ入力、社内での郵便物の仕分けや各部署への配布を担当する便物の仕分け・配布業務などがあります。
・清掃作業
ビルやオフィスの清掃業務。決まった手順で行える作業は、知的障害を持つ方々に適している場合があります。
・製造業のライン作業
工場の製造ラインでのパーツ組み立てや仕分け作業。定型的で繰り返しの作業が得意な方に適しています。

職場で長く働き続けるためには、適性に合った職場を選ぶことが大切です。加えて、業務内容が明確であり、必要なサポートが提供される環境があると働きやすくなります。例えば、ジョブコーチの配置や、定期的なフィードバックを行うことなどは効果的です。

まとめ

知的障害は、知的能力と適応行動に制約があることで、日常生活や社会生活に困難が生じる障害です。知能指数(IQ)70以下を基準に、軽度から最重度まで分類され、学習や理解の速度、抽象的思考、記憶力、社会活動への適応に課題を抱えることがあります。しかし、個々の特性に応じた適切な支援を受けることで、生活や仕事において能力を発揮することが可能です。
知的障害の原因は遺伝的要因や出生時の環境など多岐にわたり、診断にはIQだけでなく適応行動も重要な指標とされています。特に発達期(18歳未満)以前に診断されることが多く、早期の適切な支援が本人の生活の質を向上させる鍵となります。
知的障害を持つ人々がより良い生活を送るためには、社会全体の正しい理解と適切な支援が不可欠です。誤解や偏見をなくし、個々の能力を尊重する環境を整えることが、共生社会の実現につながります。

参考

知的障害者手帳の申請方法や手帳取得の判断基準とは?

知的障害の適性を活かした仕事内容とは?具体事例を紹介

ジョブコーチ(職場適応援助者)の資格取得と求められる役割

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