聴覚障害のある人のための災害に備えて企業が準備すべきこと

聴覚障害のある人のための災害に備えて企業が準備すべきこと

2020年01月9日 | 障害別の特性・配慮

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日本は災害が多い地域です。特に最近は、自然災害が増えてきており、避難所に避難することが珍しいことではなくなってきました。

聴覚障害は、聞こえに何らかの障害があって、音声情報が入らなかったり、入りにくかったりします。また、聞こえないという障害だけでなく、それによる影響、例えば、コミュニケーションの困難さや情報が得られないことから発生する問題もあります。

災害時には、一般の人でも不安になりがちですが、情報の入手が限られてしまう聴覚障害の人は、特に状況がわからずに不安になってしまうことが少なくありません。聴覚障害の人にどのような対応ができるのかを事前に考えておくことができれば、聴覚障害者本人も周囲にいる社員も安心できるでしょう。

ここでは、聴覚障害とはどのようなものなのか、どのような困難さがあるのか、災害時にはどのような工夫ができるのかについて見ていきます。

聴覚障害とは

聴覚障害とは、聞こえに何らかの障害があって、音声情報が全く聞こえないか、あるいは聞き取りにくい状態のことをいいます。障害状況はさまざまですが、聴覚障害のない人が耳を塞いで体験する聞こえにくさとは全く違うものです。

聴覚障害と一言でいっても、聴覚障害者の人は、ろう者、難聴者、中途失聴者、高年難聴者、盲ろう者、人工内耳をしている人など、さまざまな背景があって、言葉は話せないけれど、手話ができたり、読話ができるなど、生まれ育った環境などにより状況が異なってきます。

例えば、ろう者は、音声言語を習得する前に失聴した人で、そのため、手話を第一言語としている人がほとんどです。難聴者は、聞こえにくいものの、聴力が残っている人です。補聴器を使って会話できる人から、わずかな音しか入らない難聴者まで様々です。中途失聴者は、音声言語を獲得した後に聞こえなくなった人で、まったく聞こえない中途失聴者でも、ほとんどの人は話すことができます。

このように聴覚障害の人は、聞こえにくいということで何らかの困難さがありますが、手話がわからなくても、私たちはコミュニケーションをとる方法はいろいろ考えることができます。口を大きくあけて話す、筆談や身振り、紙やペンがなくても手のひらや携帯のメール機能を使ってコミュニケーションを取るなどです。

職場で聴覚障害の人と一緒に働くときに知っておきたいポイントについての詳細はこちらから

聴覚障害者と一緒に働くときに知っておきたいポイントとは?

災害時における聴覚障害者への支援のポイント

聴覚障害がある人は、音声による情報のやりとりが困難になります。そのため情報提供の仕方を工夫することが大切です。

災害時には、避難指示などが防災無線などで行われますが、聴覚障害者の人は、それが聞きこえず、避難が遅れることがあります。避難が必要な場合は、個別に伝えることが必要です。

また、全ての聴覚障害者が手話がわかるとは限りません。筆談や身振、絵や図を用いる、口の形を読み取るなどで理解することができる人もいます。聴覚障害者一人ひとりの状況に合わせて、状況を理解できるような対応をすることが大切です。職場の社員であれば、どのようなコミュニケーション手段が有効的なのかを事前に確認しておくとよいでしょう。このときに大切なのは、どのような方法でコミュニケーションするときにも、まず相手の視野に入ってから行うようにしてください。急な動きは、聴覚障害者本人を驚かせてしまうことがあります。

もし、避難所などで過ごす場合には、一斉放送など、音声での伝達はほとんど伝わりませんので、掲示物を目立場所に貼りだす、書いたものを見せるなど、視覚的な手段をつかって、目で見てわかる方法で伝えるようにします。

聴覚障害者が自分でできる備えとは

災害にあったときに、周囲がサポートすることは当然必要ですが、事前に聴覚障害者本人が備えておくべきこともあります。このような情報は、リスク管理も含めて、企業から提供することができるかもしれません。

例えば、次のようなことができます。
・補聴器、スマートフォンなど、情報を得るために必要なものは、常に身近な場所におくようにする。
・災害時には、通信の遮断が起きたり、機器が破損したりすることもあることを知らせておく。また、そのような場合に、情報にアクセスできる手段・ツールを、複数確保しておく。
・自宅の家具を固定したり、ガラスに飛散防止のフィルムを貼っておく。
・避難時にすぐ避難できるように、非常用持ち出し袋を用意しておく。

避難の際には、次のようなものを、すぐに持ち出せるようにしておくと安心です。
・補聴器や人工内耳などの電池
・スマートフォンなど文字情報が得られる携帯端末
・バッテリーや充電器(予備も含める)
・筆談用具(ホワイトボード、メモ用紙、筆記用具など)
・助けを呼ぶための笛、ブザーなど
・懐中電灯(暗い場所でも手話や文字が見えるように)
・支援を受けるときに、配慮してほしいことを書かいた「ヘルプカード」 など 
・障害者手帳

また、避難に備えて、周囲の人や環境を整えることも大切です。例えば、次のようなことを事前に想定して準備しておくことができます。

・避難を呼びかける指示、警報、サイレンがあった場合は、個別に知らせてもらうよう近所や周囲の人にお願いしておく。
・避難訓練に参加し、避難経路や避難場所を確認しておく。
・道路の遮断などを想定して、避難経路は複数考え、具体的にシミュレーションしておく。
・避難に支援が必要な場合は、自治体が作成する「避難行動要支援者名簿」に登録しておく。
・避難所などでは、情報から孤立したり支援情報に乗りおくれたりすることがあるので、どんな配慮が必要かを説明できるようにしておく。
・支援を受けるときに配慮してほしいことを書いた「ヘルプカード」を作成しておく。
・手話通訳や要約筆記者などを利用している場合は、災害時の支援をどうするか相談しておく。
・支援者が被災するなどして不在の時、どのようにすればよいかを相談しておく。
・災害が起きたときの連絡手段や集合場所などを決きめておく。
・職場、通勤時、自宅にいるとき、外出先などで災害があったらどうするか、避難場所や緊急連絡方法などを確認しておく。

聴覚障害者が災害にあったときにできること

災害時には、聴覚障害者だけでなく、他のひとも不安やパニックに陥っていることが少なくありません。まず、落ち着いて、テレビの文字放送や、携帯電話やスマートフォンなどで、情報収集をしましょう。NHKの手話ニュースは、手話で情報を得ることができます。

NHK手話ニュース

また、動けないような場合には、笛や携帯用ブザーなどで居場所を知らせ、助けを求めます。周囲の人に聴覚障害があることを伝えて、安全な場所への誘導や、必要な配慮をしてもらうようにいましょう。避難所の放送や説明がわからなかったら、担当者に聞いて、文字や絵で状況などを教えてもらいましょう。黙っていると、他の人には、障害者であることがわからない場合もあります。

聴覚障害者が災害時に困ること

特定非営利活動法人MAMIEさんが作成した「聴覚障害者って、災害になったらどんなことに困るのか?」をわかりやすくしたパラパラマンガの動画です。2014年度近畿ろうきんNPOアワード奨励賞を受賞しているそうです。

聴覚障害者の方が、災害時にどんなことに困るのか、どんな状況が想定されるのかがわかりやすく説明されています。当事者の方はもちろんですが、どのような困難さがあるのかを周囲の社員が理解するのに役立ちます。

サイレンや警報の音もきこえません。

緊急の時の状況判断がとても困難です。

避難所で困ることもあります。

ラジオの音が聞こえない。

テレビに字幕がなきと災害の様子がわかりません。

アナウンスの内容がわかりません。

他の人とコミュニケーションがとれません。

避難先ではあらゆる情報をすぐさまキャッチできない。

出所:聴覚障害者の災害時に困ることって?パラパラ漫画(NPO法人MAMIE)

参考:災害時障害者のためのサイト(NHK)

まとめ

聴覚障害のある人のための災害に備えて企業が準備すべきことについて見てきました。

日本は災害が多い地域です。特に最近は、自然災害が増えてきており、避難所に避難することが珍しいことではなくなってきました。

災害時には、一般の人でも不安になりがちですが、情報の入手が限られてしまう聴覚障害の人は、特に状況がわからずに不安になってしまうことが少なくありません。事前にどのようなことが想定できるのかを考えて備えておくことによって、聴覚障害者本人も一緒に働く社員も安心できるでしょう。

また、手話ができなくても、コミュニケーション手段はいろいろとあります。どのような方法でコミュニケーションを取れるのかを考えてみるのも障害理解に役立つかもしれません。

参考

【Withコロナ】障害者が働く職場のリスク管理~ビーアシストの事例~

企業が取り組んでおきたい障害者のための災害対策

災害に備えてできる障害者の支援と準備

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