中央省庁の障害者雇用水増し問題、調査報告書の内容と今後の対応は?

中央省庁の障害者雇用水増し問題、調査報告書の内容と今後の対応は?

2018年10月23日 | 障害関連の情報

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中央省庁の障害者雇用水増し問題で、弁護士らによる検証委員会(委員長・松井巌元福岡高検検事長)が調査報告書を公表しました。退職者や視力の弱い人を多数算入した例を示し「障害者の対象範囲や確認方法の恣意的解釈が不適切な計上の原因」と指摘し、障害者雇用を水増ししていたことを認定しました。また、「ずさんな対応」「極めて由々しき事態」との指摘もありました。

調査報告の結果や今後の対応について、見ていきたいと思います。

障害者雇用の水増し、28機関で3700人が不適切に計上

検証委は33行政機関にヒアリングを行ったところ、昨年6月時点の雇用状況に関し、8割を超える28機関で3700人が不適切に計上されていたと認定しました。全国の地方自治体の水増しは約3800人と判明し、国、地方自治体合わせて約7500人となっています。

中央省庁での障害者雇用の水増し問題を巡り、国の検証委員会が2018年10月22日に公表した報告書の中では、国の指針を踏まえないずさんな運用実態が明らかにされました。約10年前の退職者やすでに亡くなっていた人を計上していたり、「うつ状態」の職員を身体障害者と判断したケースもありました。報告書は「恣意的に解釈し、不適切な実務を継続させた」と厳しく指弾した。

障害者の認定を独自の実務慣行で実施

法定雇用率に算入する障害者の判断は、国の指針では障害者手帳や診断書など障害を認定した書類が必要となっています。しかし、各行政機関では「独自の実務慣行」が行われていました。

国税庁:手帳がなくてもメンタル疾患等を障害者雇用で計上

中央省庁の中で不適切計上の人数が全体の3割となる1103人で最多だった国税庁では、うつ病、適応障害、統合失調症など精神疾患の職員について手帳を保有していないのに内部機能障害として「身体障害者」として計上していました。また、うつ状態や「適応障害の一歩手前」とされた職員も同様に計上されていました。

国土交通省:

不適切計上が629人で国税庁に次いで多い国土交通省では、毎年引き継がれた名簿をもとに障害者を計上して手帳を確認していないだけでなく、退職や出向も確認していませんでした。2017年の時点で退職者は74人、出向者は7人おり、退職者の中には約10年前の退職者や死者も3人も含まれていました。

法務省:対象外の職務も含めて計上

法務省は「障害者の就業が難しい」として法定雇用率の算入対象外となっている刑務官と入国警備官のうち109人を障害者として計上していました。同省は「対象外と知っていたが実態として障害があり、刑務官が別の仕事をすることもあるので計上してよいと考えた」などと説明していました。

その他の省庁

総務省、環境省、農林水産省、特許庁では視覚障害者の不適切計上が多くを占めました。視覚障害者は眼鏡やコンタクトレンズなど矯正視力で0.1以下が対象となっていますが、裸眼で0.1以下の職員を計上していました。外務省では不適切計上の146人中108人が精神障害者となっていました。

意図的な計上への説明とは・・・

全ての機関は「意図的なものではない」と検証委の調査に説明しています。しかし、このような恣意的な対応や障害区分の著しい偏りについては、検証委は「長年引き継がれてきたとの言い訳は許されるはずもない」と批判しました。

さらに検証委は、算入対象だった職員が退職した場合、多くの場合はすでに雇用している職員の中から新たに選定していたことに注目しています。

「雇用後に障害者となるケースはあるが多くはないはず」としたうえで、「法定雇用率を充足させるため職員から選定して不適切に計上してきたことがうかがえる」とし、「不適切な実務慣行を放置し、継続させてきたことが基本的な構図」と断じました。

検証委は報告書で「国の行政機関は法の理念を理解し、民間事業主に率先して取り組むべきことは当然の責務」と指摘しています。また、「決して弁明が許されるものではない」と非難するとともに、「障害者雇用への意識が低く、組織としての緊張感とバランスが著しく欠如していた」と指摘し、再発防止を求めました。「障害者雇用を促進する姿勢に欠け、相当数の不適切計上があったのは極めてゆゆしき事態」と総括しています。

【国の行政機関における障害者雇用に係る事案に関する検証委員会報告書】はこちらから

→ 【国の行政機関における障害者雇用に係る事案に関する検証委員会報告書】

障害者雇用としてカウントされるために必要なこと

障害者雇用としてカウントされるには、障害者手帳や職業的に障害者として認められる書類を持っており、週30時間以上働く障害者を1人、週20時間以上30時間未満働く障害者は0.5人に換算して、障害者雇用率を算出しています。また、平成30年4月以降は精神障害者に限り、週20時間以上30時間未満の労働でも、雇用開始から3年以内か、精神障害者保健福祉手帳を取得して3年以内の人は1人と数えることができます。(今回の調査の対象は平成29年度のものになるので、こちらは適用されません。)

今後の省庁における障害者雇用はどうなるのか

今回の第三者委の報告書により、不正算入された3700人のうち91人は退職者で、うち3人は死亡していたことや、障害者手帳を持っていても、本人の同意なく算入するといった不正な手続きがあったことが明らかになっています。

また、多くの省庁で雇用率達成のため、障害者の職員が退職した場合、新規採用せず、職員の中から新たに算入できそうな人を選んでいたことが指摘されています。

今後の政府の対応策も示されました。来年2月に障害者向けの統一採用試験を実施することが検討されています。統一試験による採用を実施して、2019年末までに約4,000人を新たに採用する目標を掲げます。また、チェック機能の強化に向け、厚労省が他の省庁を指導できる体制づくりのため、法改正を視野に検討を進めていくということです。

官公庁で障害者を新規に4,000人雇用する根拠とは

この4,000人という数字は、どのようにして算出されているのでしょうか。

中央省庁33機関のうち27機関で、昨年6月1日時点の雇用数に計3,400人超の水増しがあったことが発覚しており、平均雇用率が、従来の2.49%から、当時の法定雇用率(2.3%)を大幅に下回る1.19%に半減することになります。法定雇用率を達成するためには、国の行政機関などの法定雇用率は今年4月に2.5%に引き上げられたため、達成には各省庁で新たに計約4,000人を採用することが必要になっているためです。

しかし、多くの障害者が働き続けられる環境を短期間に整えることはかなり厳しいことが予想されます。また、今回の大量採用が雇用率を上げるだけの数あわせになり、障害者個人の特性に合わない仕事にならないか・・・という点も考慮していく必要があるでしょう。

障害者雇用は一時的に雇用することは簡単ですが、継続的に働き続けるためには、職場の障害理解を深めたり、環境を整えたり、障害者本人の特性や能力を活かせるようにする必要があるからです。

まとめ

中央省庁の障害者雇用水増し問題の調査報告書が公表されました。調査報告の結果や今後の対応について説明してきました。

今回の調査報告からは、障害者手帳のない人をカウントしたり、退職者や視力の弱い人を多数算入した例などが明らかにされ、障害者の対象範囲や確認方法の恣意的解釈があることが示されました。このような状況を改善、また雇用率を達成するために2019年末までに約4,000人を新たに採用する目標を掲げました。

しかし、障害者雇用は雇用することは簡単にできますが、定着して働き続けるために一緒に働く職場の理解を深めることや環境を整えたり、障害者本人の特性や能力を活かせるようにするには、時間もマンパワーもかかります。安易に数合わせだけの障害者雇用に陥らないようにしてほしいと考えます。

参考

2019年度国家公務員の障害者選考試験のスケジュール、試験内容とは?

平成30年4月から精神障害者の短時間労働雇用率のカウントに特例措置

中央省庁の障害者雇用水増し問題から見る障害者雇用の考え方

中央省庁の障害者雇用率水増し問題~国の機関の8割超えの27機関に~

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