【2024年度版】障害者雇用の今後と対策、企業が考えるべきアップデート

【2024年度版】障害者雇用の今後と対策~企業が考えるべきアップデート~

2024年05月26日 | 企業の障害者雇用

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令和6年4月に障害者雇用率が上がりました。最近は、障害者雇用代行を活用して障害者雇用を行うことに対しての「代行ビジネス」について、是か非かという議論が取り上げられるのを見かけますが、問題の本質はそこなのでしょうか。

企業がこれから障害者雇用を進めていくうえで考えていくべきこと、また障害者雇用の進め方について考察しました。

障害者雇用代行ビジネスを選ばざるを得ないことが問題

2023年になってから、新聞などのメディアで障害者雇用の中では「障害者雇用ビジネス」が取り上げられることが多くなりました。契機となったのは、共同通信による2023年1月9日の報道です。

『法律で義務付けられた障害者雇用を巡り、企業に貸農園などの働く場を提供し、就労を希望する障害者も紹介して雇用を事実上代行するビジネスが急増していることが9日、厚生労働省の調査や共同通信の取材で分かった。十数事業者が各地の計85カ所で事業を展開。利用企業は全国で約800社、働く障害者は約5千人に上る。

大半の企業の本業は農業とは無関係で、障害者を雇うために農作物の栽培を開始。作物は社員に無料で配布するケースが多い。違法ではないが「障害者の法定雇用率を形式上満たすためで、雇用や労働とは言えない」との指摘が相次ぎ、国会も問題視。厚労省は対応策を打ち出す方針だ。』

出典:共同通信社

以前から、このような障害者雇用ビジネスによる障害者雇用の進め方については、賛否両論の議論がありましたが、共同通信の記事が出てから、この傾向は加速しています。共同通信の記事では、利用企業は全国で約800社、働く障害者は約5000人に上ることが示されましたが、その後の厚生労働省からの結果では、雇用代行ビジネス(農園だけでなく、サテライトオフィスも含む)に関し、利用企業は約1000社、働く障害者は約6500人以上いることが示されました。

この障害者雇用代行ビジネスが、一般的な「雇用」かと言われると、多くの人がイメージしている「雇用」とはいい難いものであることは間違いないでしょう。また、このような障害者雇用代行ビジネスを活用すると、次のような費用がかかることも明らかになっています。

障害者雇用ビジネスの利用にかかる費用の一例
【月額】
・雇用する障害の給与:11~13万円/1人
・農園利用料等:20万円程度
【初期費用】
・農園初期費用:数百万円
・働く障害者の紹介:40~70万円程度

これは、企業にとっては大きなコストとなります。実際に農園で取れた生産物は、社員向けの販売や無料配布、地域の施設などへの寄付、規模の大きな企業では社員食堂などの提供されるものに一部使っているところもありますが、それが一般的な食堂などの供給ルートにのるレベルの物量や採算に見合うものではないことは明らかです。また、これを続けることで将来的に採算性がとれることはまずないでしょう。

一方で、法律では障害者雇用をしなければならず、コンプライアンス遵守が求められています。障害者法定雇用率を達成できないと、障害者雇入れ計画書の提出や企業名公表などの恐れもあります。

また、障害者雇用が進んできて、働く障害者側の中にも健常者とほとんど変わらない働き方ができる方から、短時間での働き方が適している人、特定の分野に能力を発揮できる人など、多種多様な人材がいます。しかし、このような情報がアップデートされていることは少なく、障害者雇用の事例として出される事例は「こんなに配慮がないと障害者雇用はできない」というものが多く見られます。

「障害者雇用を行うには、社員に大きな負担がかかる・・・。」「障害者ができるような業務が見つからない・・・。」このような状況から、結局、企業側は「そんなに大変ならば、社員に負担がかかりすぎてしまう。コストは大きいが・・・。」と企業が障害者雇用代行ビジネスを選ばざるを得ない状況を生み出しているのも事実です。

障害者雇用がうまく進められない理由は、大きく分けると3つあります。それは、方法が間違っていること、適切な時間やプロセスがかけられていないこと、適切な人材に任せていないことです。特に人材に関しては、障害者雇用は障害者に対するものなので、障害理解や経験がなければ難しいと考える企業や担当者も多いですが、障害者「雇用」として進めたいのであれば、障害の専門家や経験者よりも「マネジメント」や「組織の進め方」を理解している人材を配置することが必要になります。

最近の経営環境やビジネス動向を見ていると、多くの企業で人的資本経営に注目するようになってきました。これは、労働人口の減少やグローバル化、経営環境の変化に対応することなどが求められており、これらの変化に対応していくには「人材」が大切であることを認識し、その準備をしていかないと企業が持続的に生き残れない時代になってきているからです。

障害者雇用は社会や経営の変化と比べると、ゆっくりとしか変わっていない分野ですが、この人的資本経営によって人材に関わる考え方や視点が変化することにより、障害者雇用でも大きく変化できる契機になるのでは・・・という期待を感じています。

障害者雇用の動向と傾向

障害者雇用は、2000年代に入ってから雇用率がどんどん上がり、企業での障害者雇用が認知されるようになってきました。

出典:厚生労働省

ここ20年ほどの障害者雇用を3つのバージョンに区分し、それぞれのバージョンの仕事内容や特徴を見ていきたいと思います。

障害者雇用1.0

知的障害者の雇用が1998年に義務化され障害者雇用率が1.8%となった影響もあり、2000年代に入って知的障害者の雇用が大企業でも受け入れられるようになってきました。ここで増えてきた障害者雇用の業務が、事務補助やメール配達を含む軽作業、清掃などです。

それまでは、障害者雇用と言えば身体障害がメインでしたが、働ける身体障害者の雇用は先行して進んでおり、雇用率が上がったのに伴い、身体だけでは雇用が難しくなったことから、知的障害者の雇用促進が進んできました。

また、知的障害者でも業務がわかりやすいようなマニュアル作成や雇用管理などの研究が進み、ジョブコーチなどの専門的な役割をもつ人材が配置されるようになりました。

障害者雇用2.0

2005年に発達障害者支援法ができ、「発達障害」についての社会的認知が広がってきます。発達障害はコミュニケーションや大人関係などの苦手さはあるものの、知的な遅れを伴わない障害ということもあり、障害者手帳を持たず(持てずに)に働くことを選んでいる人が多くいました。

しかし、発達障害を含む精神障害が障害者雇用率として2006年からカウントできるようになったことや、2018年に精神障害が義務化され、企業でも精神障害者の受け入れが進んできたことが影響して、精神の手帳を持つ発達障害の人が増えてきました。

また、2014年に障害者差別解消法ができ、国公立の大学で障害者の合理的配慮が義務化され、大学では障害学生支援室を設置するようになりました。これにより、障害のある学生でも大学生活のサポートや、入試等での配慮なども整備され、発達障害の学生が増えています。

一方で、大学生活は授業支援などによりクリアできて就職したものの、何らかの配慮が必要と感じ、障害者枠での雇用を考える人が増えつつあります。学校生活では支障を感じることがなかった人でも、社会人として就職することでコミュニケーションや対人関係で悩み、大人になってから発達障害の診断を受ける人も増えてきています。また、社会でも発達障害の認知が進んだことや、手帳を取得せずに就職した人でも障害に対する配慮を求めたり、企業でも精神障害者を受け入れることが増えたことが影響しています。

発達障害の特性がある人の中には、細かい作業や規則性のあるタスク、特定の分野に対する深い知識を持ち、その知識を活かした業務などで活躍する人も多いため、IT関連の専門業務の一部(ゲームのデバック、セキュリティ等)などをはじめとしたところで雇用されることが増えてきました。

加えて、経済産業省でニューロダイバーシティとして、IT業界で自閉症・ADHDといった症状を持つ発達障害を中心にデジタル分野での高い業務適性を活かして収益化等に成功した事例から、デジタル化が加速する社会において企業の成長戦略として注目するようになってきています。

特徴として多いのが、適性はあっても未経験者が多く、経験者としての採用が難しいということです。そのため最近では、未経験者でも適性があればeラーニングや適性検査、インターンシップなどを経て、雇用するケースが増えてきています。

障害者雇用3.0

2020年に入ってから、企業の中で人的資本経営が注目されるようになっています。人的資本経営が示された伊藤レポートが作られた背景には、日本企業における収益性の低迷を打破するために企業の競争力を強化し、収益力を高めることが日本経済の継続的な成長につながると考えられたからです。

この伊藤レポートの中では、それを実現するためには、経営戦略と人材戦略を連動させる方法が必要であることが示されています。企業の成長につながる人材戦略を改めて考え直し、経営戦略と人材戦略を両者を連動させることで、企業価値の持続的向上を図る狙いが含まれています。また、2023年3月以降の有価証券報告書を発行している大手企業4,000社での人的資本の情報開示が始まっています。

人的資本の情報開示の項目は7分野・19項目が定められており、この中の項目に直接障害者雇用に関わる項目は含まれていませんが、関連する項目としてダイバーシティ分野、コンプライアンス・倫理分野などが影響します。また、人的資本の情報開示に障害者雇用に関わる項目はないものの、「障害者」をこの「人材」として捉える企業も増えてきています。

これまでの障害者雇用1.0、2.0では、「障害者雇用」を「人材」として捉えるのではなく、「障害者」として捉えている企業が多くありました。採用するときにも業務内容は「障害者枠」的な業務として設定されることが多く、合理的配慮は重視されますが、雇用される中であるキャリアアップや待遇の向上を目指せるポジションは非常に限られていました。

しかし、「人的資本経営」を考えたときに、「人材」という枠の中で、外国籍、性別、年齢と同じように障害者雇用も捉えようとする企業が出てきています。これまで「人材」や「ダイバーシティ」を考えたときに、性別や年令、国籍などを区別することなく、外国籍や女性などは、この「人材」と捉える企業は多かったものの、「障害者」雇用に関しては、「人材」の枠とは別枠で考えているところが多かったのです。

障害者雇用の中で、この人的資本経営的な考え方は、障害者雇用のコンテクスト(文脈)を変えるという大きな役割を果たしています。「障害者雇用」のポジションを「人材」の枠組みの中に入れて考えることができるからです。これは、障害者雇用を考えるときに「障害者ができる業務」を探すのではなく、本来の雇用である「組織に必要な業務」で雇用することを実現するものとなっています。

また、これが障害者雇用に大きな変化を与えるもう一つの理由は、人的資本経営を考えるときには、経営層や経営企画部門が中心になり、経営戦略と人材戦略を一緒に考えていくということです。これまでの障害者雇用の中では、担当する部門が人事や現場の部門が多かったのですが、「人材」という枠組みで捉えることにより、今までの障害者雇用の捉え方とは違った視座や中長期的な経営視点や本来の雇用という面から検討することが増えています。

このような人的資本経営的な視点からの障害者雇用の取り組みは新しいものではなく、実は外資系企業や中小企業などではすでに取り組んでいるところが多くありました。これらの企業の取り組みを見ていくと、人的資本経営の本質的な要点である「従業員の能力と潜在力を最大限に引き出し、企業の競争力と持続可能な成長を実現すること」に当たり前のように取り組んでいるために、それを配慮や特別な取り組みと考えていないことが多いということです。

これからの障害者雇用に必要なこと

これまでに取り組んできた障害者雇用の方法では、これから先が不安だという場合には、早急に手を打つ必要があるでしょう。

まず、組織としての「障害者雇用」に対する認識を方針として決める必要があります。「障害者にしてもらう業務がない」という声をよく聞きますが、最近の障害者枠で働きたいという人たちは、多種多様な人材がいます。

「障害者雇用」と一言で括られてしまうことが多いですが、例えば、現在、新規採用をすると最も多い精神障害者の層では、その傾向が特に顕著に見られます。精神障害については、平成18年(2006年)から障害者雇用率としてカウントできるようになりました(これ以前は、精神障害のカウントはできなかった)。また、平成30年(2018年)に精神障害が義務化され、雇用率の算定式にカウントできるようになりました。

企業で精神性が視野の受け入れが広がったことにより、精神障害者手帳を取得することを躊躇していた人たちも、配慮ある職場で働きたいというニーズが出てきたり、激務の中でメンタル的な不調がでて、これまでの働き方を変えたいと感じる人が増えてきています。

以前は、就労支援機関から紹介される精神障害者の方たちの中には「企業で働けるかどうか・・・。」と、こちらが不安に思ってしまう人もいましたが、最近では「なぜ、この人は手帳を取得したのか・・・。」と感じるような人も少なくありません。これは、いい意味で社会での障害理解が進み、企業でそれを受け入れる事例が増え、手帳を取得するかどうかを迷っていた当事者も手帳を取得して、理解あるところで働きたいと希望する人が増えてきたためだと言えるでしょう。

一方で、多くの企業の精神障害のイメージはアップデートされておらず、精神障害と聞くと「難しい」と感じてしまう企業も多くあります。障害種別によって「難しい」と判断するのではなく、組織が求める仕事内容やレベルにあった障害者を雇用しようと視点を変えると、今までの雇用とは大きく違った障害者雇用ができるでしょう。そのために自分の組織では、どんな人材が必要なのかを考えていくことが大切です。

このときに気をつけたいのが、障害者雇用に対する考え方、感じ方は、企業や個々人によってかなり異なるという点を認識しておくことです。一般的には、同じ組織に長くいると、イメージしているものや考え方は、似通っていることがほとんどです。敢えて言葉に出さなくても、暗黙知的な部分が共有されていることは珍しくありません。しかし、障害者雇用の場合には、同じ組織の中にいても、かなり温度差が違うことがよくあります。それは、障害者と一緒の教育を受けてきた経験があるかや、家族や身近な人にいるかどうか、そして接した障害者の障害種別がどのようなものか、それについてどのように感じているかなどが影響しています。

例えば、家族や知り合いに知的障害がいたりすると、その人は障害者雇用というと「知的障害」の雇用をイメージすることが多くあります。また、何らかの特別な才能を持っている発達障害を知っていると、そのイメージが強くなります。人工透析などで通院しながら、社会生活を送っている人を知っているならば、通院への配慮は必要なものの仕事内容では、それほど配慮は必要ないと感じるかもしれません。

そのため障害者雇用を企業で進めるときには、ここが定まらないまま障害者雇用を始めると、それぞれの社員がイメージする障害者雇用の食い違いが生じてしまうことになります。ですから漠然とした障害者雇用ではなく、どんな障害者雇用を組織として実現したいのかを明確にすることが必要です。

また、人的資本経営について学び、人的資本経営の視点から障害者雇用を考えていくことです。それには、組織全体の中長期的な視点をもつ部門が関わることが必須となります。障害者雇用は人事部門や管理部門が担うことが多いですが、このような部門の業務はITやAIの活用、アウトソーシングなどによって減少傾向にあります。また、直接プロフィットを生み出す部門ではないので、人材を増やすことも難しいことが多くあります。

しかし、中長期的な視点から、また経営に必要なことを把握している経営企画部門やプロフィット部門のマネジメント層が関わることにより、それまでの障害者雇用とは違った視点や業務内容を展開できた企業は少なくありません。組織に必要なこと、求められる業務などを考えていく上でも、実際に実行する上でも、それまでと違った視点から考えていくことは非常に効果があります。

動画で解説

まとめ

企業が人的資本経営を進めるべき理由は多岐にわたります。少子高齢化に伴う労働人口の減少や、グローバル化とデジタル化の進展により、限られた人材をいかに効果的に活用するかが企業の競争力の鍵となっているからです。人的資本経営を進めているのであれば、その中に障害者雇用を含めることは非常に効果的です。

それは、「人材」に「障害者」も含めることにより、障害者雇用を単に法定雇用率を達成するための形式的な取り組みではなく、障害者を「人材」として捉え、その能力を最大限に引き出すことに繋げられる可能性が大きいからです。

また、障害者雇用代行ビジネスの増加は、企業が直面する現実的な課題を浮き彫りにしましたが、根本的な解決策は、組織全体で障害者を有効に活用し、企業の戦略とリンクさせることです。これにより、単なるコストセンターではなく、企業の成長に寄与する重要な資本へと繋ぐことができます。

障害者雇用のアプローチは身体障害、知的障害者の雇用から、発達障害者や精神障害者の雇用へと進化しています。特に近年増えている精神障害者手帳の対象となる精神障害、発達障害の人材をどのように捉えるのかによって、組織としての人的資本経営や障害者を含めた多様な人材活用に大きく影響するでしょう。

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