発達障害の人はストレスから二次障害としてうつ状態になることがあります。適切な治療受け、治療の原則に従って回復に努めることが大切です。ここでは、発達障害と二次障害の関係についてや、二次障害として起こりやすい症状とその治療や予防など、知っておくと役立つ点について説明しています。
二次障害とは
発達障害の人が治療しなかったり、適切なサポートがなかったりすると、新たな障害や精神疾患を併発することがあります。これを二次障害と呼びます。うつ状態(抑うつ状態)も二次障害の1つで発達障害の人に併発しやすいことでよく知られています。
ADHDや自閉スペクトラム症(ASD)の人が就労したとき、仕事の中には無理をすればなんとかできるものがあります。このような仕事についた場合、無理やり自分を仕事に合わせる過剰適応の状態になります。そうした状態が何日も続くと、多大なストレスがかかり、ついにうつ状態になることがあります。
また、自閉スペクトラム症(ASD)の人は、自分の疲労度を認識することが苦手です。そのため疲労が蓄積しているにも関わらず、活動を続けてしまい、ついにうつ状態になってしまうことがあります。どちらにしても自分の心身の限界を超えて活動してしまうことから、うつ状態になりやすくなることがあります。
うつ状態の治療に使用される薬
うつ状態と診断された場合、医師の指示に従って休養とり、処方された薬の服用を続けます。うつ状態の治療薬は、飲んですぐ効くというものではありません。薬の効果が現れるまで、何ヶ月もかかるものもあります。医師の説明をよく聞き、服用を途切らせないようにすることが大切です。
使用される薬には、三環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などがあり、症状や副作用などを考慮して、適切な薬が処方されます。
うつ状態の治療に関する原則
うつ状態の治療には、これだけは知ってほしい、守ってほしいという原則があります。これらの原則を守って、治療をすることが大切です。
・うつ状態を自覚する・・・自責感から自分の無気力状態を怠けていると思う人がいますが、うつ状態から回復するためには治療が必要です。
・できるだけ早く休養生活に入る・・・処方された薬の適切な服用と休養が治療には求められます。
・治療にかかる時間を知っておく・・・回復までに少なくとも3ヶ月はかかります。焦らずに治しましょう。
・薬は勝手にやめない・・・処方通りに服用を続けます
・絶対に自殺は考えない・・・自殺はしないと自分に誓ってください
・治療は一進一退することを知る・・・うつ状態は良くなったり、悪くなったりしながら回復に向かいます。
・回復するまでは決断しない・・・うつ状態にある間は、思考力や判断力が低下しています。大きな決断は延期しましょう。
うつ状態のサインに気づいたら、精神科を受診する
うつ状態になると、感情面、思考面、意欲面の3つの面で心の働きが鈍くなり、次のような症状が現れます。
・朝起きてやる気が出ない(意欲の低下)
・ぐっすりと眠れない(睡眠障害)
・食欲がなくなり、食事もおっくうになる
・消えてしまいたいという気持ちになる
・趣味にも関心がなくなる
・憂うつで、気分が晴れない(抑うつ気分)
うつ状態以外の二次障害の治療
発達障害の人は、うつ状態以外にも二次障害として、さまざまな精神疾患を併発することがあります。強迫症とアルコール依存症についてみていきます。
自閉スペクトラム症(ASD)の人はもともと、何度も手を洗うなど、同じことを反復する常同性を持っています。人によっては同様の症状が現れる強迫症を併発することがあります。強迫症は、不安などの強迫観念から何度も鍵を閉めたか確認することなどの強迫行為を繰り返す精神疾患です。強迫行為の種類や程度は、人によっていろいろです。
治療には、薬物療法と認知行動療法を併用します。強迫症に陥った人の多くが強い不安感を持っていることから、うつ病の治療薬であるSSRIなどを処方し、まず不安感を抑えます。服用量ははじめ少量から始め、徐々に量を増やして薬との相性などを確認しながら、量を調整していきます。
不安が薄れ、落ち着いてきたところで、認知行動療法の「曝露反応妨害法」を行ないます。曝露反応妨害法は、不安などを感じる状況や体験をあえて繰り返し、不安な状態に慣れることで、徐々に不安を解消させる療法です。強迫症の場合は、強迫行為を我慢するという行動を繰り返します。こうした行動を続けていくうちに、不安感は軽減され、強迫行為はなくなっていきます。
発達障害の人が陥りやすい依存症
発達障害の人は、過去の不快な出来事やストレスなど、心理的な苦痛から依存症に陥る傾向があります。依存症には大きく分けて、次の3つの種類があります。
物質依存
アルコール、ニコチン、薬物等
プロセス依存
買い物、ギャンブル、インターネット、ゲームなど
関係依存
恋愛依存、女性依存、男性依存など
アルコール依存症の危険性
アルコール依存症は、飲酒行動がやめられなくなる精神疾患です。アルコール依存症になると、ホルモンの分泌等に変化が起こり、抑うつ状態や倦怠感など、うつ病に似た症状が現れます。さらに大量の飲酒を続けていると、肝臓障害や幻覚、妄想など心身の不調が悪化し、最終的には死に至ります。
重症化した場合、専門の医療機関で入院治療を受ける必要があります。まず、飲酒を妨げる断酒補助剤を使用し、完全にアルコールを断ちます。並行して個人精神療法や集団精神療法などのリハビリテーションを続け、本人の断酒の意思を高めます。退院後は断酒補助剤などの服用を続け、断酒会などの自助グループに参加して、断酒を継続します。
アルコール依存症のサインに気をつける
アルコール依存症になると、次のような症状が現れます。症状に気づいたら、すぐにアルコール依存症専門家の医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。
・お酒を飲むスピードがはやくなった
・いつまでも手元にお酒がないと落ち着かない
・数時間ごとに飲酒する
・酔いつぶれるまでやめられない
・お酒を飲まないと手が震える
・飲酒量がどんどん増えてきた
二次障害に陥らないためのポイント
二次障害を引き起こす要因はストレスです。つまり、ストレスの軽減が二次障害防止につながります。
発達障害の人は家庭や職場でのミスや対人関係での失敗で、常にストレスをためてしまうため、うつ状態などの二次障害に陥りがちです。そこで、ストレスを軽減することが、二次障害の防止につながります。二次障害に陥らないための方法のいくつかのコツを見ていきます。
生活リズムを守る
決まった時間に起床し、早めに睡眠を取る規則正しい生活は、心身の健康維持に必要なことです。不規則な睡眠は、脳内の神経伝達物質の働きにも悪い影響を与えます。十分な睡眠をとることは、心身の疲労回復だけでなく、ストレス耐性の向上にもつながります。
ほどほどを心がける
時間忘れて仕事に作業に没頭しがちな人は、ほどほどを心がけましょう。職場では時間を決めて、休憩を取るようにします。ヘトヘトになるまで頑張るより、健康維持も自分の役目だと考え、上手に手を抜くぐらいにして、休憩をとりましょう。一定の時間ごとに休憩を取るルールをつくって、ルールを守るようにするとよいでしょう。
プラス思考で考える
物事には、プラスの面とマイナスの面の両面があります。何事も悪いほうではなく、良いほうに考えるプラス思考を心がけましょう。
困ったら家族や周囲に相談する
何事もひとりで抱え込んでしまうのは、ストレスの元です。困ったときには、家族や友人、同僚に相談することが大切です。
ひとりで問題を抱え込んでしまったときには、誰かに相談してみましょう。話をすることで問題解決につながったり、気持ちが楽になったりします。
不安を感じたらすぐに受診する
不眠や意欲の低下など、心身の不調を感じたら、すぐに医療機関を受診し、適切な処置を受けましょう。早めに気づいて、早めに治すことが大切です。
周りの人が悪口を言っているように思える、自分が笑われているように感じるなど、被害者意識が強いなら、臨床心理士のカウンセリングを受けるようにします。また被害者意識の軽減には、薬の服用が有効なケースも多いようです。精神科を受診し、適切な薬を処方してもらいましょう。
無理をしない
無理をして体を壊してしまわないように気をつけましょう。体調に合わせて、活動内容や活動時間を調整します。毎朝、2時間ランニングをする日課があるとしても、体調が思わしくない時には、ランニングを中止するか、同じコースを歩くようにするなど、体に無理のない活動に変更します。
まとめ
発達障害と二次障害の関係について、また二次障害として起こりやすい症状とその治療や予防などについて説明してきました。
発達障害の人はストレスから二次障害としてうつ状態になることがあります。うつ状態になってしまったら、適切な治療受け、治療の原則に従って回復に努めることが大切です。また、二次障害を引き起こす要因の大きな点はストレスです。二次障害の症状がひどくなる前に、ストレスの軽減をおこなうことによって二次障害を防止することができます。二次障害に陥らないためのポイントも心がけていただきたいと思います。
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