ビジネスのチカラで福祉を変えていく ~工賃10万円のB型事業所の実践~

ビジネスのチカラで福祉を変えていく その5~工賃10万円、就労率100%のB型事業所の実践~

2021年06月8日 | 企業の障害者雇用

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障害者福祉の就労系障害福祉サービスには、就労移行支援事業の他に、就労継続支援A型事業、就労継続支援B型事業、就労定着支援事業があります。就労継続支援B型は、一般的に雇用されることや、雇用契約に基づく就労が困難な障害者が利用するところという認識があります。

しかし、千葉県富津市にあるAlon Alon Orchid Garden(アロンアロンオーキッドガーデン)では、就労継続支援B型作業所ですが、工賃最高10万円(令和元年 平均工賃16,369円、出典:令和元年度工賃(賃金)の実績について(厚生労働省))、就職率100%(平成23年 就職率1.6%、出典:社会福祉施設等調査)という驚異的な結果を出しています。

どうしてこのような圧倒的な結果を出せるのか、実際にB型作業所を運営していく上での視点や、障害者の方がどのように働いているのかについて、NPO法人AlonAlon理事長 那部智史様にお話をお聞きしました。

インタビューは、全部で5回の記事になっており、今回はその5回目です。5回目では、コロナ禍におけるB型事業所運営への影響と、新たにチャレンジしていること、障害福祉制度と障害者雇用の課題やこれから変化すべきことについて、お聞きしていきます。

コロナ禍におけるB型事業所運営への影響

Q:コロナ禍の中で、B型事業所の運営や胡蝶蘭を栽培される中での影響がありましたら、お聞かせください。

A:実は、第1回目の緊急事態宣言では、もしかしたら死んじゃうかもというぐらい大変でした。第1回目の緊急事態宣言の時は、日本中のオフィスが閉まりました。お祝いごともなくなり、担当者もオフィスからいなくなって、注文がすべてキャンセルになりました。緊急事態宣言が4月に出てから、5月6月の2、3ヶ月は、ほぼ発注がこない状況が続いたんです。

胡蝶蘭というのは、出荷の半年前に苗をいれるので、もう売れようが売れまいが関係なく、花が開いて出荷する時期になってしまいます。これは、さあ大変ということになるわけです。そんな中で、私たちが考えついたのが、企業の胡蝶蘭で使われる3本立て、5本立ての胡蝶蘭を1本立てにして、個人に販売することです。クラウドファンディングしたり、ホームページで紹介したり、Facebookで案内して、1本立ての個人向け胡蝶蘭を販売しました。そして、2000人以上の方からご注文いただきました。

母の日にかぶったというのもタイミングがよかったんですけれど、このおかげで他の花農家が廃棄しなければならないものを、AlonAlonでは1鉢も1本も廃棄しないで、すべて売り切ることができました。そして、この経験を元にこれから何を考えているかと言うと、胡蝶蘭以外の事業をつくることです。今までは、工賃を稼ぐ唯一のものが胡蝶蘭でした。でも、何らかの状況で胡蝶蘭が売れなくなったり、もしくは台風がきたりしたら影響が大きいので、それを回避するために5月からマンゴーの栽培もはじめています。台風といえば、台風の被害を受けて苗が全滅したこともあり、この時も大ビンチでした。AlonAlonは、ピンチを2回経験しています。

胡蝶蘭に続いて、マンゴー栽培にチャレンジ

どうしてマンゴーなのかというと、マンゴーの収穫で一番忙しいのは、7月8月なんです。一方、胡蝶蘭が暇な時期は7月8月なんです。それで、時期的な面からもスイッチしやすかったこと、また台風15号で被害にあわれた農園が耕作放棄地になると聞いたので、そこをAlonAlonが買取し、マンゴー農園にすることになりました。これは、もし胡蝶蘭が何らかの影響を受けても、マンゴーで工賃を出すためのリスクヘッジにもなります。

農福連携からはずれようとは思わないんですけれど、基本的には農業で障害者の工賃を稼ぐスタンスは変えずに、事業を広げていくことを考えています。その他には、農協さんから稲の育苗を受託しています。また、今後は、食べる方の農業の方にも、少しチカラをいれていくことをしていきたいですね。

マンゴーのほうは、同時にどうやって福祉を超えていくかというと、ただマンゴーを作ってそれを道の駅で売っても、ただのB型事業所になってしまいます。そこで、木更津に新しいホテルがオープンするので、その1階にスイーツ工房を作り、6次産業化をしていきます。

これもビジネスのちからで福祉を変えていくというストーリーの1つです。ただ、マンゴーを作るだけではなく、6次産業化して加工品にするなどの、新たなビジネスに転換して福祉を超えていくというストーリーになります。

研修・教育ビジネスと新たなネットワーク構築を展開

また、B型事業所を卒業しして、社員として送り出すときに、企業の胡蝶蘭農園を提案して、なおかつ胡蝶蘭農園の苗を販売して、できた胡蝶蘭を輸送するビジネスをしています。このときに、胡蝶蘭の栽培の監督をする指導員の養成として企業の社員を半年間受け入れて、胡蝶蘭の職人にするとともに、障害者の接し方などの研修をしてから、稼働しています。この研修、教育ビジネスがもう1つのストーリーになっています。

帝人さんではすでに稼働していますが、これと同じような障害者雇用の温室農園を作りたいという受注をいただき、新たなプロジェクトが近畿地域でも進行中です。来年は、九州地域でもでも胡蝶蘭農園を作る予定です。

これがいわゆるAlonAlonの胡蝶蘭のネットワークになっていきます。現状、帝人さんは千葉に農園を持っているので、例えば、九州のお客様に配送するときには、帝人の農園から私たちの関東の物流センターにいれて、私たちの九州の物流センターに持っていき、そこからお客様にお届けする形になっています。しかし、これが各地に有力な企業さんの温室農園ができると、私たちからすべて同じDNAの胡蝶蘭の苗を購入して、同じ研修をすると、すべて同じ胡蝶蘭ができるわけです。それで、現物を物理的に配送しなくても、トレードによる物流ができるようになります。

この新たな物流と在庫のプラットフォームを作ることができると、輸送費のコスト削減、在庫のリスクの軽減などにも繋がります。また、違った事業展開をすることもできるのではないかと考えています。

ハードとソフトを組み合わせたスマートアグリで新たな障害者雇用を研究

Q:仕組みができると、他にもいろんな可能性が広がりそうですね。他にも何か検討されていることはありますか。

A:産業用ロボットのシステムインテグレータの企業とスマートアグリの研究を進めていく予定です。センサーの技術や産業用ロボットの技術に長けている会社と合弁会社を作りました。システムインテグレータとは、産業用のロボットを組み合わせて、企業に提案して工場を作る企業のことで、いろいろなメーカーに全自動工場を提案しています。例えば、大手の自動車工場を見ると、人よりもロボットのほうが動いていますが、あれは1つの企業の機械ではなく、複数のメーカーの機械を組み合わせて作っています。

スマートアグリは、AlonAlonの胡蝶蘭農園のような全自動で動く農園のことを言います。このスマートアグリを活用して障害者雇用をしたいと思っている企業に、ハード面とソフト面から提案、提供していきます。システムインテグレータの知見というのは、センサーや産業用ロボットです。どんな障害者にも農場で働けるような補助をする技術がすごく長けているんですね。そして、その技術は自動工場やスマートファクトリーで培われているんです。

一方、私たちはスマートアグリで胡蝶蘭ができていますし、その他の企業でも導入をしはじめたり、新たに提案をしています。AlonAlonの知見は、スマートアグリで障害者雇用を達成するソフトの部分です。この両者が合弁会社を作ることで、今度は胡蝶蘭だけでなく、マンゴーを作り、障害者雇用をスマートアグリで実現したいという企業に対して、ハードとソフトの商品の実現化を目指しています。

今、私がどういうことを考えているかと言うと、障害者が仕事を終えて帰宅して、例えば、温室内を糖度センサーのついているドローンが徘徊して、「このマンゴーは収穫してもいいよ」「このマンゴーはまだだよ」というのをAIに学習させます。そして、翌日障害者が出勤してきた時に、VRメガネをつけると、「これはとっていいよ」というのを教えてくれるスマートファームができるんじゃないかなと思っています。これは、まだ私の想像ですが、これを実現するための研究施設を千葉県富津市に作ります。

また、この産業用システムインテグレータの会社は障害者雇用が不足していました。それで、その農園を彼らの実験室として、B型事業所から利用者が2人就職しました。実際に障害者が研究員となって働かないと、実際にその場で働けるかどうかわかりません。だから、彼らの価値を100%利用する事業ができたことになります。これは、健常者じゃ無理なんです。これが、私たちの目指す障害者雇用なんです。いわば、その企業にとって、その障害者がいなければ困るっていう存在にすることが、AlonAlonの考える障害者雇用の根っこにあります。だから、そこの考えを本当に理解していただけると、他のサテライト農園とは明らかに違うわけです。

障害福祉制度と障害者雇用の課題、これから変化すべきこと

Q:障害者雇用を持続的に行っていく上で、今後必要と思われることについてお聞かせください。

A:私が感じているのは、障害者行政の障害福祉と企業の障害者雇用を促進する部門が、あまり連携できていないということです。これによって障害者雇用はかなり阻害されていると思うので、本来やらなきゃいけない「一人も取り残されない」という国連が決めたことを厚生労働省でも考えて、やってもらいたいと思っています。

また、今の障害者雇用に関していうと、その企業のプラスになっていない、つまりコストセンターになってしまっていることが見られています。そして、これは物理的な距離の問題ではなくて、心の問題だと思います。つまり、企業もこの障害者の社員がいないと困るというような状態をちゃんとつくる必要があります。企業が外注に出しているものを含め、いろんな業務の切り出しはできるはずです。そこをしっかり検討して、外注するよりも社内で内製したほうがコスト的に安いことを示す制度設計ができることによって、障害者の社員が、本当の意味での社員になると思います。

そして、B型事業所のビジネスモデルを変えていくことです。今の状況では、B型事業所にいる利用者は就職できていない状況です。だけど、ここをもっと柔軟性をもたせて、チャレンジしていくB型事業所ができてくると、就労に対する質を上げていくことができます。そのためには、事業所が作業する設備に投資ができる制度設計を作り、彼らが作業をする専門性をどんどんあげていくことです。

今日は、シャープペンシルの組み立て、割り箸の袋詰、こんなことをやっていたら専門性も何もありません。要は作業場に投資して、技術やノウハウを蓄積できる環境をB型事業所がそれぞれ考えて作ることによって、就職できるステップを示していくことが必要です。

生活介護やB型事業所にいる人たちを置き去りにすることによって、今の障害者雇用は成り立っています。でも、彼らも働きたいと思っているわけですよ。どうしたら、彼らが働ける環境ができるのかを考えていく必要があります。そして、必要な配慮が受けられる環境をつくることによって、現状で就労にのらない人でも働ける可能性があり、ビジネスの組み換えをすることによって広がりがまだまだあることを示してほしいですね。

また、最後になりますが、障害福祉には、もう一つの社会課題があると考えています。それは、障害福祉職員のワーキングプアの問題です。国から4千億の国費を使っていても、まだ障害福祉に関わっている職員はワーキングプアなんです。大卒の障害福祉職員の年収が、普通の会社の社員に比べて100万円以上違います。年収300万円以上になるのも大変だったりします。結局それによって、いわゆる想いや気持ちはあるけれど、金銭的なものがついていかずに福祉の世界をやめていく有能な人がたくさんいます。

このまま自分が障害福祉に携わっていたなら、自分自身も不幸になってしまう、いわゆる経済的な困窮になっていく、子どもも作ることができない、経済的成功なんて夢のまた夢、結婚さえできないという人が多くいます。そして、結局、何が起こるかと言うと、自分の将来の先も見えない環境の中で仕事をしなければいけないので、結局、障害者に手を上げてしまったという事件が起こってしまいます。このような事件の半分はワーキングプアが原因だと私は思っています。

だからこれらを解決していくにはどうしたらいいかと言ったら、福祉をしている事業者がビジネスをしている企業にちゃんとリーチしながら、彼らと一緒に成長していくスキームを作っていくことなんです。

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まとめ

障害者雇用で農業に取り組んでいる企業や、胡蝶蘭栽培に取り組んできた企業を知っていたので、障害者にとって作業内容としての適性はあることは理解していたものの、他の障害者雇用とどこが違うのか、その違いがわかりませんでした。しかし、販売経路をどのようにしているのかお聞きした時に、バタフライサポーターや、アンバサダーの話をお聞きし、これはしっかりヒアリングさせてもらわなければ・・・と思い、今回のヒアリングをさせていただきました。

実際にお話をお聞きして、B型事業所でありながら工賃10万円、就職率100%を達成されているという実績はもちろん素晴らしいですが、障害名や程度に関係なく働きたいと思う人に門戸を開けていることや、組織への帰属意識への考え方などは、これからの障害者雇用においても大いに刺激につながるのではないかと感じています。

ビジネスに関わってきた経験から見られた障害福祉の制度や障害者雇用に対する考え方や視点をお聞きできたことは、私自身もいろいろな気づきや発見がありました。また、新たなビジネス構想をお聞きしていて、本当に楽しかったです。

今回のお話をお聞きする中で、障害者が働く業務を創り出すこと、そして、組織に貢献できるようにするためには、やはり仕組みづくりが大切だと思いました。それは、企業によっては、事業としてビジネスモデルやスキームのような大規模なものかもしれませんし、もしかしたら業務の組み換えのような比較的小さなものかもしれません。しかし、それぞれの組織にあったものを考えることによって、本当の意味で組織への帰属意識を感じられるような障害者雇用が実現するものであってほしいと思います。

参考

ビジネスのチカラで福祉を変えていく その1~工賃10万円、就労率100%のB型事業所の実践~

ビジネスのチカラで福祉を変えていく その2~工賃10万円、就労率100%のB型事業所の実践~

ビジネスのチカラで福祉を変えていく その3~工賃10万円、就労率100%のB型事業所の実践~

ビジネスのチカラで福祉を変えていく その4~工賃10万円、就労率100%のB型事業所の実践~

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