コロナ禍になり、テレワークという働き方が広く社会にも受け入れられるようになりました。一方で、テレワークの業務管理やマネジメントが難しいと感じている企業やマネジメント層も少なくありません。障害者雇用でもテレワークを導入するところも増えつつありますが、残念ながら一部では机やパソコンの前にいることを監視しているだけの働き方やツール管理をしていることも見聞きします。
このようなテレワークでは、働く人もマネジメントする側も疲れ果ててしまいます。株式会社リモシア代表取締役社長の張 毅強氏は、テレワークでも自律的な働き方や組織を作ることが可能であると考え、それをサポートするツールを開発されています。どのような経緯でツール開発に至ったのか、また、テレワークという働き方の中でどのように評価に活用できるのかについてお聞きしました。
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株式会社リモシアの概要
事業内容:社員主体・情報発信型業務管理サービス
設立:2021年2月
加盟団体:一般社団法人日本テレワーク協会
ホームページ
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仕事を生産的にするのに役立つツールが必要だと感じた
Q:リモシアはどのような経緯で開発されたのでしょうか。
A:リモシアを作ったきっかけは、コロナがあり、急にテレワークという働き方が広がったことが影響しています。テレワークという働き方が受け入れられるあたり、業務管理とか業務を可視化する必要が出てきました。私はIT関係に長く携わっていたこともあり、このような働き方に興味があり、10社以上のセミナーに参加しましたが、そこでとても違和感を感じました。
どのようなところに違和感を感じたのかというと、オンラインのセミナーでは、最初に解決すべき課題が提示され、最後に課題を解決すべきための具体的な手段として実際のツールとか、サービスを提案するものがほとんどです。このソリューションとして紹介されるものが、パソコンにエージェントソフトのようなものをいれて、社員の動きを可視化するサービスとかツールが紹介されていました。
ただ、このツールが本当に体のアクションを感知されているような感じで、1日キーボード何回叩いたかとか、立ち上がっている画面は本当に業務で必要なものなのかなどをスクリーンショットで取られて、そういったことがまとめてマネジャーに報告されたりするものなんです。キーボード叩いた回数が200回とか、3分間あたり5回とか・・・。これでは、本人にとってもつまらないし、マネジメントする人にとってもこの結果を見て、たしかにパソコンの前に座っているかどうかはわかるけれど、これって本当に仕事しているのかというのはわからないんじゃないかなって思ったんです。
また、私はIT業界に入り、担当者からその後、組織やプロジェクトの管理の仕事をしてきた経験がありますが、このようなツールでは、一般の社員から見ても、マネージャーから見ても喜ばれないんじゃないかなと感じたんです。とりあえずパソコンには向かっているという仕事の態度はわかる、でもそれ以上は逆に何もわからないんです。さらに、いかに仕事をしているふりをしているかという対策なんかも考えられていて、飼っているペットの体にマウスをつけて走らせるとか、そうすると人間がいかにも操作しているように見えるなんていう情報も出てきたりしました。これは笑い話のように聞こえますが、本当の話なんですよ。
でも、さすがに動きが激しいのでバレてしまうということで、他の方法が考え出されたりする。こういうツールが導入された結果で、テレワークという働き方によってもっと仕事を生産的にするのにどうしたらよいかを考えるのではなく、動きをしているということをアピールすることに注目がいくのでは、幸せになれないよねと思ったのが、開発の一つのきっかけです。
また、このようなセミナーの中で参加者から出される質問で多かったのは、テレワークという働き方はいいけれど、人事評価が難しい、できない、どうすればいいですかという声です。そこで回答される答えが、全然的を得ていないこともありましたし、私から見れば評価が難しいというのは、そもそも業務自体をわかっていない、業務の動きがわかっていないのだと感じました。当然業務自体がわからないので、結果の評価もできないことになります。それで、単に動きを感知するものではなく、しっかり仕事の内容や進め方を評価できるようなツールを導入することで、テレワークでも業務が共有でき、適切な評価ができるツールを出して、働く人を適正に評価できるものにしたいと考えました。
私はIT企業に勤務していましたが、実は、あまりテレワーク自体は経験していませんでした。大企業の中でプロジェクトマネジメントに携わっているときには、やはり皆を集めて、リアルでやるほうがいいと思っていましたし。でも、コロナがあって、逆にテレワークで仕事をしないと事業継続ができない状況になってきて、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の一環としてもテレワークを考えていく必要があると感じています。
テレワークのメリット、デメリットとは?
Q:テレワークのメリット、デメリットは、どのようなところでしょうか。
A:そうですね、立場が違うと見え方も違うと思うんですが、組織と個人という立場から考えてみる必要があると思っています。まず、組織として考えるメリットですが、一番はBCP対策に効くと思っています。会社にとってどのような環境でも事業の継続ができるということは、何よりも一番の効果ではないかと思います。
次に、ライフスタイルの対応とか、通勤圏外に住む人材の活用という点があります。また、固定費の削減もあります。人が増えるとオフィスが広がり、電気代や通勤費用もかかります。こういったものはテレワークを行なうことで削減できます。このようなメリットがあると考えています。
一方でデメリットになってしまうのは、何と言っても求心力の低下だと考えます。やはり一緒に集まると一体感を感じられやすいですが、執務環境がバラバラになると、歩調合わせるのが難しいと感じます。短い期間であればまだいいですが、長い期間になってくると経営や上司の考えなども伝わりにくくなります。
ちょうど遠距離恋愛と似ていると思うのですが、既に会社に10年も勤めていれば、会社の文化ややり方などのいわゆる会社のDNAを理解しているので、そのまましばらくは続けられると思います。でも、新しい人が入ってくると、初めからそのような部分をあまり理解していないから、全く新しい人同士で付き合おうと思ってもうまくいかないと思うんですね。
また、長年一緒にいて付き合って、その後遠距離になった場合でも、はじめは共通の話題もあるからうまくいくように思えるものの、お互いに環境が異なる期間が長くなると、話題も少しずつずれてきやすくなります。そして、お互いの気持が薄れたり、別にいなくてもいいんじゃないか・・・なんてことにもなってしまうかもしれません。
個人という視点から見た一番のメリットは、個人のライフスタイルへの対応です。会社に行くと合わせなければならないことも多いですが、テレワークでは自分のライフスタイルをある程度生かしやすくなりますし、通勤時間を減らせるというのも非常にいいところですよね。また、最近副業の許容度も広がってきていることもあり、それが行いやすいということもあると思います。
デメリットは、本人たちはあまり感じていないかもしれませんが、期限が長くなるにつれて自律性や自主性の部分で低下しがちになると感じます。一人で仕事をする環境なので、常に自分と格闘しなければならない部分もあり、皆がみんなモチベーションを維持できるわけではありません。今は、まだ1年、2年くらいなので、それほど大きな影響は出てきていないかもしれませんが、長期的に考えると、やはりそういったところの影響が出てくると思います。最悪のケースとしては、人によっては社会からの離脱することもありうると思います。また、あまりにも人や外と接する機会が限られて、社会で生きる能力が低下してしまうということも起こりやすくなるかもしれません。
テレワークには自律性と維持するためのツールが必要
Q:テレワークは、自律している人しかできないという印象を持たれることがありますが、このことについてはどのようにお考えですか。
A:テレワークは、自律性よりも性格の影響が大きいのではないかと感じています。性格というのは、外交的か内向的かで、向き不向きがあるということです。外交的な人は外との繋がりを持っていないと不満になりやすい。もちろん一人の環境でも仕事はやるんですけれど、人とのつながりが不足して欲求不満になっているところがあるので、何かしら人とのコミュニケーションをしたい、自ら行動を起こして自分の情報を出してインタラクティブなアクションを自ら起こしていこうとします。そういう内発的なものがある人たちは、テレワークに向いていると思います。
一方で内向的な性格の人は、最初はいいと思いますが、仕事ができていればいいという感じになりがちで、チームとしての連携を軽視しやすくなってしまう傾向があります。外からの連絡に対して、どんどんコレが邪魔だなという、やっているからそれでいいというような・・・。このような意味で、テレワークをするには個人の性格を見ていくことが大切だと思います。
自律性は、外向的の人も内向的な人にとっても重要です。自律性が下がると、外交的な人も面倒だと感じてしまうことがあるからです。ただ、自律性は性格と違って育成することができると考えています。最初から自律性が高い人もいますが、それほど多くはありません。だから、結局、教えて育成することが必要です。また、育成するだけでなく、どのように維持するかも重要な点です。
外部的な要因や自発的な要因が弱くなると、自律度は下がっていきます。それで、何かしらの維持をするための仕組みが大切です。一般的な人材育成おいては、自律性も注目されていますし、実際に育成もしています。しかし、テレワークになると、この部分があまり考えられておらず、それがテレワークの問題、課題につながっているのではないかと思います。
リアルに職場で働く場合には、どのように自律性を維持するのに役立っているかと考えると、上司の目や周辺の目や評価だったり、立派なオフィスで働いている自分だったりして、「ここで頑張らなくては。」というような帰属意識がいい意味でのプレッシャーになっていると思います。しかし、テレワークではそういうことはあまりない。周りの上司や同僚がいないという環境の中で、外部的な要因、プレシャーが弱くなってしまいがちです。テレワークという働き方の良さはあるものの、他の人と比べてどうかというようなところも仕事をする上の刺激がある程度必要かなと思います。
私も自分で感じるんですが、誰かが背中を押してくれないと、明日でもいいやとなってしまうことがある。だから、育成、維持の方法として、適度なプレッシャーを与える環境が必要だなと感じてリモシアを開発しました。リモシアというツールでは、仕事の動きや自分の考え方が仕事をしている全員に共有されます。自分からも他の同僚からもお互いに状況が把握しやすい、周りが見れる環境を作れるんです。
リモシアは働く管理だけでなく、仕事の内容や考えを共有できるツール
Q:リモシアは、組織が自走するためのツールというキャッチフレーズがついていますが、特徴や使い方をお聞かせください。
A:まず、大きな特徴としては、仕事の内容や自分の仕事の進め方、考えを共有できるということです。他のツールは、はじめにも話しましたが、本当に自分の体が動いていることを共有するツールが多いんです。このようなツールだと、私は仕事しているからそれで十分じゃないかという感じになりがちですが、私はそれは適度な正しいプレッシャーのかけ方としては疑問を感じます。
むしろ仕事に対する考え方やプロセスを可視化したり、同じ仕事だったら私はこういう風に考えてやっていますということを示すことが大事だと思っています。自分と他の人の仕事の方法や考え方を見て参考や比較する、こうすることで自分を振り返ったり、他の人のいいやり方を自分の中に取り入れたりして、さらに自分の結果へ繋げていく、そんないい意味のプレッシャーがかけられるといいなと思います。
テレワークの一般的なツールだと、表面的な時間や動きとして量的なものを測りますが、リモシアの場合は質、業務内容や仕事のクオリティを見ることができます。つまり仕事の評価が適切にできます。
他のツールとの比較をするとわかりやすいので、図で解説してみたいと思います。「何を実現したいのか」「何がみたいのか」「何の情報が必要か」「情報取得手段」という点から比較してみました。
今までの評価は、結果が出たことに対する評価が多かったと思います。もちろんこういった考え方もいいと思います。一方で、組織の中の仕事というものは、わかりやすい結果にならないものがあります。例えば、一緒に10人でプロジェクトをやる、このプロジェクトが終わるか終わらないかという結果はわかりやすいものです。しかし、そのプロジェクトに対して、10人のそれぞれの貢献というのはどうなっているのかというのは、意外とわからないんです。
一般的には10人のチームのリーダーをしている人が一番貢献が大きいと見えがちですが、果たして本当にそうでしょうか。もしかしたら実は何も考えていないで、部下の一人に何でもかんでもやらせていて、自分はリーダーというポジションにいるだけということもないわけではありません。プロジェクトリーダーが偉く見えているだけで、この人の手柄だなってなっているけれど、結構メンバーが見えなかったりするんですよね。
逆に全然頑張っていないメンバーがいて、プロジェクトは大成功をおさめたという場合、実はこの人は全く働いていないといった状況も見えないこともあります。リーダーは一番現場を見ているから、当然わかるんじゃないという見方もあるんですけれど、そこにも結構落とし穴があります。リーダーの評価が、結構印象や自分の記憶によって判断していることが多いんです。
そのリーダーの上司から、「Aさんは頑張っているの?どう?」って聞かれると、その時に仕事をしている様子を思い出しますよね。でも、人間の記憶って意外と短くて、直近のことを思い出すんです。「その人は、割と頑張っているね。いいんじゃない。」という評価かもしれません。一方で、たまたま1週間前にちょっと問題が起こってしまったりする。そうすると、その印象が強くて、「ああ、Aくんはいいところもあるんだけどね・・・。問題を起こすんだよね。」みたいな評価になってしまうことが起こります。上司からの聞かれたタイミングによって、同じ人でも評価が変わることがよくあります。客観的な材料というのは、結構見過ごされがちで、これは評価のブレにつながります。
このような状況をなくすためにも、リモシアみたいなサービスを使って、記録とか、自分の進め方などを自分で残すのは大切なことだと思います。証拠にもなりますし、裏付けにもなる。逆にリーダーが悪意を持って、頑張っているのに評価したくないってこともありますけれど、こういったことが見えていれば、リーダーも評価する時に問題を起こすことも合ったけれど、業務での課題解決やこういうところが成果を出しているよねということが見えて、より適切な評価ができるかなと思っています。
また、完璧な人間はいません。誰でも得意なところと不得意なところがあります。やる仕事によって、これはAさんが向いている、あれはBさんが向いているなど、そういった状況をリモシアで記録した仕事の結果から読み取れるので、評価だけでなく、さらに一歩進んでより適性の合った人材の選抜にもつなげることもできます。そういった活用もできるといいなと感じています。
後編では、リモシアを活用してどのようにマネジメントに活かせるのか、組織として情報共有できるのかについてお聞きしていきます。
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