特別支援学校からも企業の障害者雇用をサポート~山形県の取り組み~

特別支援学校からも企業の障害者雇用をサポート~山形県の就労支援コーディネーターの取り組み~

2020年11月16日 | 採用活動

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障害者雇用の就労支援というと、就労移行支援事業所や職業センターなどをイメージしがちですが、特別支援学校からも障害者枠で就職を希望する生徒がいます。(特別支援学校高等部からの就職率は3割ほど。)

多くの場合、特別支援学校でその役割を担っているのは、進路担当の先生ですが、山形県では、企業の障害者雇用の理解促進や、求人や実習受け入れや、特別支援学校への就職に結びつけるサポートをする【就労支援コーディネーター】を設けて、障害者雇用を進める取り組みが行われています。

平成28年度から31年度まで山形県立楯岡特別支援学校と上山高等養護学校で、就労支援コーディネーター業務を2年ずつ担当された日比野 久枝先生にその取組についてお聞きしました。

就労支援コーディネーターとは、どんな役割を担っているのか

就労支援コーディネーターは、事業所等訪問による、現場等における実習の受け入れ先や就労先の開拓を行いますが、その中でも新規事業所の開拓がメインとなります。

ハローワークや労働局とネットワークを築いて情報収集しながら、訪問企業を選定して、アポイントメントを取って事業所に行き、学校概要や生徒の特性、就労までの流れ等について話をする機会を作っています。

企業の担当者の方の中には、障害者雇用については、ある程度ご存知の方もいらっしゃいますが、特別支援学校のような学校やそこに通っている生徒については、あまりご存知ない方もいらっしゃるので、まずは障害や生徒たちのことを知ってもらうことを意識しています。

はじめての訪問した企業に、いきなり障害者雇用を考えてくださいというわけにはいきません。ですから、まずは、会社見学をさせていただいたり、特別支援学校の学校見学にきていただいたり、生徒について知ってもらう機会をもつことを提案させていただきます。

そして、実際に生徒たちを見ていただいたり、接したりしてもらう機会を作ります。実際に、生徒と接していただくと、「こんなことができるのではないか・・・」と企業側の方から提案をいただくことも多くあります。

障害者雇用への理解は、まず知ってもらうことが大切

事業所を訪問して感じたのは、障害者雇用で不安に感じている方が多いということです。障害者雇用と言うと身体障害をイメージする方が多く、知的障害というと何か突発的な対応が必要となるのではないかとか、パニックを起こすのでは・・・と、安全面を心配される方がいらっしゃいました。

そこで、知的障害でもいろいろな方がいらっしゃることを説明して、授業の成果物を見ていただくと、こんなこともできるのかと、驚かれることもあります。はじめに名刺交換するときには、「生徒がデザインと印刷をした名刺です」と紹介しています。

その他にも、学校案内や、ネームホルダーやバッグ(生徒たちが縫製している、「こんなに細かな丁寧な作業ができるんですねと言っていただくことも多い」)、文集などを見ていただくようにしています。

また、最近では発達障害が広く知られるようになってきましたが、言葉だけが独り歩きしているようなところもあり、負の側面を捉えられているところもあったりするので、逆から見るとプラスの面として捉えられることができることなどを、お伝えするようにしています。

そして、授業の一環として年に2回、企業実習を行っていることや、自分たちで積極的に何かを体験していくことが少ない生徒たちなので、少しでも多くのことを見聞きする体験をしたり、いろいろな仕事や働く大人に接したりする機会をいただきたいということをお話します。

花笠ほーぷの出前講座

雇用実績のない企業や、障害者雇用で悩んでいる企業の方には、所属している「花笠ほーぷ隊」で、出前講座をすることもあります。

ある企業さんでは、発達障害の診断はないものの、そういう傾向のある社員さんがいて、対応に悩まれていたので、特性などを体験する機会をもつことによって、社員の方が働きやすくするための視点が増えるかもしれないと提案して、講座を社員研修として受講していただきました。

疑似体験の中では、軍手を2枚重ねて細かい作業や文字を書いてみたり、コインをつまみ上げたりと、手先を使う作業を行います。そして、その作業をしながら、横から、「早く、早く」とか、「どうしてできないの?」「不器用だね」とプレッシャーをかけて作業することも体感してもらいました。また、反対に「落ち着いてやってください」などの声掛けをされたときとの比較や、どのように感じたのかなどを感じていただいています。

不器用さは生まれもった特性で、本人の努力でどうにかなるものではなく、右利きや左利きと同じように変えられない、変えにくいものであり、そこを矯正しようとするのではなく、環境や周りの受け止め方、声がけなどを変えることができることをお伝えしています。

(ちなみに「花笠ほーぷ隊」は、知的障害のお子さんをもつ「手をつなぐ育成会」に所属する4人のママからスタートして、現在は、日比野先生を含め26人の有志で活動されていらっしゃるそうです。今では、ママだけでなく、市役所の職員の方や、消防官、教員の方など、その活動に共感される方も参加されています。県内だけでなく、他の地域でも出張されて出前講座をすることもあるそうです。)

就労支援コーディネーターの意義と今後にむけて

はじめて実習受け入れをしていただいた企業に2回くらい説明に行きましたが、実習受け入れに迷われていた企業さんがありました。しかし、いざ実習生を受け入れてみたら、とても礼儀正しくて、明るくて、職場を和やかにしてくれて、職員の笑顔が増えてと、高評価をいただきました。

障害特性の良い部分がうまく出せたケースですが、実習の最終日には、社長さんが生徒の働きぶりに感動した、また、実習受け入れに悩んでいらっしゃったけれど、受け入れて本当によかったと言ってくださいました。(実習に行った生徒さんは高校2年生で、ご本人も職場の方々と別れがたく泣いてしまったそうです。)

企業実習は、就労につながることが理想ですが、その他のメリットも大きいと感じています。生徒たちが働くことをイメージしたり、就職に対するモチベーションを上げたりするためにとても有益な機会ですし、企業の方にも今までのイメージとは違った障害者を感じていただく機会になっているように感じます。例えば、生徒たちの人間的な魅力に直に接することで、価値ある人だと理解してもらうことにも繋がっているように思います。

でも、うまくいくことばかりではありません。就労したものの、なかなか家庭環境の面から就労に送り出すことが難しいという状況があり、職場定着できないこともあります。送り出した生徒が、4月に入社してGW明けにはギブアップしてしまったというケースもありました。

仕事をやめてしまったあとに話を聞いたところ、「学校から薦められたから、就職した。」とのこと。本当に生徒本人が「働きたい」という明確な気持ちを持って就職活動をしているのかを、丁寧に見ていく必要があると思いました。ちなみにこのケースの就職先の職場は、とっても理解があって、素晴らしい職場でした。

ですから、ご家族との連携や、ご家族がどういった状況であるか、子どもを送り出せる状況なのか、それが難しければ生徒自身が自立できるようになっているのか・・・ということも合わせて考えていく必要があるなと感じています。そこは、学校と福祉が協力することも大切です。

『障害は人と環境によって作られる』という言葉があります。大勢の事業所の方々とお話しさせていただいた中で、この言葉に理解を示されない方は誰ひとりいませんでした。環境作りの見本は、学校が担える部分であると感じています。事業所と学校の繋ぎ役として、生徒たちの営業マンとして、就労支援コーディネーターの業務はやりがいのある仕事だと思っています。

まとめ

就労支援コーディネーターとしての取り組みを日比野先生からお聞きしました。行政や就労支援機関とは、少し違った視点からの企業に寄り添ったアプローチから、生徒たちの実習の場や就労先を開拓されています。

興味深かったのは、障害者雇用を進める企業の日比野先生の企業開拓のスタイルです。日比野先生は、もともと教員ではなく、TV局での番組制作や、青年海外協力隊に参加されたり、さまざまな企画やPR関連の仕事に携わってこられた幅広いご経験から、今までのご経験を活かして人とのつながりで紹介してもらう「わらしべ長者」スタイルの開拓方式を取られてきたそうです。

つまり、今まで関わったことのある方から紹介していただいた企業に訪問する初回の訪問も「はじめまして」というよりは、ある程度情報をもって訪問できている状態を作られています。また、紹介された経営者の集まりなどにも参加されて、障害者雇用に関心のある企業があると、そこから訪問させてもらうこともあるそうです。今までのキャリアや地域の特性に合わせた企業訪問の大切さを感じました。

また、はじめに勤務されていたTV局で、特別支援学校を取材されたことがあり、それが後に勤務することになる特別支援学校であったことや、そのときに買われたマグカップを今も愛用されているというエピソードをお聞きして、日比野先生が必要とされる場所に戻ってこられたようにも感じました。

特別支援学校の生徒たちの多くは、まだ「働く」ということをイメージできていないことも多くあります。就労移行支援事業所では、通ってくる利用者は、2年後に就労するという明確な目標を持ってきますが、高校に入る時点では、生徒たちがそのような意識をもつことは、なかなか難しいでしょう。そのサポートや意識づけが、特別支援学校では、就労だけでなく、教育の場で求められており、そういった役割を果たされているのを感じました。

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