平成30年4月から障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成30年厚生労働省令第7号)の規定により、精神障害者の短時間労働者に関する算定方法に特例措置が設けられました。
一般的に、精神障害者である短時間労働者は実人員1人を「0.5 人」と算定しています。しかし、この特例措置によって、要件を満たす場合には実人員1人を「1人」と算定できることになっています。どのような場合に、特例措置が反映されるのかについて説明していきます。
精神障害者の短時間労働者に関する特例措置
まず、精神障害者の短時間労働者に関する特例措置とは、どのような制度なのか見ていきたいと思います。
障害者雇用率の算定(6・1報告)や障害者雇用納付金の額などの算定において、精神障害者である短時間労働者は実人員1人を「0.5 人」と算定しています。しかし、次の要件を全て満たす場合は、平成30年4月1日から、実人員1人を「1人」と算定できるものです。
要件2:次のいずれかに当てはまる者であること
・新規雇入れから3年以内の者
・精神障害者保健福祉手帳の交付日から3年以内の者
要件3:次のいずれにも当てはまる者であること
・平成 35 年 3 月 31 日までに雇い入れられた者
・平成 35 年 3 月 31 日までに精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者
上記要件を満たす場合であっても、次の留意点を見ていくことも必要です。
留意点1:精神障害者が退職した場合であって、その退職後3年以内に、退職元の事業主と同じ事業主(※)に再雇用された場合は、特例の対象とはなりません(原則どおり、実人員1人を「0.5 人」と算定します)。
※ 退職元の事業主が、子会社特例やグループ適用、関係子会社特例又は特定事業主特例の適用を受けている場合は、その特例を受けているグループ内の他の事業主も「退職した事業主と同じ事業主」とみなされます。
留意点2:療育手帳を交付されている者が、雇入れ後、発達障害により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた場合は、療育手帳の交付日を精神障害者保健福祉手帳の交付日とみなします。
特例措置の要件に関するQ&A
月によって勤務時間数等に差異が生じているが、短時間労働者かどうかは、どう判断すれば良いか
この「短時間労働者」は、週所定労働時間数が週20時間以上30時間未満の常用労働者を指しますが、具体的には、6・1調査や、障害者雇用納付金の額の算定等、それぞれの手続きにおける短時間労働者の整理に準じることになります。
例えば、一旦、フルタイム勤務に移行した後、再び短時間勤務に戻ってきた場合には、その他の要件を満たす場合には、特例の適用を受けることができます。
新規雇い入れから3年以内とは、働き方等に関わらず、同一事業主に雇用されてからの期間を指すのか
新規雇い入れから「3年」とは、同一事業主(及びグループ企業等、留意事項①参照)に雇い入れられてからの期間を指します。雇用形態の変更等には関係ありません。
また、施行日前に雇用されていた場合であっても、新規雇い入れから3年を経過するまでは、特例措置の対象となります。例えば平成29年4月1日に新規雇い入れされた者であっても、平成32年3月31日までの間は、(新規雇い入れから3年以内という点で、)本特例措置の対象となり得ます。
精神障害者保健福祉手帳を取得してから3年以内とあるが、引っ越しにより再交付となった場合や、一旦返還した後に再度交付を受けた場合等、一定以上の期間を空けて再交付を受けた場合は、どう考えれば良いのか
雇い入れられた時点では精神障害者保健福祉手帳を所持していなかった者が、当該手帳の交付を受けたものの、返還等により手帳を所持していない状態となり、更に再度交付を受けた場合には、雇い入れ後、初めて手帳の交付を受けた日を、本特例措置における精神障害者保健福祉手帳の交付日として、特例措置の起算日とします。
精神障害者保健福祉手帳の所持者が雇い入れられた後、返還等により手帳を所持してない状態となったものの、その後改めて手帳の交付を受けた場合には、雇入れ時点で既に手帳を所持していたことから、雇入れ日を特例措置の起算日とします。
手帳の返還理由や再交付までの期間等に関わらず、一律に上記の取扱とします。
退職後3年間の要件については、本人都合で離職した場合等も含まれるのか
特例措置は、事業主都合による解雇のほか、期間満了による雇止めや、本人都合で退職した場合など、離職理由に関わらず、離職から3年以内の者については対象となりません。
離職した会社と別の会社に雇用された場合であっても、障害者雇用促進法の特例により、雇用率等の算定上、当該離職した会社に再雇用されることと同一の効果を有する場合(親会社と特例子会社の関係等、列記されている全てのグループ内に含まれるケース)には、同様に、該当する離職から3年以内の者については対象となりません。
算定方法
【事例1】
3年以上前に一般雇用として雇い入れられ、その後に精神疾患を発症。2年前に精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者(現在は短時間勤務)は対象ですか。
要件1から3までを全て満たしていますので、精神障害者保健福祉手帳の取得から3年を経過するまでの間(今後1年間)については、特例措置の対象(1人と算定)となります。
【事例2】
3年以上前に精神障害者(精神障害者保健福祉手帳あり)として雇い入れられたが、2年前に、住所変更により手帳の再交付を受けた者(現在は短時間勤務)は対象ですか。
要件1及び3は満たしますが、要件2を満たさないため、特例措置の対象とはなりません。(0.5 人と算定)
<要件2について>
・新規雇入れから3年以上が経過しているため、満たしません。
・精神障害者保健福祉手帳の所持者が雇い入れられた後、返還等により手帳を所持してない状態となったものの、その後改めて手帳の交付を受けた場合には、雇入れ時点で既に手帳を所持していたことから、雇入れ日を特例措置の起算日とします。本ケースの場合、雇入れ日からは既に3年以上が経過しているため、要件を満たしません。
【事例3】
1年前にA社に精神障害者(精神障害者保健福祉手帳あり)として雇い入れられたが、雇入れの2年前に、A社の特例子会社であるB社を解雇されていた者(現在は短時間勤務)は対象ですか。
要件1から3までの全てを満たしますが、留意点に該当するため、特例措置の対象とはなりません。(0.5 人と算定)
<留意点について>
精神障害者が退職した場合であって、その退職後3年以内に、退職元の事業主と同じ事業主(子会社特例等を受けている場合は、共に特例を受けている他の事業主を含む。)に再雇用された場合は、特例の対象とはなりません(原則どおり、実人員1人を「0.5 人」と算定します)。これは、退職事由が解雇であっても自己都合退職であっても同様です。
【事例4】
発達障害があり、雇入れ時(3年以上前)から療育手帳を所持していました。その後、精神疾患を発症し、1年前に、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者(現在は短時間勤務)は対象ですか。
要件1から3までの全てを満たし、かつ、留意点にも該当しないため、精神障害者保健福祉手帳の取得から3年を経過するまでの間(今後2年間)については、特例措置の対象(1人と算定)となります。
特例措置はいつまで行われるのか
精神障害者である短時間労働者に関する特例措置は、要件の一つとして、平成 35 年3月 31 日までに、雇い入れられ、かつ、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者であることとしています。この措置については、平成 35 年3月 31 日までで終了するか、平成 35 年4月1日以降も継続するかについては、今回の措置による効果等を踏まえた上で検討することとしています。
参考資料:精神障害者である 短時間労働に関す算定方法の特例措置(厚生労働省)
まとめ
平成30年4月から精神障害者の短時間労働者に関する算定方法に特例措置が設けられています。これにより一般的に、精神障害者である短時間労働者は実人員1人を「0.5 人」と算定していますが、特例措置によって、要件を満たす場合には実人員1人を「1人」と算定できることになっています。
ここでは、特例措置が反映される要件や事例について説明してきました。要件や留意点は細かな点がありますが、該当する場合には、カウントが0.5人から1人にカウントできることにできます。内容を把握しておくことをおすすめします。
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