精神障害のある社員の体調の波への対応|管理職任せにしない考え方

精神障害のある社員の体調の波に、職場はどう対応する?管理職任せにしない判断の考え方

2025年12月10日 | 判断とマネジメントの構造

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障害者雇用を組織の力に変える5日間

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「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年8月1日更新
精神障害のある社員について、管理職から次のような相談を受けることがあります。

「最近、遅刻や欠勤が増えている」
「仕事の進み方に波がある」
「本人にどこまで聞いてよいのかわからない」
「仕事を減らすと、周囲の負担が増えてしまう」
「人事へ共有すると、本人との信頼関係を損ねそうで心配だ」

こうした場面では、管理職が本人の体調、業務量、周囲への説明、人事への共有まで、一人で考えることになりがちです。

本人へ配慮しようと慎重になり、しばらく様子を見る管理職もいれば、すぐに業務を減らす管理職もいます。人事へ早めに相談する人もいれば、本人から止められたことを理由に、問題が大きくなるまで共有しない人もいます。

対応に違いが生じるのは、管理職の理解や優しさが足りないからとは限りません。どのような変化を確認し、どこまで現場で対応し、どの段階で人事と考えるのかという前提が、組織で共有されていないことが原因の場合があります。

精神障害のある社員の体調の波に対応するとき、管理職が本人の状態を診断したり、一人で働き方を決めたりする必要はありません。職場で確認できる事実と業務への影響を整理し、本人と確認したうえで、一時的な調整、組織への共有、対応の見直しを行うことが重要です。

この記事でわかること

  • 精神障害のある社員への対応が属人化しやすい理由
  • 管理職が確認することと、判断しないこと
  • 体調や仕事の状態に波が見られたときの対応
  • 一時的な業務調整と継続的な配慮の違い
  • 管理職、人事、本人の役割分担

体調の波への対応が、管理職任せになりやすい理由

精神障害のある社員の場合、外見から状態の変化がわかりにくいことがあります。

昨日は問題なく仕事をしていたのに、今日は集中できない。午前中は仕事が進んでいたのに、午後から確認漏れが増える。欠勤はしていないものの、以前より納期が遅れるようになった。このような変化を見た管理職は、本人へ声をかけるべきか、もう少し様子を見るべきか迷います。

また、本人へ確認した結果、「大丈夫です」「少し疲れているだけです」と言われると、それ以上聞いてよいのかわからなくなることもあります。

管理職による対応がばらつきやすい背景には、次のような組織上の問題があります。

  • どのような変化を確認するのかが決まっていない
  • 本人へ何を聞くのかが管理職ごとに異なる
  • 業務を調整する条件や範囲が決まっていない
  • 人事へ共有するタイミングが明確でない
  • 対応した後の見直し時期が決まっていない

対応の正解を管理職個人に求めても、状況によって判断は変わります。

必要なのは、すべての社員へ同じ対応をすることではありません。判断するときに何を確認し、誰と考えるのかという共通の前提を持つことです。

管理職が見るのは「病状」ではなく、職場で起きている事実

社員の様子がいつもと違うと、管理職は「症状が悪化しているのではないか」「働き続けることは難しいのではないか」と考えることがあります。

しかし、管理職が本人の病状や治療状況を判断する必要はありません。管理職が確認するのは、職場で起きている変化と、仕事への影響です。

例えば、次のような事実です。

  • 遅刻や欠勤が以前より増えている
  • 納期に遅れることが続いている
  • 確認漏れやミスが増えている
  • 報告や相談が遅くなっている
  • 会議や周囲とのコミュニケーションが難しくなっている
  • 業務量や担当変更の後から状態が変わった
  • 本人から負担や不調について相談があった

「元気がない」「不安定に見える」という印象だけでは、本人と状況を共有しにくくなります。

「先週から3回、納期を過ぎている」「以前は午前中に終わっていた作業が、夕方までかかっている」など、職場で確認できる事実を整理することで、本人とも人事とも話し合いやすくなります。

一方、次のようなことを管理職だけで判断する必要はありません。

  • 病名や症状の重さ
  • 治療や服薬の内容
  • 医学的に就業可能かどうか
  • 休職や復職の判断
  • 長期的な職務変更
  • 雇用上の処遇

管理職に求められるのは、診断することではありません。職場での変化に気づき、仕事への影響を確認し、必要な人へつなぐことです。

体調の波が見られたときの4つの対応

精神障害のある社員の仕事の状態に変化が見られたとき、すぐに仕事を減らしたり、反対に本人が相談するまで待ったりするのではなく、順番に状況を整理することが大切です。

1.変化を事実として整理する

最初に、職場で何が起きているのかを整理します。

確認するのは、次のような内容です。

  • いつ頃から変化が見られるのか
  • どのような変化が起きているのか
  • 一時的なものか、繰り返しているのか
  • どの仕事に影響が出ているのか
  • 周囲の業務にどのような影響があるのか
  • 業務内容や職場環境に変化がなかったか

この段階では、「本人の意欲が低下した」「病状が悪くなった」と原因を決めつけません。

事実と解釈を分けて整理することが、適切な確認と共有につながります。

2.本人と仕事の状況を確認する

職場での変化を整理したら、本人と話をします。

このとき、漠然と「最近どうですか」「体調は大丈夫ですか」と聞くだけでは、仕事上の問題を確認できないことがあります。

例えば、次のように、業務との関係を具体的に確認します。

  • 現在、進めにくくなっている仕事はあるか
  • 負担を感じやすい業務や時間帯はあるか
  • 予定どおり進まない原因として思い当たることはあるか
  • 現在の業務の中で、続けられるものは何か
  • 会社に一時的に調整してほしいことはあるか
  • 困ったときに相談しやすい方法は何か

本人の気持ちを聞くことは大切ですが、対話の目的を気持ちの確認だけにしないことも重要です。

現在の仕事に何が起きているのか、どのような調整があれば進められるのか、いつ状況を再確認するのかまで話し合います。

3.必要な調整を、期間を決めて行う

本人から不調や負担について相談があった場合、業務量や勤務時間、仕事の進め方などを調整することがあります。

ただし、精神障害のある社員に一律の対応を当てはめるのではなく、現在どの業務に影響が出ているのか、どのような調整があれば仕事を続けられるのかを、本人と確認しながら検討することが重要です。

例えば、体調や業務への影響に応じて、次のような調整が考えられます。

勤務時間・通院に関する調整

  • 一定期間、勤務時間を短縮する
  • 出勤時間をずらし、通勤時の負担を軽減する
  • 状態を確認しながら、勤務時間を段階的に延ばす
  • 通院に合わせて、利用できる休暇制度や勤務時間の調整を検討する

休憩・休養に関する調整

  • 休憩を一度に取るのではなく、複数回に分ける
  • 疲労が強くなりやすい時間帯に、短い休憩を取りやすくする
  • 必要に応じて、落ち着いて休める場所を確認する

業務量・仕事の進め方に関する調整

  • 優先する仕事を絞る
  • 作業を小さな単位に分け、優先順位や完了基準を明確にする
  • 締切や業務量を一時的に調整する
  • 少ない業務量から始め、状態を確認しながら段階的に増やす
  • 一部の業務を一時的に別の担当者へ移す
  • 確認や報告の回数を増やす
  • 必要に応じて、口頭だけでなくメール、チャット、メモなど、本人が確認しやすい方法で伝える
  • 質問や相談をする相手を明確にする

業務内容・配置に関する調整

  • 本人が能力を発揮しやすい業務へ、一時的に比重を移す
  • 現在の仕事と本人の状態が合っているかを確認する
  • 担当業務や配置の変更が必要な場合は、管理職だけで決めず、人事と検討する

これらの配慮例は、そのまま適用するための正解集ではありません。

本人の希望だけでなく、実際の業務への影響、会社として継続できる対応、周囲の業務負担も含めて、必要な調整を個別に検討します。

また、「しばらく仕事を減らして様子を見る」だけでは、調整した状態がそのまま長期化しやすくなります。

業務調整を行うときは、少なくとも次の点を整理します。

  • 何を変更するのか
  • 何を変更しないのか
  • どの仕事は引き続き本人に求めるのか
  • 調整をいつまで行うのか
  • いつ、誰が状況を確認するのか
  • どのような状態になったら、調整内容を見直すのか

業務を減らすこと自体が目的ではありません。本人が仕事を続けるために、どの部分を一時的に調整するのかを明確にすることが重要です。

今回だけの一時的な業務調整なのか、今後も継続する合理的配慮なのか、担当業務や役割そのものを見直す必要があるのかを分けて考えます。

4.管理職だけで抱えず、人事と共有する

本人から相談された管理職が、「他の人には言わないでほしい」と頼まれることがあります。

本人との信頼関係を守ろうとして、人事への共有をためらう管理職もいます。

しかし、欠勤や遅刻が続いている、業務変更が長期化している、勤務時間や配慮の見直しが必要になっている場合、管理職だけで対応を続けることには限界があります。

人事へ共有するときは、本人の個人的な情報を必要以上に広げるのではなく、次の内容を整理します。

  • 職場で起きている事実
  • 業務に出ている影響
  • 本人と確認した内容
  • 現在行っている調整
  • 管理職だけでは判断できないこと
  • 今後、組織として検討する必要があること

管理職が一人で抱え続けることは、本人を守ることにはなりません。

人事、障害者雇用担当者、産業保健スタッフなど、必要な関係者と役割を分けて考えることが、本人と管理職の双方を守ります。

一時的な業務調整と、継続的な配慮を分けて考える

精神障害のある社員の体調が不安定なとき、一時的に仕事を減らすことがあります。

この対応が短期間で終わればよいのですが、見直す時期を決めていないと、減らした状態がそのまま続くことがあります。

すると、次のような問題が生じます。

  • 本人の役割がわからなくなる
  • どのように評価すればよいか判断できなくなる
  • 周囲の社員が仕事を引き取り続ける
  • 管理職が元の状態へ戻す判断をできなくなる
  • 本人も今後の働き方を見通せなくなる

一時的な調整と、継続的に必要な合理的配慮は、分けて考える必要があります。

また、現在の仕事自体が本人の状態や能力と合っていない場合には、配慮の追加だけではなく、担当業務や役割の見直しが必要なこともあります。

ただし、どこまでを一時的な調整とし、どの対応を継続するかは、本人の希望だけでも、管理職の判断だけでも決められません。

業務内容、職場への影響、本人の状態、会社が継続できる対応を整理したうえで、組織として判断することが必要です。

周囲との公平性は「全員に同じ対応をすること」ではない

精神障害のある社員の仕事を減らしたり、勤務時間を調整したりすると、周囲の社員から「特別扱いではないか」という声が出ることがあります。

このとき、「合理的配慮だから理解してください」と説明するだけでは、周囲の納得を得にくい場合があります。

周囲が気にしているのは、本人の障害そのものではなく、自分たちの仕事が増えることや、業務分担の理由がわからないことかもしれません。

公平性を保つために必要なのは、全員へ同じ対応をすることではありません。

会社として必要な調整を行いながら、次の点にも対応することです。

  • 業務分担を管理職が確認する
  • 特定の社員へ負担を集中させない
  • 変更した分担を放置せず、定期的に見直す
  • 必要な範囲で業務上の説明を行う
  • 本人の診断名や個人的な情報を伝えすぎない

本人への配慮と、周囲へのマネジメントは、どちらか一方を選ぶものではありません。

配慮によって生じる業務上の変化を、組織として調整することまで含めて考える必要があります。

管理職が判断しないことを決めておく

管理職の負担を減らすためには、管理職が何をするかだけでなく、何を一人で判断しなくてよいかを決めておくことが重要です。

管理職が日常的に担うのは、主に次の内容です。

  • 職場で起きている変化に気づく
  • 業務への影響を確認する
  • 本人と仕事の状況を話す
  • 日常的に可能な範囲で業務を調整する
  • 調整後の状況を確認する
  • 必要な事実を人事へ共有する

一方、管理職だけで決めないことには、次のようなものがあります。

  • 医学的な状態の判断
  • 長期的に働き続けられるかどうか
  • 休職や復職に関する判断
  • 継続的な勤務条件の変更
  • 恒常的な職務変更
  • 合理的配慮の最終的な判断
  • 雇用上の処遇

これらは、人事、産業保健スタッフ、必要に応じて支援機関などと情報を整理し、会社として判断する内容です。

管理職がすべてを引き受ける体制では、対応が遅れるだけでなく、管理職によって判断が変わります。

何を現場で対応し、何を組織へ渡すのかを明確にすることが、属人化を防ぎます。

体調の波への対応を属人化させない7つの確認

精神障害のある社員への対応について、次の項目を確認してください。

  • 本人の変化を、印象ではなく事実として整理しているか
  • 体調だけでなく、業務への影響を本人と確認しているか
  • 調整することと、本人に求める役割を分けているか
  • 業務調整の期間と見直し時期を決めているか
  • 管理職が医学的な判断まで背負っていないか
  • 人事へ共有する場面や条件が決まっているか
  • 本人だけでなく、周囲への業務負担も確認しているか

複数の項目で答えに迷う場合、管理職個人の対応力だけを高めるのではなく、会社の判断体制を見直す必要があります。

よくある質問

Q:病名ごとの特徴を、管理職が詳しく覚える必要がありますか

精神障害についての基本的な知識を持つことは、本人の状態を「意欲がない」「怠けている」などと誤解しないために役立ちます。

ただし、病名や一般的な特徴を覚えるだけでは、実際の職場対応を決めることはできません。

同じ病名でも、仕事への影響、体調の変化、得意なこと、必要な配慮は人によって異なります。また、診断名から本人の能力や働き方を決めつけることは避ける必要があります。

管理職が確認するのは、病気の重さではなく、遅刻や欠勤、ミス、納期、コミュニケーションなど、職場で起きている変化と業務への影響です。

そのうえで、本人に現在の仕事の状況を確認し、必要な調整を人事と検討します。医学的な判断が必要な場合は、管理職だけで判断せず、人事や産業保健スタッフなどにつなぎます。

Q:本人に体調や通院について聞いてもよいですか

仕事を続けるうえで必要な範囲で、本人の状態や必要な調整について確認することは大切です。

ただし、病歴、治療内容、服薬などの詳しい医療情報を必要以上に聞くのではなく、現在の仕事にどのような影響があり、会社として何を調整する必要があるのかを中心に確認します。

Q:体調管理シートやアプリを使えば、不調を早期に把握できますか

体調管理シートやアプリは、本人が自分の状態の変化に気づいたり、管理職との対話を始めたりするための補助として活用できます。

ただし、記録をつけるだけで、不調を防いだり職場定着につながったりするわけではありません。

導入するときには、少なくとも次の点を決めておく必要があります。

  • 何を確認するために使用するのか
  • 本人がどの項目を記録するのか
  • 誰が、どの範囲まで記録を見るのか
  • どのような変化があったときに声をかけるのか
  • 記録を業務調整や人事への共有にどう活用するのか
  • いつ使用方法や必要性を見直すのか

ツールは、本人の病状を診断したり、会社が常に状態を監視したりするためのものではありません。

本人と目的や共有範囲を確認したうえで、職場で起きている事実や業務への影響について対話するきっかけとして活用することが重要です。

Q:不調が見られたら、すぐに業務を減らすべきですか

一律に業務を減らす必要はありません。まず、どの仕事にどのような影響が出ているのか、本人は何に負担を感じているのかを確認します。そのうえで必要な調整を行い、期間と見直し時期を決めます。

仕事をすべて減らすのではなく、優先順位や締切、確認方法を調整することで対応できる場合もあります。

Q:本人が人事への共有を希望しない場合はどうしますか

本人の診断名や個人的な情報を、必要以上に共有することは避ける必要があります。

一方で、勤務状況、業務への影響、継続している調整など、会社として雇用管理や安全配慮を考えるために必要な事実は、管理職だけで抱えないことが重要です。

何を、誰へ、どの目的で共有するのかを本人へ説明し、必要な範囲を確認します。

Q:周囲の社員には、どこまで説明すればよいですか

本人の診断名や詳しい配慮内容を、周囲へ説明する必要はありません。

業務分担が変更される場合には、仕事をどのように進めるのか、誰が何を担当するのかなど、業務上必要な内容を伝えます。

周囲への説明では、本人の個人情報よりも、業務が滞らないために必要な情報を中心にします。

Q:管理職だけで対応できない場合、誰に相談すべきですか

内容に応じて、人事、障害者雇用担当者、産業保健スタッフ、支援機関などへ相談します。

業務、評価、職場環境、雇用管理は企業が判断します。体調や生活面、本人が会社へ伝えにくい内容については、産業保健スタッフや支援機関と連携することがあります。

重要なのは、一つの部署や一人の管理職へ対応を集中させないことです。

まとめ

精神障害のある社員の体調や仕事の状態に波が見られたとき、管理職が正解を一人で見つける必要はありません。

管理職に必要なのは、本人の状態を診断することではなく、職場で起きている事実と業務への影響を確認することです。

そのうえで、本人と仕事の状況を話し合い、必要な調整を期間を決めて行い、人事や関係者と共有します。

対応を管理職の経験や優しさだけに任せると、同じ状況でも対応が変わります。問題が大きくなるまで共有されなかったり、業務調整が長期化したり、管理職や周囲の負担が増えたりすることもあります。

何を現場で確認し、どこまで管理職が対応し、何を人事と考えるのか。その前提を組織で共有することが、本人にとっても、管理職にとっても持続可能な職場対応につながります。

体調の波への対応を、管理職個人の判断に任せていませんか
精神障害のある社員への対応では、同じ状況でも、管理職によって声のかけ方、業務調整、人事への共有判断が異なることがあります。
必要なのは、障害特性の知識を増やすことだけではありません。現場で迷ったときに、何を確認し、どこまで判断し、誰と共有するのかという前提を、管理職と人事でそろえることです。
「違いを活かすマネジメント研修【導入版】」では、障害のある社員への対応を個人の経験に任せず、組織で判断するための基本的な視点を共有します。

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