精神・発達障害者の職場対応完全ガイド|体調の波への実践マネジメント

精神・発達障害者の職場対応完全ガイド|体調の波への実践マネジメント

2025年12月10日 | よくある悩みと対応ヒント

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精神障害のある社員との関わりに悩む人事・マネージャーが増えている背景と課題認識

近年、精神障害者の雇用が着実に進んでいます。
法定雇用率の引き上げや、企業におけるダイバーシティ推進の流れを受けて、多くの職場で精神障害・発達障害のある社員が働くようになり、人事部門や現場のマネージャーがその支援に関わるケースが増えてきました。

一方で、現場からは以下のような声も多く聞かれるようになっています。
「精神障害がある社員にどう接すればよいのかわからない」
「体調や業務の波にどう対応すればいいのか判断が難しい」
「他の社員とのバランスをとるのが難しく、現場が混乱している」

このような課題の背景には、「精神障害=見えにくい障害」であるという特性が関係しています。外見からは障害の有無が判断しづらく、日によって状態が変わることも多いため、関わる側が「どう配慮すべきか」の明確な判断基準を持ちづらいのが実情です。
また、人事部門としては「差別や偏見のない対応」「合理的配慮の提供」を意識するあまり、現場に過度なプレッシャーがかかってしまうこともあります。

結果として、当事者も周囲の社員もストレスを抱え、チーム全体の関係性がぎくしゃくしてしまうケースも少なくありません。つまり、「配慮したいが、方法がわからない」「理解したいが、正解が見えない」という状態が、精神障害者雇用の現場では非常に多く見られるのです。
このような課題に対して、制度やマニュアルだけでは限界があるのも事実です。必要なのは、現場で実際に起きていることに対応できる実践的な知識と、相互の信頼関係を築くための関わり方の工夫です。
今回は、精神障害のある社員と向き合う中で得られた具体的な経験と、職場で役立つ実践的なアプローチについてご紹介します。

よくある課題と現場の混乱

精神障害のある社員を受け入れている現場では、支援に関する課題が表面化することが少なくありません。とくに人事部門や現場のマネージャーから多く聞かれるのが、次のような具体的な悩みです。

1. 支援の加減がわからない

精神障害に対する支援は、「やりすぎても本人の自立を妨げるのではないか」「足りなければ状態を悪化させてしまうのではないか」といった懸念を常に伴います。そのため、何をどこまで配慮するべきか、その“加減”を見極めることが非常に難しいという声が多く寄せられます。
また、「どこまで話を聞くべきか」「休職・復職の判断をどうするか」など、業務と体調の狭間で判断を迫られる場面では、対応に迷いが生じやすくなります。このような不明瞭さが続くことで、現場の支援者は心理的負担を感じ、結果的に関与を避けるようになってしまうリスクもあります。

2. 他の社員とのバランス

精神障害のある社員に対して配慮を行う際に、よく課題になるのが「周囲との公平性」です。特定の社員に対して柔軟な対応や業務負担の軽減を行った場合、他の社員から「なぜあの人だけ特別扱いなのか?」という不満が生じることがあります。
これは、障害者への合理的配慮という観点からは当然の対応であっても、その意図や背景がチームに十分に共有されていないことで、誤解が生じやすい状況です。
配慮と公平性のバランスをどう取るか、また、それをどう社内に説明・共有するかという点で、現場の混乱が広がるケースは少なくありません。

3. メンタル不調と業務配分

精神障害のある社員は、体調に波があることが多く、急な休みや業務の中断が生じることがあります。その場合、他のメンバーが業務をカバーする必要が生じ、チーム内の負荷が偏ってしまうことがあります。
一時的なカバーで済むなら問題にならなくても、それが頻発すると、次第に「この仕事を任せて大丈夫だろうか?」という不安がチーム内に広がり、結果として当事者への信頼が損なわれる恐れもあります。
また、業務配分を柔軟に調整しようにも、具体的な目安や判断基準がないと、対応が属人的になりがちです。これにより、継続的なマネジメントに苦労するケースも多く見られます。
以上のような課題は、制度や仕組みだけでは解決しづらい「現場特有のジレンマ」といえます。だからこそ、現場で支援する人たちが安心して判断・対応できる知識や視点を身につけることが、非常に重要なのです。

現場で機能した実践的なアプローチ

精神障害のある社員に対して、制度やマニュアルだけでは対応しきれない場面が多く存在します。そのような中で、実際の職場で効果があったアプローチとして、以下の3点が特に有効でした。

1. 対話設計の工夫

精神障害のある社員とのコミュニケーションにおいては、「どう話すか」よりも「どう聞くか」が重要です。
従来のような「最近どう?」「困っていることある?」といった曖昧な問いかけでは、本音が引き出しづらく、相手にとっても心理的負担が大きくなります。
効果的だったのは、具体的かつ選択肢のある聞き方に変えることです。
たとえば
「今日の体調は10点満点で言うと、何点くらい?」
「業務の中で、今週“やりやすかったこと”と“難しかったこと”を教えてください」
「来週に向けて、何か不安に感じていることはありますか?」
このように質問を具体化することで、社員が自分の状態を言語化しやすくなり、マネジメント側も状況を的確に把握できるようになります。

2. 配慮の可視化

支援や配慮を「暗黙の了解」にせず、見える形にしておくことも現場で非常に有効でした。
たとえば、「配慮事項シート」や「本人と話し合ってまとめた支援方針」をチーム内で共有(本人の同意を得た上で)することで、次のような効果が得られました。
・チーム内での認識のズレがなくなる
・過度な遠慮や“腫れ物扱い”が減る
・異動や上司交代の際も、スムーズに引き継げる

可視化によって、「誰が、いつ、何をどう支援するのか」が明確になり、属人化を防ぎつつ持続可能な支援体制を構築することが可能になります。

3. 体調の波への対応方法

精神障害のある社員にとって、体調の波は避けられない課題の一つです。これに対する、事前の準備と柔軟な仕組みが非常に重要です。
具体的には
「週単位での業務調整」:日々の変化よりも、1週間単位で進捗を見て調整
「バッファ業務の設定」:調子が良いときに進められるタスクを確保しておく
「体調連絡のルール化」:体調が悪いときの連絡方法と内容を事前に合意しておく

こうした工夫により、突発的な欠勤やパフォーマンスの変動が業務全体に与える影響を最小限に抑えることができます。また、「波があるのは前提」としてチームで共有しておくことで、社員本人も「頑張りすぎない」「調子が悪い時は遠慮なく相談できる」環境を感じられるようになりました。
このように、「対話の設計」「配慮の可視化」「体調の波への備え」といった小さな実践が積み重なることで、現場の不安は軽減され、当事者も周囲も安心して働ける環境づくりが可能になります。

具体的な成功事例

精神障害のある社員への対応は、「知識として知っている」だけでは不十分で、実際の現場でどのように活かすかが重要です。

ここでは、実際に取り組みを行った企業の中から、特に成果が顕著だった2つの事例をご紹介します。

A社:出勤率の改善につながった事例(IT業界・従業員300名)

A社では、精神障害(うつ病)のある社員が不定期な欠勤を繰り返しており、プロジェクト進行への影響や、周囲の不満が課題となっていました。担当マネージャーは「声をかけたいが、どこまで聞いていいのかわからない」と悩み、支援が後手に回っている状態でした。
そこで人事担当が主導し、以下の取り組みを実施しました。
・体調の変化を共有する「週次ヒアリングシート」の導入
→ 体調や業務の負担感を簡単なチェック形式で共有しやすくした
・「できること/今は避けたいこと」リストを社員本人と話し合いながら作成
→ タスクを調整する判断基準としてチーム全体に共有(本人の同意のもと)
・チーム内で“波がある前提”の業務設計に変更
→ 優先度の高い業務と「調子の良い時に進める作業」を明確に分けた

これらの工夫により、当該社員の不安感が軽減され、業務への参加意欲が高まった結果、3ヶ月後には出勤率が約60%から90%へと改善。周囲のメンバーも「どう接すればいいかわかって安心した」と話し、チーム内のコミュニケーションも円滑になりました。

B社:チーム内の理解が進んだケース(製造業・従業員1000名)

B社では、発達障害の特性を持つ新入社員が配属されましたが、上司・同僚がその特性について理解しておらず、業務の指示がうまく伝わらないことが問題となっていました。社員本人も「何が悪いのかわからない」と戸惑いを見せ、周囲も「配慮したいけどどうすれば…」という状況でした。
そこで、B社では次のような取り組みを行いました。
・発達障害に関するミニ研修をチーム単位で実施(30分程度)
→ 基本的な理解や接し方、NGワード・OKワードの共有
・「視覚情報」で伝える業務指示に変更
→ 口頭ではなく、チェックリストやフロー図でタスクを明確に提示
・フィードバックは1回につき1つに絞るルールを導入
→ 改善ポイントを明確にすることで混乱を減らす

これにより、社員本人が自信を持って業務に取り組めるようになっただけでなく、周囲の社員が“配慮とは特別扱いではなく、伝え方の工夫である”と理解できるようになりました。結果として、上司・同僚との関係性が改善され、ミスやトラブルの件数も明らかに減少。配属から半年後には、他部署からも「うちでもこの方法を取り入れたい」と声が上がるようになりました。
これらの事例が示しているのは、特別な制度や大掛かりな取り組みではなく、“小さな工夫の積み重ね”が現場に変化をもたらすということです。正しい理解と実践可能な工夫があれば、精神・発達障害のある社員も、周囲のメンバーも、共に安心して働く職場づくりが実現できます。

精神障害との関わりにおける基本視点

精神障害のある社員と関わる際には、知識や配慮の方法も重要ですが、それ以上に大切なのは「どのような視点で向き合うか」という考え方です。関係性のベースとなるこの視点が明確であれば、現場での判断や対応もブレにくくなります。
以下では、支援やマネジメントにおいて押さえておきたい3つの基本視点を紹介します。

1. 個別性の尊重

精神障害は、その症状や影響の出方が人によって大きく異なります。「同じ診断名=同じ対応方法」ではなく、一人ひとりの状態、特性、職場での困りごとに合わせた対応が不可欠です。
たとえば、うつ病と診断された人の中にも、業務に集中できる時間帯が異なる方や、人との会話に疲れやすい方、逆に話すことで落ち着く方など、対応がまったく異なります。
この個別性を尊重するためには、本人との丁寧な対話を通じて、“何に困っているのか”“どうすれば働きやすいか”を共に探っていく姿勢が求められます。

2. 安心感の土台作り

精神障害のある社員が安定して力を発揮するには、安心して自分の状態を共有できる職場環境が欠かせません。「言ってもわかってもらえない」「伝えたことで評価が下がるかもしれない」といった不安があると、支援も働きかけも機能しなくなります。
安心感を生み出すためには、以下のような関係性が重要です。
・否定されない、否認されない対話の積み重ね
・状況に応じて柔軟に対応しようとする姿勢
・継続的に関心を持ち、変化を見守る姿勢

一度安心感が築かれると、社員自身が自らの状態を把握し、職場と協力しながら働く意欲を持ちやすくなります。

3. 「特別扱い」ではなく「適切な調整」

配慮を提供することに対して、「他の社員と比べて不公平ではないか」という懸念の声が現場で上がることがあります。ここで重要なのが、「配慮=特別扱い」ではなく、「適切な調整(合理的配慮)」であるという考え方です。
すべての社員に同じ基準を適用することが“公平”ではなく、それぞれが能力を発揮できるように環境を整えることこそが、真の“公平”です。

たとえば、ある社員にだけ会議資料を事前に渡したり、作業工程を分かりやすく図解する対応を取ることは、一見すると特別扱いに見えるかもしれません。

しかし、それによって本人が業務に集中しやすくなり、結果としてチーム全体の生産性が上がるのであれば、それは十分に合理的であり、価値のある調整です。
これらの視点を持つことで、精神障害のある社員との関係は単なる「支援する・される」関係ではなく、共に働きやすい環境をつくる“協働”の関係に変わっていきます。そしてその関係性こそが、継続的な雇用・活躍につながる最も大きな鍵となります。

本記事の内容を深めるオンライン講座のご案内

本記事では、精神障害のある社員との関わりにおける課題と、それに対する現場での実践的なアプローチをご紹介してきました。
こうした内容をさらに体系的に学び、現場で活かせる知識として定着させるための手段として、当社ではオンライン講座をご用意しています。

オンライン講座の特徴と活用方法

本講座は、精神障害や発達障害のある社員と関わるすべてのビジネスパーソン(人事担当者、現場管理職、DEI推進担当者など)に向けて設計された実践型のプログラムです。

【講座の主な特徴】

・現場経験をベースとした実用的な内容
 制度や理論にとどまらず、「実際の現場でどう対応するか」に重点を置いています。
・動画形式で時間を選ばず学習可能
 1本10〜15分程度の動画で構成されており、スキマ時間でも学べます。
・チェックリスト・配慮シート等のテンプレート付属
 学んだ内容をすぐに現場で使えるように、実務に活かせるツールを提供しています。
・いつでも繰り返し視聴可能
 「この場面、どうすべきだったか?」という振り返り教材としても活用できます。

【こんな方におすすめです】

・精神障害や発達障害のある社員への対応に不安がある
・現場に寄り添った配慮方法を学びたい
・他の社員とのバランスを取りながら、持続可能な支援を実現したい
・「制度的対応」だけでなく、「日常的な関わり方」を見直したい

講座の詳細や内容の一部は、以下のページからご確認いただけます。導入をご検討中の方には、ご相談ください。
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