障害者雇用が進み、職場で障害のある社員と一緒に働く機会が増えています。時には、障害者とのコミュニケーションが難しいと感じることがあるかもしれません。
なぜ、障害者とのコミュニケーションは難しいのか?また、障害者と接する上で大切なことについて解説していきます。
話が成立しているように思えても、伝わっていないことがある
障害者とのコミュニケーションを難しいと感じることがあると感じる状況としてよくあるのが、日常会話や雑談をしているときにはコミュニケーションが成り立っているように思えても、一緒に仕事をしていると、「説明したにもかかわらず話が伝わっていない」「話したことを理解していない」ということです。
このような状況が何回か起こる場合には、言語としては伝わっている、少なくとも会話は成立していたとしても、正しい意味が伝わっていないことが考えられます。
また、障害社員が、他の人の言動を見ながら学ぶことが苦手な特性を持つ場合には、一般的には社会常識として捉えられていることであっても、その意味や背景をしっかり教えたり、伝えたりしないと、「聞いたことがなかった」「わからなかった」「気づかなかった」という反応があることも珍しくありません。
最近では、精神・発達障害の雇用も進んできており、高学歴であったり、資格やスキルをたくさん持っていたり、一見するとコミュニケーションに問題がないように感じる人も多くいます。それでも「話が伝わっていないことがある」と感じることがあるならば、「こんなことは言わなくてもわかっているはず」とこちらで判断するのではなく、確認することが必要です。
コミュニケーションが難しいと感じる主な理由
そもそもコミュニケーションが難しいと感じる時には、いくつかの理由があるようです。代表的な理由を見ていきます。
障害に対する知識や理解の不足
障害者とのコミュニケーションが難しいと感じる大きな理由の一つは、一緒に働く社員が障害に関する正確な知識や情報が不足していることです。障害者がどのようなサポートを必要としているのかが分からないため、不安や戸惑いを感じることがあります。
職場で一緒に働く障害者とのコミュニケーションの障害は、視覚や聴覚の障害によるもの、場面緘黙症や吃音などの発声の障害によるもの、知的障害によるものなどがあり、それぞれの障害により対応が変わることがあります。
また、最近の障害者雇用で増えている発達障害や精神障害などは、外見では分かりにくく、その理解不足が誤解や不適切な対応につながることがあります。例えば、発達障害のある人が指示を理解するのに時間がかかった場合、それを怠慢と捉えてしまうケースがあります。
誤解や偏見の影響
障害者に対する固定観念や偏見は、適切なコミュニケーションを妨げる要因となっていることがあります。「障害者は特別扱いが必要」といった思い込みや、「何を言って良いか分からない」という気後れが、相手との関係構築を難しくしています。
また、「障害者は能力が制限されている」という偏見が、相手の可能性や努力を見逃す原因となることもあります。このような誤解や偏見があると、自然なコミュニケーションが阻害されるだけでなく、相手に不信感や孤立感を与える結果にもなり得ます。
障害特性に応じた対応の難しさ
障害特性に応じた適切な対応が求められることも、コミュニケーションを難しく感じる理由の一つです。例えば、聴覚障害者には筆談や手話といった特定のコミュニケーション手段が必要になる一方で、発達障害者には明確で具体的な指示が効果的です。
しかし、これらの対応方法を知らない場合、どのように接すればよいのか分からず、困惑してしまうことがあります。こうした個別対応の必要性が、心理的な負担や手間と感じられる場合があることも否めません。
障害者とのコミュニケーション解決のためのアプローチ
障害に関する基本的な知識を学ぶ
障害者雇用では、職場で一緒に働くことが目的ですから、特別支援教育や障害福祉のような専門的な知識までは必要ありません。ただし、仕事ができるようなマネジメントや特性に合わせた指導ができるようになると、一緒に働くときにストレスを感じることが軽減されたり、「どうしてわからないのか?」と悩むことを減らすことができます。そのため障害に関する基本的な知識を得ておくことは、一緒に働く人のために役立ちます。
まず、障害者とのコミュニケーションを改善するには、障害の種類や特性について学び、障害に関する正しい知識を得るようにしましょう。それぞれの障害特性によって、情報の伝え方やコミュニケーションの方法が異なるため、一般的なコミュニケーションが伝わりにくい場合があります。
身体障害の視覚や聴覚などは、障害自体がコミュニケーションを難しくする制約があるため、伝達手段を工夫することが重要です。例えば、視覚障害のある方には音声や触覚による情報提供、聴覚障害のある方には筆談や手話、文字情報を活用したコミュニケーションが効果的です。
知的障害や発達障害は、指示内容を具体的かつ簡潔に伝え、必要に応じて図解やリストなどの視覚的補助を用いることが有効です。また、タスクを小分けにして進行状況を共有することで、本人の安心感を高めることができます。
また、精神障害などの場合は、見た目やコミュニケーションでは問題がないように思えるかもしれませんが、メンタルの状態が業務に影響を及ぼすことがあります。柔軟な対応や適度な休息を設け、心理的負担を軽減する配慮が必要です。
1人の働く仲間という意識を持つ
障害者雇用というと、過度に配慮しなければならないと考えている人も多いですが、職場では同じ働く同僚、部下です。障害者も「一人の社員、一人の同僚」であることを理解し、特別扱いを避け、公平な接し方をすることを意識してください。
福祉や教育ではないので、求められる仕事ができるようなマネジメントをしていくことは、一緒に働く人たちや上司に求められます。障害があり何らかの問題や課題が顕在化してくると、「だから障害者雇用は難しい」「◯◯障害の雇用は無理だ」という結論を出してしまう企業がありますが、そもそも障害者が働けるような業務設計ができていたのでしょうか。わかりやすいマニュアルや業務を指導できる担当者を配置しているでしょうか。
障害者を受け入れる準備ができていないことが原因と思われるケースでも、障害者雇用の場合、障害を理由にそのせいにされがちな傾向が強くあります。また、問題や課題が起こったときの対処方法やマネジメントが適切でない場合でも、そのフィードバックがうまくされないために、同じことを繰り返している職場があります。
障害特性に応じた方法やツールの導入
障害者とのコミュニケーションを改善するためには、簡潔で分かりやすい指示を心がけることが必要です。例えば、視覚的に情報を伝えるツール(チェックリストやフローチャート)や、タスク管理アプリなどの支援ツールを活用することが効果的です。
状況に合わせて、臨機応変に対応することが難しいような場合には、1日のスケジュールや業務内容のパターンを決めておくことも一つの方法です。コミュニケーションが難しいと、業務に取りかかるまで時間がかかってしまいます。そのため障害社員の仕事の流れをパターン化およびスケジュール化しておくことができます。
また、スケジュールの調整や報告のタイミング、質問をする相手を決めておく、定期的なフィードバックを行い、進捗状況や改善点を具体的に伝えることをすると、障害者も一緒に働く社員もお互いに安心して業務を進めることができます。
チーム内での情報共有と協力
障害者雇用は、障害者と直接一緒に働く人の関わり合いが大きなポイントにはなりますが、障害者雇用は組織で取り組むものです。職場全体で情報を共有し、協力体制を築くことは、障害者とのコミュニケーションをスムーズに進めるための鍵となります。
同僚や上司が障害者の特性や必要な配慮について、チームや部門内で情報を共有することで、誤解や偏見を減らし、適切な対応が可能になります。定期的なチームミーティングで障害者へのサポート方法を話し合ったり、各メンバーがどのように協力できるかを明確にすることができるでしょう。
また、組織として障害者雇用に取り組んでいるところでは、全体の社員が関わるキックオフミーティングや社員総会などのときに、障害者雇用の取り組みや組織にどのように貢献しているのかを伝える工夫をしています。
まとめ
職場での障害者とのコミュニケーションで大切なことは、障害に関する正しい知識と理解を深めること、仕事に対するマネジメントとして関わることです。障害イコール〇〇ができないと決めつけるのではなく、求められる業務や成果を出すためにどのような業務の指示やマネジメント体制があるのかを考えることは、その解決方法を見つけるのに役立ちます。
また、障害者とのコミュニケーションは、相手を「特別な存在」としてではなく、「一人の同僚、一人の社員」として接することで自然体の関係を築けます。そのためには障害特性に応じた方法やツールを導入し、適切なサポートを提供することが役立つかもしれません。
障害者雇用は障害者雇用は組織全体で取り組む課題です。障害者と直接一緒に働く人の関わり方は大きな影響を及ぼすものの、組織にいる一人ひとりが意識を変えていくことが必要です。障害者を含めてすべての社員が働きやすい職場、活躍できる環境を目指していくことが大切です。
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