【平成28年度】障害者雇用の改善が見られない企業名の公表

【平成28年度】障害者雇用の改善が見られない企業名の公表

2017年04月29日 | 障害関連の情報

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平成28年度における障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表が行われました。今年度は2社の社名公表が行われました。

企業名公表とは

「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)では、障害者を従業員の2%雇用することが義務づけられています。しかし、この障害者雇用が達成できていないと、行政(ハローワーク、労働局、厚生労働省等)から障害者を雇用するように指導が入ります。

しかし、この指導に従うことが様々な状況によって達成することが難しいと、行政からは障害者雇入れ計画の適正実施勧告に従わないとみなされることがあります。また、障害者の雇用状況に改善が見られない場合、企業名を公表できることになっています。

この「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)に基づき、厚生労働省から3月末に平成28年度の障害者の雇用が改善されていない企業として2社の企業名を公表しました。

企業名公表までの流れ

「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)では、前述したように従業員の2%にあたる障害者を雇用するように企業に求めています。しかし、いきなり2%の雇用が達成できていないからと言って、企業名公表になるわけではありません。企業名公表までの流れを見ていきたいと思います。

雇用指導

出所:「平成28 年 障害者雇用状況の集計結果」厚生労働省

まず、企業では2%の障害者を雇用しているかどうかを毎年6月1日時点の状況を報告する義務があります。現在は、雇用率が2%ですので、従業員が50人以上の企業が対象となっています。これは、ロクイチ調査とも言われ、従業員が50人以上の企業に行政から書類が送付されてきますので、従業員数、雇用している障害者の人数を記入し、提出します。

これが各都道府県、全国とまとめられ、毎年11月か12月に公表される障害者雇用状況の集計結果となっています。

平成28年度 障害者雇用状況の集計結果

それぞれの企業の障害者雇用の状況を行政が把握しますので、これに基づいて障害者を雇用していない企業には、ハローワークの雇用指導官が中心となって企業訪問等を行い、障害者雇用を行うように指導されます。企業にとっては行政から訪問があることはプレッシャーになります。それで、障害者雇用をはじめようと動き始める企業が増えてきます。

とはいってもなかなか障害者雇用が進まない企業もあります。ある一定期間、障害者雇用を進めることが難しい状況になると、ハローワークの所長から「雇入れ計画作成命令」が出されます。これは、2年間のうちに雇用しなければならない障害者をいつ、何人雇用するかについての計画書を作成するものです。企業の事業担当者であれば、事業計画をたてるのと同じように、障害者を雇用する計画を立てるのです。

2年間の雇入れ計画の間に予定通りに雇用が進んでいるかの調査が入ります。予定通りに進んでいない場合には、「雇入れ計画の適正実施勧告」が行われます。「雇入れ計画作成」は1月をスタートして行われ、「雇入れ計画の適正実施勧告」はその年の12月に行われるので、「雇入れ計画作成」がスタートして、実質10ヶ月程度で採用まで進めることが求められます。

ですから、できるだけこの「雇入れ計画作成命令」が出されないうちに、障害者雇用を進めることをオススメします。

実際にこの「雇入れ計画作成命令」が出されてから動き出す企業は、障害者雇用を行うときに、社内の調整や受け入れ体制を整備したり、実習や採用予定者をじっくり検討することが時間的な制約で難しい場合が多いので、障害者雇用をすることのみを目的にしてしまうことがあります。そのため雇用自体ができても、障害者本人と企業のすれ違いがあったり、求めている業務が難しかった等の状況がみられるケースが多くなってしまうことがあります。ですから、早めに準備することがとても大切になってきます。

また、「雇入れ計画の適正実施勧告」を受けた後、雇用状況の改善が特に遅れていると判断される企業は、公表を前提とした特別指導が2年目に入った秋ごろに行われます。これが「特別指導」です。このような流れがあって、障害者雇用が計画通り達成できていない場合、翌年の3月に企業名公表となります。

企業名公表になる基準は?

企業の人事の方が最も気になる部分だと思います。現在は、企業における障害者雇用が進んできていることもあり、大企業では障害者雇用はかなり進んでいます。(平成30年の雇用率があがることを見込んで、雇用率よりも多くの障害者を雇用している企業が多くあります。)一方で、中小企業を中心にまだ雇用が進んでいないところもあります。

地域差もあるのですが、法律で雇用率が2%と定められているので、従業員が150~200人以上で障害者が0人の場合や、前年度の障害者雇用率の平均(H27年度は1.88%)以下の場合は、指導を受ける率が高いと言えるでしょう。首都圏の場合には、このラインがボーダーラインとなっているようです。

もちろんいろいろな業種や企業の状況もありますので、一概に言えない部分もありますが、このラインにある企業で、ハローワークから雇用指導官が訪問するような場合には、早めに障害者雇用に向けた準備を進めることがよいでしょう。

H28年度公表になった企業

H28年度は2社の企業が社名公表されました。厚生労働省から「平成28年度 障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表等について 障害者の雇用状況に改善が見られない2社を公表します 国等の機関への適正実施勧告は該当なし」という文章でプレスリリースがされています。

「平成28年度 障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表等について 障害者の雇用状況に改善が見られない2社を公表します 国等の機関への適正実施勧告は該当なし」

この資料には企業概要をはじめ、社名公表に至るまでの経緯、障害者雇用の推移が詳細に示されます。

社名公表になった企業 1社目の概要

今回社名公表になった企業の1社は理化学機器の卸売業を行っている企業です。指導計画の内容です。

社名公表の経緯

出所:「平成28年度 障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表等について」厚生労働省

企業としては、障害者向けの求人を提出し、雇い入れに向けた取組を行ったものの、障害者の雇入れに向けた求人条件や職務の見直しが十分でないため、障害者の雇用が進まなかったと判断されています。

また、実際に雇用の状況は、ロクイチ調査時点では雇用ができておらず、不足数が3人のままでした。

雇用状況

出所:「平成28年度 障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表等について」厚生労働省

社名公表になった企業 2社目の概要

公表になったもう1社は、設計・製図・複写フィルムの製造業を行っている企業です。指導経過は、以下のようになっています。

経緯

出所:「平成28年度 障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表等について」厚生労働省

障害者雇用状況の推移を見てみると、H25年度からH29年度にかけて、不足数は5.0人から2.0人まで減少はしています。一方で障害者雇用を算定する従業員数もH25年度からH29年度にかけて100名ほど減少しています。

雇用状況

出所:「平成28年度 障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表等について」厚生労働省

個人的な感想を言うと、雇用している障害者の人数は大きな変化はなく、不足数は減少しており、実雇用率は上がっています。また、従業員が100人減少しているということで、経営的な変化もあったことも推測され、この状況で社名公表は厳しいと思いますが、現実的に社名公表されています。

社名公表になるかならないかの判断は、ハローワークや労働局等が行うので、判断基準等は公表されている以外は想像するしかないのですが、公表が猶予される場合には、障害者雇用が達成できると見込まれると判断できる材料を揃えることが大切になります。

ですから、ハローワークや労働局が、実雇用率が速やかに全国平均実雇用率以上又は、不足数が0 人となることが見込まれるような状況にあることや、1年以内に特例子会社の設立して実雇用率が全国平均実雇用率以上又は、不足数が0 人となると判断できるなどの条件を整える必要があります。

特例子会社については、以下のページを参考にしてください。

特例子会社を設立することのメリット・デメリットとは

まとめ

「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)では、従業員の2%にあたる障害者を雇用するように企業に求めています。企業名公表までの流れやH28年度社名公表になった企業の状況を見てきました。

いろいろな企業の障害者雇用のコンサルをさせていただいて思うのは、とにかく「雇入れ計画作成命令」を提出する前に、障害者雇用の準備を進めることをオススメしたいと思います。

障害者雇用は、健常者の採用よりも時間がかかることが多くあります。「雇入れ計画作成命令」を提出してから障害者雇用を行うときには、社内の調整や受け入れ体制を整備したり、実習や採用予定者をじっくり検討することが時間的な制約で難しい場合が多いので、障害者雇用をすることのみに注力してしまい、結果的に安定的な雇用が難しくなってしまうケースも少なくないからです。

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