忙しいのに状況が変わらない組織
企業の現場で話を聞いていると、よく次のような声を耳にします。
「問題対応に追われている」
「会議が増えている」
「調整ばかりしている」
何か問題が起きるたびに、関係者が集まり、状況を確認し、対応を検討する。必要な面談を行い、関係部署と調整し、再発を防ぐための話し合いも行う。
現場も、人事も、管理職も、それぞれの立場で時間を使い、丁寧に対応しています。決して、誰かが何もしていないわけではありません。むしろ多くの組織では、問題が起きるほど対応は増えていきます。
それにもかかわらず、しばらくするとまた似たような問題が起きる。同じような会議が開かれ、同じような調整が行われる。忙しくなっているのに、状況はあまり変わっていない。
こうした感覚を持っている組織は、決して少なくありません。
真面目な組織ほど対応が増える
問題が起きると、多くの組織ではまず目の前の対応が行われます。
・本人と面談をする。
・関係部署と調整を行う。
・必要に応じて配慮や業務調整を行う。
こうした対応は、どれも重要なものです。状況を正しく理解し、関係者で共有し、影響が広がらないようにする。組織として当然行うべき対応と言えるでしょう。実際、多くの現場ではこうした対応が丁寧に行われています。
しかし、それでも似たような問題が繰り返されることがあります。そのたびに面談を行い、調整を行い、対応を重ねる。対応は増えているのに、状況は大きく変わらない。
こうした状態に、心当たりのある組織も少なくないのではないでしょうか。
改善しない本当の理由
なぜ、丁寧に対応しているのに状況が改善しないのでしょうか。その理由の一つは、多くの組織では判断の流れが設計されていないことにあります。
例えば、道路で渋滞が起きると、多くの人は「車が多いからだ」と考えます。しかし実際には、車の数がそれほど多くなくても渋滞は起きます。
信号のタイミング。
合流の設計。
車線の流れ。
こうした交通の流れの設計がうまく機能していないと、同じ場所で渋滞が繰り返されます。車が多いのではなく、流れが整っていないのです。
組織でも似たことが起きます。多くの組織では、問題が起きたときの判断の流れが明確になっていません。
例えば、
・誰が判断するのか
・どの段階で共有するのか
・どの情報を確認するのか
といったプロセスが整理されていないと、問題が起きるたびにその場で判断することになります。その結果、毎回同じ議論が行われ、同じような対応が繰り返されていきます。
個別対応が増える組織構造
こうした状態になると、組織では次のような流れが生まれます。
問題 → 個別対応
問題が起きるたびに、その場で状況を確認し、関係者で話し合い、対応を決める。一つひとつの対応は適切でも、判断の流れが整理されていないと、同じような議論が何度も繰り返されます。
少し別の例で考えてみましょう。
もし工場の生産ラインでトラブルが起きるたびに、「誰が判断するのか」「誰が対応するのか」「ラインを止めるのかどうか」をその場で話し合っていたらどうなるでしょうか。
その都度対応することはできますが、同じトラブルはまた起きます。そして現場は、そのたびに同じ議論を繰り返すことになります。
だから多くの製造現場では、
・どの段階でラインを止めるのか
・誰が判断するのか
・どの情報を確認するのか
といった判断基準や役割分担があらかじめ決められています。
組織の問題対応も同じです。判断の流れが設計されていないと、問題が起きるたびに個別対応が増えていきます。その結果、対応は増えるのに、同じ問題が繰り返されてしまうのです。
必要なのは判断設計
こうした状況を変えるために必要なのは、個別の対応を増やすことではありません。重要なのは、判断の流れを整えることです。
例えば、
・どのような状況で共有するのか
・誰が判断するのか
・どの情報を確認して判断するのか
といった基準や役割を整理しておくことです。
判断基準。
役割分担。
情報共有。
こうした要素が整うと、問題が起きたときの対応はその場の判断ではなく、組織としてのプロセスに沿って進むようになります。つまり必要なのは、その場の対応ではなく、判断の構造を設計することです。
こうした構造は、さまざまな組織で見られます。例えば、私は企業の障害者雇用の支援を行う中で、こうした構造をよく目にします。障害者雇用では、個別の事情に応じた対応が必要になる場面が多くあります。
そのため、
・どの段階で共有するのか
・誰が判断するのか
・どこまで現場で対応するのか
といった判断が曖昧なままだと、現場が抱え込み、個別対応が増えていきます。これは障害者雇用に限った話ではありません。
多様な人材が働く組織では、判断の流れを設計することが、組織を安定して動かすための重要な要素になります。
問題を減らすために必要なのは、対応を増やすことではありません。判断の流れを設計することです。
判断の流れを整理する
組織の問題対応は、一つひとつのケースを解決するだけでは改善しないことがあります。なぜなら、問題の背景には「判断の流れ」が関係していることが多いからです。
・どの段階で共有するのか
・誰が判断するのか
・どの情報を確認するのか
こうした判断の流れが整理されると、現場の迷いは大きく減ります。
そのため私の支援では、まず組織の「判断の流れ」を整理するための組織判断レビューを行うことがあります。
これは、個別のケースを評価する場ではなく、
・どこで判断が迷いやすいのか
・どこで対応が滞りやすいのか
といったポイントを整理するための30分の簡易レビューです。
もしこの記事を読んで、「うちの組織も同じかもしれない」と感じた場合、それは決して珍しいことではありません。多くの企業で、同じ構造が起きています。
組織の問題は、個人ではなく構造として整理すると、驚くほど見え方が変わることがあります。
組織の問題は、人の努力だけでは解決しません。
判断の流れが設計されたとき、組織は初めて安定して動き始めます。
▼30分の組織判断レビューはこちら


























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