2023年6月20日放送のNHK ニュースウオッチ9では、障害者雇用の特集「働きたい障害者と企業をつなぐためには」があり、専門家として出演しました。
前半部分では、障害者合同面接会の様子、生命保険や航空・印刷など約30社が集まって障害者雇用について議論するプロジェクトが始まったことが報道されていました。このプロジェクトは、各企業が自社の取り組みを持ち寄ってノウハウを共有し新たな雇用モデルを作るもので、2年後をめどに実践を考えているようです。
後半では、社員それぞれの適性に合わせた業務を担ってもらおうという企業として、デジタルハーツプラスさんが取り上げられました。仕事内容として、ゲームのプログラムの手直しをゲーム会社から請け負っていることが紹介されていました。発達障害の社員の方がスキルにあった業務を担当できるので、「仕事にやりがいがある」とのインタビューもありました。
以前、デジタルハーツプラスさんの障害者雇用については、インタビューさせていただいたことがありますが、業務内容から採用、キャリアアップの仕組みまで非常によく設計できていると感じました。
障害者雇用に成功している企業の秘密
デジタルハーツプラスさんの障害者雇用のポイントは、次の点です。
・雇用の本質である組織に貢献する、必要とされる業務に携わっている。
自社の経営や市場ニーズ、強み、社風、社員の理解などがしっかり把握しており、それにマッチしたものである。
・適性に合った人材を採用している。
Eラーニングやインターンシップを通して、しっかり適性に合った人材に集まってもらう仕組みづくりができている。
・キャリアについての選択肢がある。
スキルや能力があれば、特例子会社から本体に転籍して、キャリアアップできる体制ができている。
番組では時間の関係もあり、一部しか内容は取り上げられていませんでしたが、興味がある人は、ぜひ文末の記事も参考にしてください。
そして、最後の部分で、専門家としてコメントさせていただきました。
「組織にとって必要とされる人材だという意識が(企業に)あるかどうかが大切で、会社に求められている業務を出す、それに合わせた人材採用の本質的なものがクリアできると、活躍できる障害者の方が増えるのではないか。」
今後の障害者雇用に求められること
来年度から障害者雇用率が引き上がり、また再来年度からは除外率の引き下げも発表されています。多くの企業が障害者雇用をしなければならないという状況に直面しています。一方で、障害者を雇用しなければならないものの業務創出ができないという声もよく聞きます。
従来の障害者雇用では、事務補助や清掃、軽作業などの定型的な業務が多く見られていました。しかし、経営環境や働き方が変化する中で、求められる仕事が変化してきています。事務補助などはITやAIの進化によって、業務が大幅に効率化されてきていますし、清掃やオフィス周りの整備などの業務は、コロナの影響や働き方の変化により、リモートワークが増えて、縮小しています。
障害者雇用を今までと同じような考え方や創出方法で行っていくのは、とても難しいだろうなと感じています。一方で、障害者雇用を人材として考えるのか、障害者雇用の雇用率として考えるのかによって、企業によって大きな差がでてきています。
では、どのような障害者雇用が求められているのか?という点ですが、経営環境や働き方が大きく変化する中で、時代やニーズ、企業組織に合わせた障害者雇用を進めていくことが大切です。
障害者雇用を「障害者を雇用する」という小さな枠組みだけで考えすぎているように感じます。もっと組織や人材活用という点から障害者雇用を見ると、組織で障害者雇用に取り組む意義や価値があると感じています。
例えば、社外へ業務委託したり派遣社員がしていた業務を内製化することで、効率化やコスト削減、業務ノウハウがナレッジ化できたり、障害者社員担当になった社員のマネジメント力UPや成長に繋がったと言われる企業もあります。
また、障害者雇用を上手に進めるためには、障害者と一緒に働く社員のマネジメント力や理解が欠かせません。障害者を雇用するだけでなく、組織としてどのように取り組んでいくのか方針を示すこと、一緒に働く人たちのマネジメント力UPやサポート体制を考えていくことも大切となっています。
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