障害学生が直面する就職活動の壁と企業の新卒採用の可能性 後編

障害学生が直面する就職活動の壁と企業の新卒採用の可能性~ここだな代表に聞く 後編~

2025年01月11日 | 障害者枠で就活

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障害者差別解消法ができ、大学でも学生への合理的配慮への対応が進んでいます。一方で、学業に対するサポートは進んできているものの、就職やキャリアに対する支援はあまり進んでいません。
また、サービスとして提示されることがあっても、従来の障害福祉サービス内のものでしかなく、大学に進学する学生のニーズに合わせたものとはかけ離れている現状があります。
このような中で、障害のある大学生支援を行っている菅野 智文さんから、障害のある大学生の現状や企業での新卒採用の可能性についてお話をお聞きしました。前編では大学の障害学生の状況についてお聞きしました。後半では具体的な取り組みや企業との連携について聞いていきます。

Q:活動の具体的なエピソードがあればお聞かせください。
A:ある方は大学院卒で、現在、就労移行支援事業所に通所しています。この方の悩みごとは「遅刻してしまう」ことでした。遅刻したくないのに遅刻してしまう。支援員や家族からも叱られ続けているとのことでした。ある日のぐるりで、この方から「遅刻しなかった日は今週も 1日だけでした。また、みんなに怒られてしまいました。」という振り返りがありました。
この振り返りに対して、他のメンバーからは、「でも、1日は遅刻しなかったのだよね。少しずつ、改善していけば良いと思う。」「私も良く遅刻してしまうから、気持ちが良く分かる。」「私は、(遅刻しないように)◯◯の工夫をしている。試してみて。」「遅刻しないように頑張っているのに、怒られてつらかったね。」などのフィードバックがありました。
そして、迎えた1週間後の「ぐるり」では、当該学生は「今週は特別なことを何もしていない。」と振り返り発表を始めましたが、その途中で「月・火・水と3日連続で遅刻をしなかった。」と話してくれました。発表後、他メンバーからは、「すごい!」「頑張ったね」とのフィードバック。この学生は、小中学校時代は遅刻せずに学校に行けていたこともあり、遅刻しなかったことくらいで喜んではいけないと感じていたそうです。その後に確認したところ、木・金も遅刻しないで通うことができ、1週間一度も遅刻せずに通所することができました。
また、他の方からのフィードバックを受けて、自分を褒めてあげることの大切さを認識したり、逆に、予定を詰め込みすぎている人に「もう少し休む時間も増やしたらいいのかも」とアドバイスをしたりと、グループでのやりとりの中で、いろいろな視点があることに気づいたようです。
Q:他の人との関わりの中で「気づく」大切な点ですね。障害によっては、あまり他の方とのコミュニケーションが得意でない方もいると思いますが、その辺はいかがでしょうか。
A:元々は、企業セミナー等の企画が終わった後に、学生の希望者だけ残って自由に話せるフリータイムを設けていました。セミナー自体は1時間半くらいだったのですが、その後のフリータイムで学生たちが2時間半以上も盛り上がって話していたのです。さすがに長いので、もうそろそろ閉じさせて・・・と思ってしまったのですが、よくよく話を聞くと、大学に障害があることを言っていないとか、大学には伝えているけれど友達には言っていないという学生が結構いました。
GATE-Cにくると、全員に障害があり、しかもハンドルネームでの参加なので、自分のことが身バレしないので、気楽に話せるのだそうです。そこで、そんなにみんなが話したいのであれば自由に話す会を・・・と思って企画したら、今度はテーマなしに自由に話すことはハードルが高いみたいなのです。そこで、1週間の振り返りをするという企画として実施することになりました。この形式で、1年半以上続いています。
それで、GATE-Cの活動としては、毎月のセミナーと週2回のグループ・リフレクション(略して「ぐるり」)がレギュラーとして実施しています。ここに加えてスポット的な形で、企業と連携したセミナーやイベントを実施しています。
Q:なるほど、本当に学生を中心にした活動をされていらっしゃるのですね。企業向けには、どのようなことをされていらっしゃるのですか。
A:先ほども話した「カジュアル面談」をしています。今は、学生たちの面談の機会を増やすことを第一に考え、企業も学生も無料にて提供し、学生たちにもとても喜んでもらっています。企業と学生当事者が直接話しをする機会は限られていますし、もし採用面接まで進まないとしても、学生たちにとってもいい経験になると思っています。
有料にしてしまうと、いろいろ利害が発生してしまうと思うのです。本来、学生が面談を受けて気に入ったら応募すればいいし、嫌ならやめればいい。そういう自由な関係がいいなと思ったのです。だから、カジュアル面談では「出会う機会の場は提供しますが、後押し(学生たちに特定の企業を推薦すること)はしません。」そのように企業にもお伝えしています。
Q:障害のある学生の就職やキャリアについて相談する場はほとんどない中で、学生にとってはとても貴重な場ですね。
A:GATE-Cというサービス名称としているのは、学生がどんどん通過していく場になっていきたいと思っているからなのです。まず いろんなことを知ってもらって、学生自身が就活のGATEを通過していってほしい。どんどん通過し自分で歩み続ける学生もいますが、そうは言っても、やはり立ち止まる学生、一度通過しても戻ってくる学生もいます。そういった学生に対するサポートについては正直、試行錯誤中ですが、変わらずにGATEがあって、学生にとって立ち戻れる場所、歩み始められる場所と感じてもらえるようにしていきたいですね。
日々、取り組んでいて感じるのは、やはり障害のある大学生の就職に関する情報が圧倒的に少ないのです。だから学生自身にも当事者体験記を書いてもらって、ブログにアップしていく活動もしています。
自分の状況をいろんな人に伝えたいと思っている学生は少なくありません。「当事者体験記を書いてみたい」という学生には、必ずオンライン面談をして、GATE-Cの当事者体験記のスタンスをお伝えした上で書いてもらうようにしています。
私はGATE-Cでは、就活ノウハウやテクニック・対策を伝授する場にはしたくないと考えています。だからそれは学生にも伝えています。障害者を一括りにして自分の成功体験を教えてあげるというスタンスではなく、自分がどういう体験をして、どういうことを感じたのかという実体験をありのままに書いてほしいと伝えています。
GATE-Cとしてのスタンスを伝えると、学生の方からいろいろとアイデアでてくるのです。例えば、手帳を取得するまでのことや、エージェントで辛いことを言われたこととか。当事者体験記の内容・テーマは面談の場で決めるようにしています。そうすると早い学生は1~2週間で書いてくることもありますし、中には3~4ヶ月かかる学生もいるのですが、そこはもう本人にお任せして、書いていただいた記事を随時掲載していくということをしています。
また、企業の方でも、今はお付き合いさせていただいているところが数十社ありますが、障害のある大学生については、あまり理解できていないとおっしゃられている企業も少なくありません。そういった方々からは、1人1人の学生のことを語れるくらいの関係を築いていることに価値を感じていただいていると考えているので、より学生のことを知り、企業にもしっかり伝えていきたいと思っています。
Q:障害者雇用で悩んでいる企業にとって、採用の幅が広がることは、とてもニーズがあるのではないかとお話を聞いて思います。
A:そうですね。将来的には良い方向に変わっていくかもしれませんが、学生に近いということがGATE-Cの強みの1つだと思っていますので、どういう方向に進んだとしても、学生に近いことを大事にして活動をしていきたいです。
例えば、双極性障害の学生で、毎年、定期的に一定期間、体調を崩す傾向があるのですが、大学には問題なく通えていました。上記を含めて企業の方にお伝えし「一度、面談してもらえませんか。」とアプローチし、面談をしていただいたこともあります。
こういった情報を私が持ち、伝えていくことで、学生と企業を繋いでいくという点は意識をしています。情報を盛るとか、どちらかに肩入れするということではなく、伝えるべき事実をありのままに伝えることによって、もし機会が生まれればいいなと。そして、実際にこういう形で決まっていくこともあります。
この前も吃音のある学生の時は、日頃私とはスムーズに話していたので、「今日の面談は緊張しているから、ちょっと話すのに時間かかっていますが、いつもはこんなに時間はかからないんだよね。」といったやり取りも含めて、企業の方にはお伝えするようにしています。
Q:そういう取り組みは、本当に求められていると思います。大学でも障害のある学生の支援は始まっていますが、基本は学修に対する支援がほとんどで、就職や進路、キャリアについてはなかなか支援ができていないし、なかなか難しいですよね。一方で、企業では雇用率があがる中で障害者雇用を進めようと頑張っていますが、なかなか今までのやり方では上手くいかない、採用できないという声を聞きます。それを菅野さんのされているようなサポートで繋がるといい形になりますね。今後は、GATE-Cではどのような活動をされていく予定ですか。
A:先程も言いましたが、学生に近いというのがGATE-Cの1つの強みだと思っています。だから、そこを大事にした活動をしていきたいですね。企業に「説明会できますよ。」と声をかけると、企業が言いたいことだけを言う説明会になりかねません。私はそうならないように、学生が聞きたいことを話してもらうように、機会を企画することを大切にしています。
例えば、今は、外国語を活かして働いている障害のある社会人をテーマとする企画を考えています。当事者のご本人が話者として参加いただければ一番いいですが、ご本人が難しいようであれば、人事の方でもいいので、必ず「うちの会社の中で障害のある社員で外国語を使っている人はこういう人で、こういう仕事をしていますよ。」という説明は必須でお願いしたい。この企画は、学生が「外国語を使って働いている人の話を聞きたい。」といったことがきっかけでした。企業参加費を有料にすると、色々な調整が入って学生起点の企画の実施が難しくなることがありますが、参加費を無料にすることで、こういった調整がしやすくなります。
過去には、発達障害のある社員の方の話を聞きたいと思って企画検討していた時、企業側からは積極的に発達障害の応募者だけを採用したい訳ではないと難色を示されたりしたこともありました。企業は当たり前ですが、採用したい学生に対して、自分たちのアピールがしたいのです。でも、それは学生が聞きたいことじゃないこともあります。GATE-Cでは学生起点からのテーマを出すことを大事にしています。企業視点からのお話はGATE-C ではなくても、いろんなフェアやセミナーが実施されていますので。
Q:どこまでも学生に寄り添った支援をしたいということですね。
A:そうです。こういう取り組みが増えていけば、社会ももう少しだけよくなる、もう少しだけ住みやすくなるかなと思っています。実際に学生と接していると、こんなに優秀な学生がいるのだから、朝起きるのが苦手なところがあるかもしれないけれど、仕事で活躍できる可能性のある学生を採用してほしいと本気で思っています。
だから、カジュアル面談などを通して、企業の方が特定の障害の方の採用を難しいと感じていたかもしれないけれども、「なんかGATE-Cのあの学生はよかった。」というようなものが積み上がっていくと、「今まで採用していなかったけど、○○障害の学生を受け入れてみようかな。」となる可能性が出てくると思っています。今は、そういった実績を一つ一つ積み上げる時期だと思っています。
Q:カジュアル面談は、すぐに採用という面談ではないのですよね?
A:はい、カジュアル面談では、学生の名前がわからないハンドルネームの情報で企業の方に面談をお願いしています。企業の方は、本人が書いた大学や専攻、現在の状況、障害と障害特性、希望する配慮、自己PRなどを見て、カジュアル面談をしたいというリクエストをいただきます。そして、学生本人に企業からカジュアル面談のリクエストが来ていることを伝えて、面談するかどうかを決めてもらうという形式になります。
学生が希望しない場合には、そこで終わりとなりますが、面談を受けたいという希望があれば日程調整して、学生、企業、私の3者で面談の場を持ちます。この場でも、学生が望まなければ、学生の本名や連絡先はお知らせしません。そして、面談後、学生が希望するようであれば、学生が自ら応募するという流れになっています。
Q:カジュアル面談というのは、すぐに就職と意識するというよりも、応募するかどうかを決める面談のようなイメージでしょうか。
A:そうですね、そういう学生もいますし、もっとカジュアルにOB、OG訪問的な感じで社会人の人と話す機会と思っている学生もいます。だから、こちらとしては、企業さん側に「頑張って、口説いてください。」とお伝えしています。

まとめ

今回は、障害のある大学生支援を行っている菅野 智文さんから、障害のある大学生の就活や起業サポートについてお聞きしました。障害者差別解消法により、大学でも障害のある学生の合理的配慮の支援が始まり、大学での学業に対する支援は進んでいます。一方で、就職や進路、キャリアについてはあまり支援ができていない現状があります。

また企業では雇用率があがる中で障害者雇用を進めようと頑張っていますが、なかなか今までのやり方では上手くいかない、採用ができていないというところも少なくありません。採用方法は1つではありません。これまでの採用で思うような人材が採用できていないという企業の方は、障害者の採用を大学新卒という方法を検討することで、新たな採用方法を増やす可能性があるかもしれません。

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