中央省庁による障害者雇用の水増し問題を受けて行われた障害者の国家公務員統一試験の結果が22日に発表され、計754人が合格しました。
ここでは、はじめて行われた障害者の国家公務員統一試験の結果や採用試験で指摘された課題、また障害者公務員試験による企業への障害者雇用の影響について見ていきます。
障害者国家公務員採用試験の結果発表
中央省庁による障害者雇用の水増し問題を受けて行われた障害者の国家公務員統一試験の結果が22日に発表され、計754人が合格しました。
省庁別の合格者数は最多の国土交通省が174人、次いで法務省138人、国税庁90人でした。障害の種類は、精神障害57.3%、身体障害42.3%、知的障害0.4%です。また、勤務地域は関東甲信越365人、近畿83人、東海北陸67人の順に多く、九州は58人でした。
各省庁などが法定雇用率(2.5%)を満たすには、昨年6月時点で計3875人が不足しており、今回の合格者を含めてもまだ不足しています。政府は今年までに常勤・非常勤を合わせて約4000人を雇用する計画で、今年秋にも再び障害者対象の試験を実施すること予定しています。
今回の障害者公務員採用試験で指摘された公平性と配慮
政府が初めて実施した障害者向け国家公務員試験では、採用試験に関して公平性や配慮に関する指摘が多く行なわれました。具体的には、2次面接試験の受け付けが先着順で締め切られたことや、応募者全員の受験が終わる前に内定を出す、面接で「できない仕事」ばかり聞かれたりするなどが上がっています。
面接の内容でも、受験者から「配慮に欠ける不適切な質問をされた」との訴えが相次いだ。精神疾患のきっかけとなったセクシュアルハラスメントの内容を何度も説明させられ体調を崩した人や、質問内容に「精神障害への差別や偏見を感じた」と憤る人もいた。障害者団体は「水増し問題に表れた障害者排除の体質が改まっていない」と批判している。
2次試験の面接で不採用だった40代の身体障害者男性の声
試験は1次が各機関共通の筆記試験で、2次は個別機関が実施する面接形式。男性は5カ所の機関のうち3カ所の面接で「できない仕事は何ですか」「健常者と比較して劣る点は」などとしつこく尋ねられたという。面接時間の半分が同様の質問だった所もあり、腹が立った。「障害について詳しく知りたいのは分かるが、自分の能力や経験も見てほしかった」。一方で職歴や学歴を踏まえ「こんな仕事はできますか」と提案してくれる所もあり、意識の差を感じたという。
出所:配慮不足の質問も…障害者採用、公平性に疑問の声 国家公務員試験(西日本新聞2019/3/25)
採用方法とともに働きやすい職場をつくることが必須課題
雇用水増し問題を受け、政府は障害者雇用促進法改正案を衆議院に提出し、行政機関に対するチェック機能を強化することで、再発防止を目指す考えを持っています。また、働きやすい職場づくりに向けた「障害者活躍推進計画」の策定を求め、各省庁が法定雇用率を達成できなければ予算を減額する仕組みを導入する予定を示しています。
これを受けて3月19日に閣議決定された障害者雇用促進法改正案では、行政に対し働きやすい職場づくりに向けた「障害者活躍推進計画」の策定を義務づけられました。
また、今回の試験では、採用面接の運用などに対し、受験者の不満が多く出されました。採用試験の方法を検討するとともに、働きやすい職場づくりを行っていくことが求められています。
企業への影響
障害者雇用の水増し問題を受けて、新たに障害者を対象にした職員採用試験を行っていますが、この影響を受けて根本厚生労働大臣は、政府が進める採用活動で障害者が民間企業を離職し、法定雇用率を満たせない企業が出るおそれがあるとしたうえで、企業への対応策を検討する考えを示しました。
根本厚生労働大臣は参議院予算委員会で、「国が相当数の障害者を採用することで、民間企業を離職する人は相当程度いることが想定される」と述べ、政府が進める採用活動の影響で障害者が民間企業を離職し、法定雇用率を満たせない企業が出るおそれがあるという認識を明らかにしています。
また、根本大臣は「中央省庁で採用された障害者の方を対象に企業への影響の実態把握に努め、必要に応じて対応策を検討していきたい」と述べ、法定雇用率を満たせない企業に支払いが義務づけられている納付金制度の在り方など対応策を検討する考えを示しました。
出所:厚労相 「国の障害者採用 民間離職で企業に対応検討」(NHK NEWS WEB 2019/3/26)
まとめ
中央省庁による障害者雇用の水増し問題を受けて行われた障害者の国家公務員統一試験の結果が22日に発表され、計754人が合格しました。
一方で、今回の試験では、2次面接試験の受け付けが先着順で締め切られたことや、応募者全員の受験が終わる前に内定を出すなど、採用面接の運用などに対し、受験者の不満が多く出されました。採用試験の方法を検討するとともに、働きやすい職場づくりを行っていくことが求められています。
障害者が職場に定着できるかどうかは、障害者本人の能力やスキルなども大切ですが、それ以上に求められるのが職場の環境や組織づくり、仕組みづくりです。障害者と一緒に働く上司や同僚たちが障害特性を理解したり、支援員配置や短時間勤務の導入などの環境整備を行っていくことが必要になっています。
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