バリアフリーじゃなくても大丈夫!中小企業ができる障害者雇用の始め方

バリアフリーじゃなくても大丈夫!中小企業ができる障害者雇用の始め方

2025年05月31日 | よくある悩みと対応ヒント

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障害者雇用を進めたい気持ちはある。けれど、いざ取り組もうとすると、
「うちのオフィス、古くてバリアフリーじゃないし…」
「駅からも遠くて、通勤に不便だろうな」
「これまで障害者を雇ったことがない。ノウハウもない」
「社内の人たちが受け入れてくれるか不安」
そんな声が、地方の中小企業ではよく聞かれます。
実際、障害者雇用の事例を調べてみても、大手企業や大都市圏の先進的な取り組みばかりが紹介されていて、 「結局、うちみたいな会社とは前提が違いすぎて、参考にならない…」と感じたことはありませんか?でも、そうした不安や迷いは、「できない理由」ではなく、 「どこから準備すればいいか」を教えてくれる大切なサインです。
ハード面が整っていなくても、前例がなくても、社員の理解に不安があっても、 実は、そこから始めている企業は少なくありません。
今回は地方の中小企業が取り組む障害者雇用のヒントについて、3つのステップでお伝えします。

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地方・中小企業でも“できる理由”

現在の障害者雇用率は2.5%、従業員40人に対して1人の障害者を雇用することが求められています。つまり、多くの中小企業が対象となっています。
一方で、障害者雇用というと「制度に詳しい大企業じゃないと無理」「設備が整った都市部でないと難しい」と思われがちです。 けれど実際は、地方の中小企業だからこそ実現しやすい障害者雇用も存在しています。
それは中小企業のほうが業務の柔軟性が高く、部署間の連携が取りやすいことや、現場に合わせた雇用の工夫がしやすく、会社に合う障害者雇用に取り組みやすいからです。
例えば、川崎市の精密板金業(宇宙・航空、医療機器、通信機器、免震台脚などの部品製造)をしているスタックスさんがあります。この企業では、従業員53名に対して障害者を3名雇用しています(ヒアリング2021年7月)。

障害者雇用がスタートしたのは、前社長(現会長)の「社会貢献をしたい」という強い想いがきっかけでした。現社長は「中小企業にはハードルが高い」と感じましたが、まずは“就労体験”を受け入れてみることになりました。
就労体験では、検品済みの製品を再チェックしてもらいました。その実習中、ある実習生が、通常の検査で見逃されていた不良品を見つけたことをきっかけに、社長の中で「障害のある方にも、しっかりと力がある」と認識が大きく変化しました。
この企業の製品はエンドユーザーが国になるものが多く、仕様についてはかなり厳しいものが要求されていました。そのため製品の不具合を防ぐために「すべての製品を検査する」体制をとっていましたが、限られた人員の中で外観検査を専任で行うのは難しく、現場では検品と梱包を兼ねて作業する状態が続いていました。
しかし、どうしても検品の見落としが発生してしまい、取引先に出荷した後に不良が見つかるケースもありました。こうなると謝罪や製品交換だけでなく、原因調査・再発防止策・確認作業など、目に見えないコストが多く発生していました。
こうした中で、製品の傷や異常を少しずつ毎日チェックしてくれる人がいれば理想的だと考えていましたが、業務量は1日中専任で必要なほどではありません。また、同じ製品の検品をしていると、目が慣れてしまって見落としが生じてしまっていました。
そこにちょうどマッチしたのが、短時間勤務での障害者雇用でした。短時間雇用された発達障害のある人は、通常の勤務は難しいものの、環境のちょっとした変化にも敏感で、検品作業では非常に高い集中力と観察力を発揮し、微細な傷や変形にもよく気づく特性があります。繰り返し作業も継続して行えるため、検品業務と本人の特性が非常にマッチしており、1日2時間・週5日から勤務を開始しました。結果として、短時間勤務の人材が、日々少しずつ検査を担う体制ができたことで、品質向上と業務効率の両方に貢献できるようになりました。

障害者と聞くと、「配慮が多くて大変そう」「戦力になるのか不安」という印象を持つ人も少なくありません。 でも、実際には「働きたい」という思いを持っている人も多く、業務とマッチすれば中小企業の戦力として長く活躍してくれる人材と出会うことも少なくありません。

最近では、人材不足で悩んでいる中小企業もありますが、このような人材活用をすることで、企業側の求める人材と出会える可能性もあります。

はじめの一歩:障害者採用の3ステップ

「うちでも障害者雇用ができるかもしれない」 そう思えたとしても、いざ動こうとすると「何から始めればいいのか分からない」と感じるかもしれません。でも、最初の一歩は、実はとてもシンプルです。
ここでは、どの企業でも共通して活用できる3つのステップをご紹介します。

【STEP1】業務を見直す(業務の棚卸・切り出し)

障害者雇用というと、「障害者がどんな仕事ができるか?」という視点で考えがちですが、まずは発想を逆にして、「会社として、どんな業務を任せたいか」から整理するのがおすすめです。

定型的・補助的な業務でもいいですが、今、あまり取り組めていないけれど、実は手を付けられていない業務や、今後取り組みたい業務があれば、それを任せる業務とすることもできます。障害者雇用のための 特別な業務をつくる必要はなく、「今ある業務やこれから取り組みたい業務を分解・再編成する」ことが第一歩になります。

【STEP2】採用方針を決める

次に、どんな人材を求めるのかを明確にします。任せる業務にどのようなスキルやセンスが必要なのか、どれくらいの勤務時間や働き方をイメージしているのかを整理してください。
例えば、どんな働き方を想定するかという点については、次のようなことを検討します。
・週5日×短時間? 週3日だけ?
・出社型か、リモートもOKか?
・一定の時間に集中して働く? 柔軟な時間で?


業務とのマッチングを意識して採用方針を定めることで、採用後のミスマッチを防ぐことができます。

【STEP3】採用パートナーとつながる

障害者雇用では、障害者採用の窓口や訓練機関がすでに用意されています。自社だけで完結させるのではなく、このような支援機関とつながることができます。
例えば、次のような支援機関があります。
・ハローワーク(障害者の求人窓口)
・就労移行支援事業所(働きたい障害者が職業訓練を受ける機関)
・地元の特別支援学校(新卒枠の採用候補)
・地域障害者職業センター(当事者や企業支援あり、ジョブコーチ支援)
・障害者就労支援・生活支援センター(就労だけでなく、生活のサポートも可)

こうした支援機関は、国の障害者施策の一環として運用されているため無料で活用できます。具体的には、障害者の採用、就労後の定着などを中心にサポートしています。障害者雇用のノウハウがない企業でも安心して取り組めるような仕組みとなっています。

ハード面の課題にどう向き合うか

障害者雇用に踏み出す際に、最も多く聞かれる悩みのひとつが「うちはバリアフリーじゃないから難しい」という声です。確かに、段差の多いオフィス、エレベーターのないビル、駅から遠い立地など、地方の中小企業にとって物理的な環境の整備は簡単なことではありません。
でも、ここで大切なのは「すべてを整えてから採用する必要はない」ということです。できること、自社にあったところから始めていくことで大丈夫です。設備を一気に改修するのは現実的ではない場合でも、小さな工夫で働きやすさを変えることができます。
たとえば…
・階段に手すりを設置することで移動時の安全性を高める
・エレベーターがない建物では、上階業務を避けて配置を工夫する
・通勤ラッシュを避けた時差出勤や、出社時間に柔軟性を取り入れる
・トイレや休憩スペースを一部整備することで体調管理をしやすくする

こうした「部分的な配慮」でも、働く本人にとっては大きな安心感につながります。物理的な通勤やオフィスの利用が困難な場合は、在宅勤務やリモートワークという選択肢もあります。また、障害者雇用で必要な配慮は、ハード面だけでなくソフト面で示すこともできます。ソフト面の配慮とは「設備」といったハード面ではなく、人との接し方や組織の運用、日常のコミュニケーションの工夫によって実現される配慮を指します。
例えば、業務に関する明確な指示と伝え方の工夫や定期的なフィードバックや声かけ、休憩のタイミングや環境の配慮、コミュニケーション方法の調整などがあります。

社内の不安・抵抗感をどう解消するか

障害者雇用を進めるうえで、企業の設備や制度と同じくらい重要なのが「社内の受け入れ体制」を整えることです。どんなに物理的な環境を整えても、現場の社員が戸惑いや不安を抱えていれば、雇用や職場定着はうまくいきません。

社員の不安の多くは、「どう関わったらいいか分からない」「間違った対応をしてしまいそう」という“知らないこと”から生まれます。そこで有効なのが、事前に行う「障害理解研修」や「社内勉強会」です。

例えば、発達障害や精神障害のある方の特性と対応のコツ、配慮=特別扱いではなく「働きやすくする工夫」であることなどを知ると、安心するかもしれません。こうした研修は、社員の緊張感を和らげ、前向きな関わり方を知るきっかけとなります。

雇用することで変わる社員の意識

実際に多くの企業で起きているのが、「雇用してみたら、社員の意識が変わった」と言われることです。

ある企業では初めて障害者雇用で採用したところ、最初は周囲に戸惑いがあったものの、
「誰にでも得意・不得意があるんだと気づいた」
「教えることで自分たちの仕事も整理された」
「働く姿勢に刺激を受けた」
といった前向きな声が多く聞かれるようになりました。

障害者雇用に限らず、多様な人が働く職場では、「完璧さ」よりも「お互いを活かし合う」「できないことより、できること」に目を向ける姿勢が大切です。

すべての業務ができなくても、その人が“できること”に集中してもらう
その人が活きるよう、まわりの業務や関わり方を少し工夫する
関わりの中で「気づき」や「助け合い」が自然に育つ

そんな「多様性を前提とするチームづくり」が、結果的にすべての社員にとっても働きやすい職場を生み出します。社員の理解や協力は、1回研修をしたからといってできるものではありません。しかし、準備や対話の積み重ねを続けることで築くことができます。

「できないことばかりが気になっていたけれど、始めてみたら意外とスムーズだった」という声が多いのも、障害者雇用の現場のリアルです。障害者雇用というと「特別な取り組み」「大きな準備が必要」という印象を持たれがちですが、実際には、“特別な雇用”ではなく、“自社に合った雇用”を見つけていくことが大切です。自社らしい雇用スタイルを見つけることを意識するとよいでしょう。

また、最近は働き方にも大きな変化が見られています。全員が同じように働くよりも、それぞれの強みや特性を活かして、「この会社で活躍できる形」を一緒に考える姿勢が、これからの時代に求められる働き方につながります。

とはいえ、初めての障害者雇用には不安や戸惑いがつきものです。
どのような準備が必要なのか?
特性に合った業務を任せるにはどうすればいいのか?
社内の理解はどのように進めると効果的か?

そんな疑問や不安に答えるのが、障害者雇用の実践に役立つ「オンライン講座」です。制度や配慮の基礎から、業務設計・マネジメントのポイント、社内理解の進め方まで、中小企業でもすぐに活用できるノウハウを体系的に学べる内容になっています。

「自社に合った障害者雇用」を進めたい方は、オンライン講座の内容を確認してください。初めの一歩を、安心して踏み出すことをサポートしています。

参考

スタックスさんについてもっと詳しく知りたい方はこちらから

発達の特性を活かした短時間雇用で、会社のネックが解消できた~前編~

発達の特性を活かした短時間雇用で、会社のネックが解消できた~後編~

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