障害者をサテライトオフィスで雇用することを提案している名古屋のアルファプランニングを見学し、サテライトオフィスをサービスとして始めたきっかけや障害者雇用をどのように行っているのかについてお伝えしてきました。
アルファプランニングでは、サテライトオフィスとともにグループ会社としてA型事業所や内職を取りまとめる会社をもち、これらのノウハウやリソースを活用することによって、顧客企業にニーズにあったサービスを提供しています。後編では、実際に活用している企業の状況、サテライトオフィスで働いている障害者の状況、導入までの時間や金額などについて見ていきたいと思います。
前編はこちらから
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障害者雇用のサテライトオフィスを活用して障害者雇用率を達成する~新しい障害者雇用のカタチを提案するアルファプランニング~(前編)
サテライトオフィスを実際に活用している企業の状況
現在、サテライトオフィスを活用している企業は4社です。4社の業種は、製造、住宅、サービスなどで、従業員数は100~300名程度の中小企業が多く、障害者雇用の必要に応じた人数をサテライトオフィスで働く形をとっています。
就業時間は10:00~16:00で、午後には15分の休憩時間があります。仕事内容は、軽作業や商品等の検品、工業製品の検査など様々な種類のものがあります。仕事はアルファプランニングのグループ会社から請けているため、仕事がなくなるという心配はありません。
雇用されている企業とは離れた職場で働くことになりますが、月1回の訪問面談で雇用先の企業の担当者と直接会って、仕事内容の見学や雇用契約に関する話をし、月2回のWEB面談では、作業に関する報告などを中心に行っているそうです。
サテライトオフィスで働く障害者の状況
サテライトオフィスで働く障害別割合は、おおよそ知的障害20%、身体障害10%、精神障害70%となっています。また、精神障害の内訳は、おおよそ統合失調症60%、うつ病20%、発達障害20%となっています。
男女比は6:4、年代別では20代が13%、30代が23%、40代が23%、50代が32%、60代が6%となっており、平均年齢は36歳とのことでした。生活状況としては、家族と同居が半数を占めますが、単身やグループホームで生活する人も半数います。通勤時間は1時間圏内が多いそうです。
企業が障害者雇用を行うときには、本人の仕事遂行状況や適性などを見て判断することになりますが、できるだけ生活面で家族がサポートする環境が整っていることを企業側が希望する場合が少なくありません。しかし、アルファプランニングでは、できるだけ多くの障害者に働く場を創出することによって社会貢献するという活動方針のもとに、単身やグループホームでの就労者も半数近く在籍しており、企業の雇用をサポートしています。
また、精神障害者手帳1級の障害者も在籍しており、重度の障害者が働く場を提供していることにつながっています。これは、グループ会社にA型事業所をもち、就労と生活をワンストップサービスとして見ていく仕組みとノウハウがあるのでできているのではないかと考えます。
スタッフ体制、運営体制
スタッフは施設管理者、サポートスタッフ、生活相談員等がいて、施設全体の運営管理から、働く障害者の仕事面でのサポートと共に、生活面でのサポートやアセスメント、家族に対するフォローアップや医療機関や自治体などの関係機関との連携業務など、幅広いサポート体制を取っています。
一般的に企業で雇用される場合には、企業で生活面等はサポートすることが難しい場合が多く、就労以外の課題がある場合には、地域にある障害者就業・生活センター(ナカポツ)や地域の福祉課との連携、また就労前に所属していた就労支援機関を通して、これらの生活支援をする機関へつながることになります。このような状況から、機関同士の連携がうまくいかずに課題が大きくなるまで対応が見過ごされてしまったりすることが見られますが、アルファプランニングでは、就労から生活までを一貫して見られる体制になっているので、このようなリスク回避もしやすくなるのではないかと思います。
サテライトオフィスの導入までにかかる時間、金額
サテライトオフィス導入までにかかる時間は企業の状況によりますが、今までの実績からいうと、最短1ヶ月ほどで雇用ができた企業もあるそうです。障害者雇用を自社で進めようとすると、社内理解や業務の切り出し、採用活動や実習の受け入れなどで少なくとも半年くらいはかかることが多い中で、早く障害者雇用を進めたい企業にとっては検討してみる価値があるといえるでしょう。
人材紹介を利用した場合、一人当たり、80万円近く(例:年収250万×紹介手数料35%と仮定)かかり、さらに業務切り出し等管理者の負担が大きくかかることがあります。しかし、アルファスマイルの場合、初期費用が一人当たり40万円で導入が可能とのことでした。もちろん障害者雇用に関わる助成金申請も可能なので、企業にとっても導入するハードルがさがると思います。
まとめ
障害者雇用の方法も多様化している中で、サテライトオフィスで雇用することを提案している名古屋のアルファプランニングを見学し、その様子を前編、後編にわたってお伝えしてきました。
障害者雇用で働く障害者は増え続けており、それにともなって重度の障害者の方や今まで働くことが難しいと考えられてきた障害者も雇用される機会が増えてきています。一方で、はじめて障害者雇用をする企業も増えています。これらの差が広がっていく中で、はじめて障害者雇用をするにあたって悩んでいる企業にとっては、サテライトオフィスを活用することは意義があることではないかと感じています。
私が企業で実際に障害者雇用に携わり、その後に障害者雇用を進めたいと考える企業支援を行ってきましたが、その原体験は民間企業で就労支援をした経験です。企業の経営層や
管理職が障害者を雇用しようと決めても、一緒に働こうとしている社員に伝わっておらず、社内の理解がないために雇用継続できなかった学生たちがいました。もう少し社内の理解があったり、障害者を担当するスタッフをフォーローできる組織体制があればよいのに・・・と何度も思いました。そんな中での障害者雇用のサテライトオフィス、賛否両論ありますが、私は初めて障害者雇用する企業にとっては、活用できる仕組みの一つではないかと感じています。
初めて神田社長とお話しをしたときに、印象に残っていることがあります。それは、「重度で働けない障害者の方をこのサテライトオフィスを活用して雇用する機会を作り、そして障害者雇用で困っている企業もサポートしていきたい。」という趣旨のお話です。
企業で障害者雇用を経験してきた私から見ると、あえて重度の障害者を雇用すること、また
雇用する企業が生活面のサポートに手を出しすぎるのはどうだろう・・・と感じていたところも正直言ってありました。しかし、実際に働いている現場を見せていただいて、このような働き方が受け入れられてくると、働きたい障害者にとっても、また障害者雇用に悩んでいる企業にとってもwin-winの関係が作れるのかもしれないと感じています。
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