障害者雇用の仕事はAIでどう変わる?今後の業務と役割

AI時代、障害者雇用の仕事はどう変わる?今後広がる業務と企業が考えること

2024年12月7日 | 判断とマネジメントの構造

担当者が頑張るほど、 組織が止まる

 

障害者雇用を組織の力に変える5日間

登録者限定レポート
「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年7月23日更新
AIやデジタル技術の進化によって、これまで人が担当してきた入力、集計、検索、文書作成などの一部が自動化され始めています。

障害者雇用では、事務補助やデータ入力などの定型業務を担当している人も多いため、「今ある仕事がAIに置き換わるのではないか」「これから障害者雇用では、どのような仕事をつくればよいのか」と感じている企業もあるでしょう。

結論から言えば、障害者雇用の仕事は、定型業務からIT業務へ単純に置き換わるわけではありません。AIやデジタルツールに任せられる作業は任せ、そのうえで、人が担う確認、判断、調整、改善などの役割を見直す必要があります。

企業が考えるべきなのは、「障害者に何を任せるか」ではなく、「これから自社にどのような仕事と人材が必要になるか」です。そして、その役割を担える人材を採用・配置し、能力を発揮できる仕事の進め方や働く条件を整えることが重要です。

この記事では、生成AIが仕事に与える影響と、日揮パラレルテクノロジーズの事例をもとに、障害者雇用で今後広がる可能性のある業務領域を考えます。

この記事でわかること

  • AIによって障害者雇用の仕事がどう変わるのか
  • 仕事全体ではなく、タスクが変化するという考え方
  • 日揮パラレルテクノロジーズのIT・DX業務の特徴
  • 今後広がる可能性のある役割
  • 企業が中長期的に考えておきたいこと

障害者雇用では、定型的な仕事が多く担われてきた

障害者雇用では、これまで次のような仕事が多く見られました。

  • データ入力や書類整理などの事務補助
  • 清掃や環境整備
  • 製造や物流における軽作業
  • 郵便物や備品の管理
  • 定型的な確認・照合作業

これらの仕事には、手順や担当範囲を明確にしやすく、仕事の進め方を調整しやすいという特徴があります。

一方で、定型的な作業だけに役割を限定すると、

  • 自動化や業務縮小の影響を受けやすい
  • 仕事の幅を広げにくい
  • 新しいスキルを身につける機会が少ない
  • 本人の経験や専門性を十分に活かせない
  • 中長期的なキャリアを描きにくい

といった課題も生じます。

生成AIで仕事はなくなるのか

国際労働機関(ILO)は、2025年に生成AIと雇用に関する分析を公表しました。

この分析では、世界の労働者の約4人に1人が、生成AIの影響を受ける可能性のある職業に就いているとされています。特に影響を受けやすいのは事務系職種です。また、生成AIの能力が高まったことで、デジタル化が進んでいる専門的・技術的な職業にも影響が広がっています。

ただし、ここでいう「影響を受ける」とは、仕事そのものがなくなることを意味しません。多くの職業は、人の関与が必要な複数のタスクから構成されています。

そのためILOは、生成AIの主な影響は、仕事全体の自動化よりも、仕事を構成するタスクの変化として現れる可能性が高いと整理しています。

AIによって「職業がなくなる」と考えるのではなく、一つの仕事の中で、AIが担う部分と人が担う部分が組み替わると捉えることが重要です。

例えば、事務業務の中でも、

  • 情報を検索する
  • 文章の下書きをつくる
  • データを集計する
  • 定型的な形式へ整える

といった部分は、AIやデジタルツールで効率化しやすくなります。

一方で、

  • 結果が正しいか確認する
  • 例外的なケースへ対応する
  • 情報の意味を判断する
  • 関係者と調整する
  • 業務の問題点を見つける
  • 改善方法を決める

といった役割は、引き続き人の関与が必要です。

生成AIの登場によって、障害者雇用の仕事が一律になくなるわけではありません。
しかし、現在の作業内容をそのまま固定していると、仕事の一部が縮小したときに、担当する役割そのものが失われる可能性があります。

必要なのは、作業を守ることではなく、組織に必要な成果から仕事全体を見直すことです。

AI時代に必要なのは、仕事の再設計

仕事を見直すときは、次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

AIやデジタルツールが担いやすくなる部分

  • 入力・集計
  • 情報検索
  • 文章や資料の下書き
  • 定型的な分類・処理

人が引き続き担う部分

  • 内容の確認
  • 品質管理
  • 例外対応
  • 判断・承認
  • 関係者との調整

今後、重要性が高まる可能性がある部分

  • 業務上の問題を発見する
  • 改善方法を考える
  • AIの出力を検証する
  • 利用者の要望を整理する
  • 新しい仕組みやサービスを設計する

同じ事務職やIT職でも、どこまでをAIに任せ、どこからを人が担うかによって、必要な能力は変わります。

そのため、これからの業務設計では、現在の作業一覧だけを見るのではなく、

  • この仕事は何のために行っているのか
  • 最終的にどのような成果が必要なのか
  • AIを使うことで変えられる部分はどこか
  • 人が判断しなければならない部分はどこか
  • 将来、どのような役割へ広げられるか

を確認する必要があります。

日揮パラレルテクノロジーズに見る新しい業務のつくり方

障害者雇用の新しい業務領域を考えるうえで参考になるのが、日揮パラレルテクノロジーズ株式会社の取り組みです。同社は、日揮グループ内のIT・DX業務を支援する特例子会社です。

日揮グループには、

  • 障害者雇用を進めたい
  • IT・DXを推進する人材が不足している

という2つの課題がありました。

そこで、障害者雇用のために一般的な軽作業や事務補助を集めるのではなく、グループ内で必要とされているIT・DX業務と、専門性を持つ人材を結びつけました。

担当しているのは、単に指示されたデータを入力するような仕事ではありません。

Webアプリの開発などでは、社員が依頼者と話し合いながら、

  • 何が課題になっているのか
  • どのような機能が必要なのか
  • 何を成果物として提供するのか

を整理します。

そのうえで、要件定義、プログラミング、テスト、納品までを担当しています。

これは、仕事の一部分だけを切り出して渡すのではなく、顧客の課題を理解し、解決方法を考え、成果物をつくる役割です。

独身寮の食事予約業務をシステム化した事例

日揮グループの独身寮では、食事の予約数を確認し、朝食と夕食の金額を集計して、給与控除へつなげる業務がありました。従来の仕組みは使いにくく、人事部門にも一定の事務負担が生じていました。

そこで、日揮パラレルテクノロジーズの社員が利用者の要望を確認し、予約から請求データの作成までを行えるWebアプリを開発しました。

重要なのは、プログラミングができることだけではありません。

  • 現場の困りごとを把握する
  • 必要な機能を依頼者とすり合わせる
  • 業務の流れを整理する
  • 実際に使える仕組みへ変える

という課題解決の役割を担っている点です。

日揮パラレルテクノロジーズの事例は、「障害者にIT業務を任せた事例」だけではありません。

会社に必要なDXという成果から仕事を考え、その成果を担える人材が能力を発揮できる働き方まで設計した事例です。

同社では、勤務地や決まった勤務時間によって専門人材の採用を狭めないよう、リモートワークやフレックス制度を活用しています。

配慮によって仕事の難易度を下げるのではなく、必要な人材が能力を発揮できる条件を整えていることも重要です。

詳しい事例は、次の記事で紹介しています。

IT・DXと障害者雇用、2つの課題解決を考えた日揮パラレルテクノロジーズ

今後、障害者雇用で広がる可能性のある役割

今後の障害者雇用では、特定の職種だけが増えるというより、AIやデジタルツールを活用しながら、次のような役割が広がる可能性があります。

AIが出した結果を確認する役割

AIが生成した文章、画像、データ、分類結果などに誤りがないかを確認し、目的に合う状態へ整えます。

データやコンテンツの品質を管理する役割

情報の正確性、表記、形式、更新状況などを確認し、データやコンテンツを継続的に管理します。

業務の問題点を見つけ、改善する役割

現在の業務フローを確認し、重複、手戻り、入力ミス、待ち時間などの問題を見つけ、改善方法を考えます。

情報を整理し、関係者へ伝える役割

複数の情報を整理し、利用する人に合わせて、資料、マニュアル、FAQ、動画などへ変換します。

アクセシビリティを確認・改善する役割

Webサイト、システム、資料、動画などが、多様な人にとって利用しやすい状態になっているかを確認します。

専門性を活かして仕組みをつくる役割

IT、デザイン、データ分析、コンテンツ制作などの専門性を活かし、組織の課題を解決する仕組みやサービスをつくります。

ただし、これらを「障害者に向いている新しい仕事」と一括りにすることはできません。それぞれの役割に必要な経験、能力、判断範囲と、本人の経験、能力、希望、必要な配慮を具体的にすり合わせる必要があります。

必要なのは、プログラミング能力よりAIを仕事に使う力

AIを活用する仕事が増えても、すべての人が自分でプログラムコードを書けるようになる必要はありません。

生成AIは、コードの作成、文章作成、データ整理、画像制作、情報検索など、これまで専門知識や経験がなければ難しかった作業をサポートしてくれます。そのため、これまで能力や経験が足りずに担当できなかった仕事でも、AIを使うことで取り組める可能性があります。

例えば、プログラミングの知識が十分でなくても、つくりたい仕組みや必要な機能をAIに伝え、コードを生成させながら、簡単なツールや業務改善の仕組みをつくることができます。
文章を書くことが苦手な人でも、伝えたい内容を整理してAIに下書きを作らせ、それを確認・修正して、資料やメールとして完成させることができます。

つまり、AIは仕事を奪うだけではなく、これまでできなかった仕事へ参加するための補助となる可能性があります。
一方で、AIがあれば自動的に仕事ができるわけではありません。

これから重要になるのは、

  • 何を実現したいのかを整理する
  • AIへ適切に指示する
  • 出力された内容が正しいか確認する
  • 目的に合うように修正する
  • 間違いやリスクに気づく
  • 実際の業務で使える形に整える

といった、AIを仕事の中で使いこなす力です。

特に、AIが生成したコード、文章、データには、誤りや不足が含まれる場合があります。そのため、専門的な業務では、必要に応じて詳しい人へ確認する、テストを行う、情報管理やセキュリティのルールを守るといった知識や経験も必要です。

これから問われるのは、「自分だけで作業を完結できるか」ではなく、AIを使いながら、必要な成果を生み出せるかどうかです。

企業側も、従来の経験や資格だけで人材を判断するのではなく、AIを活用したときに、本人がどのような役割を担えるのかを見る必要があります。

企業が今から考えておきたい4つのこと

5年後も必要になる仕事は何か

現在ある作業ではなく、中長期的に組織が必要とする仕事や成果を確認します。

事業計画、顧客ニーズ、人手不足、品質管理、DXなどの課題から考えることが重要です。

AIに任せる部分と、人が担う部分はどこか

一つの仕事をタスクに分け、AIで効率化できる部分と、人の確認・判断が必要な部分を整理します。

どのような人材が必要か

障害種別から仕事を考えるのではなく、役割に必要な経験、専門性、思考、判断、コミュニケーションの条件を明らかにします。

能力を発揮するために、どのような働き方が必要か

勤務場所、勤務時間、指示方法、情報共有、相談体制などを確認します。

日揮パラレルテクノロジーズのように、リモートワークや柔軟な勤務時間を活用することで、採用できる人材の範囲が広がる場合もあります。

新しい業務領域を考えることは、人事部門だけの仕事ではありません。

中長期的な事業課題を把握している経営層、経営企画、DX部門、各事業部門と人事が連携し、今後必要になる仕事と人材を考えることが重要です。

よくある質問

Q:AIによって障害者雇用の仕事はなくなりますか

一部の定型的なタスクは、自動化されたり必要量が減ったりする可能性があります。

ただし、仕事全体が一度になくなるとは限りません。入力や集計をAIが担うようになっても、内容の確認、例外対応、品質管理、判断、業務改善など、人が担う役割は残ります。

現在の作業を固定するのではなく、仕事を構成するタスクと役割を定期的に見直すことが重要です。

Q:今後はITやAIを使えなければ働けませんか

すべての仕事で、高度なITスキルやAIの専門知識が必要になるわけではありません。一方で、今後は多くの仕事で、デジタルツールや生成AIを使う機会が増えていくと考えられます。

AIを活用することで、文章作成、情報整理、データ処理、画像制作、プログラム作成など、これまで経験や能力の面から難しかった仕事にも取り組める可能性があります。使い方を身につけることで、担当できる仕事の幅が広がることもあるでしょう。

ただし、重要なのはツールを操作できることだけではありません。

  • 何を実現したいのかを整理する
  • AIへ必要な内容を伝える
  • 出力された結果を確認する
  • 目的に合うように修正する
  • 分からないことやリスクを相談する

といった、AIを仕事の中で適切に使う力が必要になるでしょう。

Q:定型業務を担当している社員には、何をすればよいですか

まず、現在の仕事を構成するタスクを確認し、AIやデジタルツールで効率化できる部分と、引き続き人が担う確認、判断、改善、管理などの役割を整理します。

同時に、今後の業務で必要になるITやAIの使い方を学ぶ機会を設けることも重要です。

例えば、文章作成、情報整理、データ集計、資料作成、画像制作などは、AIを活用することで、これまで経験や能力の面から難しかった人でも取り組みやすくなる場合があります。

ITやAIを仕事の中で使えるようになることで、

  • 現在の業務をより効率的に進める
  • 確認や品質管理など、新しい役割を担う
  • これまで難しかった業務へ担当範囲を広げる
  • 将来の業務変更に対応しやすくする

といった可能性が生まれます。

ただし、ツールの使い方だけを一律に学ばせればよいわけではありません。

本人の経験、希望、得意なことを確認しながら、実際の業務に必要なIT・AIスキルを選び、仕事の中で少しずつ使えるようにすることが大切です。

定型業務をそのまま維持するのではなく、ITやAIを活用する力を高めながら、担当できる仕事と役割の可能性を広げていくことが重要です。

Q:新しい仕事は、どの部署が考えるべきですか

人事だけで考えるのは難しいでしょう。事業や業務の変化を把握している経営企画、DX部門、各事業部門、現場管理職などが関わり、人事と一緒に必要な役割と人材を整理する必要があります。

まとめ

生成AIの影響によって、障害者雇用の仕事が一律になくなるわけではありません。変化していくのは、仕事を構成するタスクと、人が担う役割です。

今後は、

  • AIが担う部分と人が担う部分を分ける
  • 確認、判断、品質管理、改善の役割を明確にする
  • 組織の中長期的な課題から必要な仕事を考える
  • 役割に必要な経験や専門性を明らかにする
  • 必要な人材が能力を発揮できる働き方を整える

ことが必要になります。

日揮パラレルテクノロジーズの事例から分かるのは、障害者雇用の仕事を増やすためにIT業務を用意したのではなく、組織に必要なIT・DXという成果と、それを担える人材を結びつけたことです。

障害者に何を任せられるかではなく、これから組織にどのような役割と人材が必要になるのか。この視点から考えることで、障害者雇用の業務領域とキャリアの可能性を広げることができます。

AI時代に必要な仕事と人材を整理したい企業の方へ

障害者雇用コンサルティングでは、中長期的な事業課題や現在の業務内容を確認しながら、

  • 今後も必要になる成果の整理
  • AIが担うタスクと人が担う役割の整理
  • 新しい業務領域の検討
  • 必要な人材要件の具体化
  • 能力を発揮するための働き方や組織体制の設計

を、自社に合う形で整理します。

まず自社で起きていることを整理したい場合は、30分相談をご利用ください。

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