企業が知っておくべき障害者虐待防止法の基本と対応方法

企業が知っておくべき障害者虐待防止法の基本と対応方法

2017年05月13日 | 障害者雇用に関する法律・制度

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障害者虐待防止法という法律をご存知でしょうか。

この障害者虐待防止法は、自分の言葉で被害を伝えることが難しかったり、自分をどのように守ることができるかを知らないために繰り返されてきた障害者に対する虐待を、これ以上起こすことのないように定められた法律です。

この障害者虐待防止法の中では、企業にも明確に責任があることが示されています。どのような責任があるのか、どのような行為が障害者虐待に当たるのかを理解することができます。また、社内で虐待防止を進める上で行えることを紹介しています。

障害者虐待防止法とは

目的

「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(以下「障害者虐待防止法」)は2011年(平成23年)6月24日に公布され、2012年(平成24年)10月1日から施行されています。

この法律は、障害者の尊厳を守り、自立や社会参加の妨げとならないよう、虐待を禁止するとともに、その予防と早期発見のための取り組みや、障害者を現に養護する人(養護者)に対して支援措置を行うことによって、障害者の権利を擁護することを目的としています。

対象者

この法律における障害者は、障害者基本法に規定される障害者を指しており、以下の障害者が該当します。

  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者(発達障害含む)
  • その他心身の機能の障害があり、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの

障害者虐待の種類

障害者虐待

法律では、「養護者による障害者虐待」「障害者福祉施設従事者等による障害者虐待」「使用者による障害者虐待」の3つについて、それぞれの防止等を規定しています。

養護者による虐待は、擁護する親、家族等による虐待を意味します。また、障害者福祉施設従事者による虐待は、障害者総合支援法で規定している障害者支援施設、障害福祉サービス事業、相談支援などに関わるスタッフ等による虐待が該当します。使用者による虐待は、障害者を雇用する事業主、一緒に働く上司、担当者や同僚などによる虐待となります。

虐待の行為の種類

虐待の種類としては、次の5つの身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待、経済的虐待があります。

身体的虐待

身体的虐待は、障害者の身体にケガをさせたり、またはケガをさせるおそれのある暴力や暴行を加えること、正当な理由なく障害者の身体を拘束することを指します。具体的な行為としては、平手打ちにする、殴る、蹴る、叩きつける、つねる、無理やり食べ物や飲み物を口に入れる、やけどさせる、縛り付ける、閉じ込める等が含まれます。

性的虐待

性的虐待は、障害者にわいせつな行為をすることや、障害者にわいせつな行為をさせることを指します。具体的な行為としては、性的な行為や接触を強要する、障害者の前でわいせつな会話をする、わいせつな映像を見せる等が含まれます。

ネグレクト

ネグレクトは、障害者を衰弱させるような著しい減食、長時間の放置、養護を著しく怠ることを指します。具体的な行為としては、食事や水分を与えない、入浴や着替えをさせない、排泄の介助をしない、掃除をしない、病気やけがをしても受診させない、第三者による虐待を放置する等が含まれます。

心理的虐待

心理的虐待は、障害者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うことを指します。具体的な行為としては、怒鳴る、ののしる、悪口を言う、仲間に入れない、子ども扱いする、無視をする等が含まれます。

経済的虐待

経済的虐待は、障害者の財産を不当に処分することや、障害者から不当に財産上の利益を得ることを指します。具体的な行為としては、年金や賃金を渡さない、本人の同意なしに財産や預貯金を処分・運用する、日常生活に必要な金銭を渡さない等が含まれます。

虐待の行為の種類
障害者虐待防止法

企業における障害者虐待法

障害者種類のところで、法律では「養護者による障害者虐待」「障害者福祉施設従事者等による障害者虐待」「使用者による障害者虐待」の3つがあることを説明しましたが、3つ目の「使用者による障害者虐待」、つまり企業や事業主がどのように関係するかについて、もう少し詳しくみていきたいと思います。

ここで述べられている「使用者」とは、障害者を雇用する事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について事業主のために行為をする人を意味します。ですから、工場長、労務管理者、人事担当者をはじめとして、障害者と一緒にはたらくあらゆる社員、職員、スタッフが含まれます。

また、虐待の種類も先ほどの5つの身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待、経済的虐待と同じですが、特に企業に該当すると思われる具体的な点をみていきたいと思います。

ネグレクト

仕事を与えない、意図的に無視する、放置する、住み込みで食事を提供することになっているにもかかわらず食事を与えないなど、健康や安全への配慮を怠ることなど。

心理的虐待

脅迫する、怒鳴る、悪口を言う、拒絶的な反応を示す、他の社員と違った差別的な扱いをする、意図的に恥をかかせるなど。

経済的虐待

障害者に賃金を支払わない、賃金額が最低賃金に満たない、強制的に通帳を管理する、本人の了解を得ずに現金を引き出すなど。

虐待が発生しているときに、虐待をしている人(虐待者)、虐待を受けている人(被虐待者)に自覚があるとは限りません。ときには、虐待をしている人が「指導、しつけ、教育」という名のもとに虐待を行っている場合があります。また、虐待を受けている人が、障害の特性から自分の受けている行為が虐待だと認識することが難しい場合もあります。しかし、先ほど紹介したような上記の行為は、虐待に該当します。

障害者虐待防止法

事業者の責務

障害者を雇用する事業主である企業は、障害者虐待を防止するために研修の実施や、苦情処理体制を整えることにより、社内における障害者虐待防止の対応をとることができます。

障害者虐待防止のための措置

研修の実施

社員に対する研修を行うことによって、同じ職場や会社の中で働く社員、職員、スタッフが障害者の人権についての理解を深め、障害の特性に配慮した接し方や仕事の教え方などを学ぶことができます。障害者雇用や虐待を防止するためには、継続的な研修や働きかけが大切です。

障害者虐待の防止に向けて、社員研修を実施したり、労務管理担当者を中心に各種研修会へ参加する機会を設けるなどの取り組みを行いましょう。また、職場内で率直に意見交換できるような環境を作ることも重要です。

研修の内容は、障害者虐待の法律やどのような行為が障害者虐待に該当するのか、障害者虐待を事業所で発見した場合にどこに報告し、事業所としてどのような措置を行うのかなど内容も大切です。

しかし、虐待についてだけでなく、それとともに障害の特性や、障害者への接し方などを学ぶ機会をつくることができるなら、社内の障害者雇用に対する理解を促進することにつながるでしょう。

苦情処理体制の整備

雇用している障害者やその家族が相談することができるように、相談窓口を開設するとともに、周知を図ることができます。まず、事業所内で発生したときに、障害者虐待に関する担当部署や相談担当者を決めましょう。また、相談の内容や状況に応じて、担当部署や相談担当者と人事部門が連携を図るなど、事業所内で適切に対応ができる体制を整備することも大切です。

このような体制を整えていることを障害がある社員だけでなく、障害のない社員にも周知することによって、障害者雇用についての理解や啓発を広められるとともに、所属する組織が社員を大切にしていることを伝えるきっかけにもつながります。

不利益取扱いの禁止

障害者を雇用する事業主である企業は、社員や職員、スタッフが通報や届出をしたことを理由に、その労働者に対して、解雇その他不利益な取り扱いをしてはならないことが定められています。

企業の中で障害者虐待に気づいた場合の対応方法

もし、企業や会社、組織の中で、虐待の発見したときには、障害者虐待を受けたり、虐待を受けた恐れのある障害者を発見したら、事業所所在地の市町村または都道府県の障害者虐待対応窓口に連絡することができます。虐待対応窓口に連絡すると、以下の流れで、都道府県労働局へ報告されます。

障害者虐待防止法のフロー

出所:使用者による障害者虐待をなくそう(厚生労働省)

しかし、できれば通報する前に、まずは会社や組織の中の上司、部門長、相談窓口に相談することをおすすめします。上記の都道府県労働局等への報告では、通報などの秘密は守られるとされていますが、なかなか外部機関に連絡することはハードルが高いですし、報告したことが何となく伝わってしまう可能性もあり、逆に居づらくなる状況をつくってしまう可能性もあるからです。

いろいろな状況がありますので、一概には言えませんが、できるだけ社内の中でまずは相談し、それでも対応がされないときに、外部へ相談するとよいかもしれません。

動画の解説はこちらから

まとめ

障害者虐待防止法について説明をしてきました。その中でも、特に企業の責任について示してきました。

気をつけたいことが、虐待が発生しているときに、虐待をしている人(虐待者)、虐待を受けている人(被虐待者)に自覚があるとは限らないということです。ときには、虐待をしている人が「指導、しつけ、教育」という名のもとに虐待を行っている場合があります。

社員に対する研修を実施することによって、同じ職場や会社の中で働く社員、職員、スタッフが障害者の人権についての理解を深め、障害の特性に配慮した接し方や仕事の教え方などを学ぶことができます。まず、社内で障害者虐待についての理解を深めていただければと思います。

参考

障害者雇用をしている企業が社員向けに行っている研修とその効果とは?

障害者職業生活相談員とは?~役割と資格取得方法~

ジョブコーチ(職場適応援助者)の資格取得と求められる役割

企業向け「精神・発達障害者しごとサポーター」研修で基礎知識・配慮を学ぶ

発達障害を理解する~eラーニングで学べる発達障害しごとサポーター~

合理的配慮を障害者に示せなかったときの企業のリスクとは

障害者差別解消法改正、企業の障害者雇用にどのように影響する?

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