障害者雇用で仕事がない?専門職組織で見直したい仕事の探し方

障害者雇用で「任せる仕事がない」専門職組織へ|探すのは「余っている仕事」ではない

2026年09月27日 | 企業の障害者雇用

担当者が頑張るほど、 組織が止まる

 

障害者雇用を組織の力に変える5日間

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「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

「うちは専門職ばかりなので、障害者雇用で任せられる仕事がないんです」IT、コンサルティング、士業、研究開発など、専門職の多い組織でよく聞く言葉です。

実際、こうした組織では、従来の障害者雇用で仕事として切り出されてきた定型業務が少なくなっています。データ入力や帳票処理はシステム化され、紙の処理も減りました。AIや自動化の活用が進めば、定型的な作業はさらに見つけにくくなります。

だから、「探しても仕事が見つからない」という感覚そのものがおかしいわけではありません。ただし、ここで一度確認したいのは、何を「仕事」として探しているのかということです。

松井優子の見立て

「任せる仕事がない」と感じるとき、探しているのは「渡せる仕事」であることが少なくありません。
専門職の多い組織では、渡しやすい単純作業そのものが少ないため、この探し方では候補が見つかりにくくなります。
探すものを「組織に不足している機能」に変えると、見えるものが変わります。仕事がないのではなく、いままでの探し方では見つからなかった、という場合があります。

この記事でわかること
  • なぜ専門職組織で「任せる仕事がない」となりやすいのか
  • 従来型の業務切り出しが機能しにくくなっている理由
  • 「渡せる仕事」から「組織に不足している機能」へ視点を変える意味
  • 外部サービスを利用する判断をどう考えるか
  • 障害者雇用を内製化したとき、組織に何が残るのか

専門職組織では、本当に「渡せる仕事」が少ない

障害者雇用で仕事を考えるとき、「探せば何かあるはず」と言われることがあります。

しかし、専門職の多い組織では、本当に見つかりにくいことがあります。

IT企業であればエンジニア、コンサルティング会社であればコンサルタント、士業であれば資格や専門知識を持つ職種、研究開発部門であれば研究職や技術職が中心です。仕事の多くに専門知識や案件ごとの判断が必要で、「一部だけを取り出して、そのまま別の人へ渡す」ことが難しい場合があります。

さらに、以前であれば切り出し候補になった入力、集計、帳票処理なども、システム化や自動化の対象になっています。

そのため、「単純作業がない」「定型業務がない」「切り出そうとしても、まとまった仕事にならない」という状態は十分に起こり得ます。

「切り出せる仕事がない」という実感は、まずそのまま受け止めてよいと思います。

問題は、その次です。

本当に会社の中に必要な仕事がないのか。それとも、これまでと同じ探し方をしているために見つからないのか。

ここは分けて考える必要があります。

「任せる仕事」を探すとき、「渡せる仕事」だけを見ていないか

これまでの障害者雇用では、すでに社内にある業務から、一部を切り出して担当してもらう方法がよく使われてきました。

例えば、一人の社員が行っている複数の業務の中から、定型化できる部分を分けて、新しい仕事としてまとめるという考え方です。

この方法自体が間違っているわけではありません。定型業務が多く、業務を分けやすい職場では有効です。

しかし、専門職中心の組織では、そもそも「そのまま渡せる業務」の母数が少ないため、同じ方法を繰り返しても候補が増えません。

それでも「障害者雇用の仕事を探そう」とすると、「何か簡単な仕事はないか」「専門知識がなくてもできる仕事はないか」「誰かから切り出せる仕事はないか」という探し方になりやすくなります。すると、最初から見る範囲がかなり狭くなります。

仕事がないのではなく、いままでの探し方では見つからなかった。

専門職組織では、この可能性を一度考えてみる必要があります。

探すのは「余っている仕事」ではない

障害者雇用という枠の中だけで仕事を探すと、「渡せる仕事があるか、ないか」という問いになりやすくなります。

しかし、一度その枠から離れて、組織全体を見ると、別のものが見えてきます。

例えば、

  • 必要なのに、十分にできていないこと
  • 必要だと分かっているが、手がつけられず後回しになっていること
  • 現在、外注や派遣などで外部に費用を支払っていること

です。

これらは「余っている仕事」ではありません。むしろ、組織にとって必要だから存在している仕事です。

特に、外部へ費用を支払っている業務は分かりやすい例です。社内の誰も担えない、あるいは担う余力がないため、すでに社外の人や会社に費用を支払って実施しています。

そう考えると、「障害者に渡せる仕事は何か」という問いと、「組織として必要なのに、自社の中で十分に担えていないものは何か」という問いでは、見えてくるものが違います。

組織に不足している機能を探す。

専門職組織で仕事が見つからないときには、この視点への切り替えが一つの入口になります。

ただし、「不足しているものなら何でも障害者雇用へ回せばよい」という意味ではありません。実際に仕事として成立するのか、どのような役割を期待するのか、必要な能力は何か、どのような環境であれば力を発揮できるのかは、その後に考える必要があります。

この記事で扱いたいのは、その具体的な洗い出し手順ではなく、探す対象そのものを変えてみるというところまでです。

外部サービスを使うことが、間違いなのではない

社内を探しても仕事が見つからない。一方で、障害者雇用への対応は必要になる。社内には採用や受け入れのノウハウもない。

このような状況であれば、サテライトオフィスなどの外部サービスを利用することは、企業にとって合理的な選択になり得ます。

特に、短期間で雇用体制を整える必要がある場合や、自社だけでは受け入れ体制をつくることが難しい場合には、外部の知見を使う意味があります。

重要なのは、外部サービスを使うこと自体を良い・悪いで判断することではありません。考えたいのは、その方法を選ぶことで、何を外部に任せ、何を自社に残すのかということです。

雇用や業務運用の多くを外部へ委ねている場合、自社の管理職や人事が、仕事をつくる、役割を言葉にする、本人と調整する、現場で試して見直すといった経験を積む機会は少なくなります。

短期的には問題なく運用できていても、数年後に「自社で障害者雇用を進めたい」と考えたとき、社内に経験が十分に残っていないことがあります。

一方、すべてを内製化すればよいとも限りません。自社で雇用すれば、採用、育成、マネジメント、品質管理など、新たに社内で担う仕事も増えます。外部委託を内製化したからといって、必ずコストが下がるわけでもありません。

だからこそ、「外に任せるか、内製するか」ではなく、自社として何を蓄積したいのかまで含めて選ぶという視点が必要です。

「難しい」と思われていた部門で、仕事が生まれた企業もある

ここで、これまで関わったケースをもとに構成した一つの例を紹介します。

専門職の多いある組織では、「社内には任せられる仕事がない」と考え、障害者雇用の一部に外部サービスを利用していました。

その時点では、それが現実的な選択でした。社内には定型業務がほとんどなく、専門職が中心です。障害者雇用の仕事を探そうとしても、「これは専門知識が必要」「これは判断が必要」と候補から外れていきました。その後、法定雇用率の引き上げへの対応も必要になり、同時に、自分たちの中で「この形を続けるだけでよいのだろうか」という問題意識が出てきました。

そこで、障害者雇用向けの仕事を探すことから少し離れ、組織の中で必要とされている仕事そのものを見ることになりました。結果として、これまで「障害のある人が担当するのは難しい」と考えられていた部門でも、役割を持って仕事を担う形が生まれました。

重要なのは、「実は簡単な仕事が隠れていた」という話ではありません。

仕事を見る位置を変えたことで、それまで候補として認識していなかった役割が見えるようになったということです。

内製化して残ったのは、雇用率だけではなかった

この企業で変わったのは、障害者の雇用人数だけではありませんでした。

社内で仕事をつくろうとすると、「この仕事は、そもそも誰が何のために行っているのか」を確認する必要が出てきます。

それまで専門職が自然に抱えていた仕事や、担当者しか分かっていなかった作業が見えるようになりました。

また、新しく仕事を任せるには、「これをお願いします」だけでは十分ではありません。

どこまでやれば完了なのか。何を優先するのか。迷ったときには誰へ確認するのか。これまで職場の中で暗黙に共有されていたことを、言葉にする必要が出てきます。その結果、障害のある社員だけでなく、他の社員にとっても仕事が分かりやすくなることがあります。

さらに、このケースでは、これまで外部へ支払っていた費用の一部を、社内での雇用や業務運用へ振り向けることもできました。

もちろん、これはすべての企業で同じ結果になるという意味ではありません。それでも、障害者雇用を内製化する過程で、「誰を雇うか」だけではなく、「自分たちの会社では、誰が、何を、どのように担っているのか」を見直すことになった。

ここに、雇用率への対応だけではない価値があります。

この考え方は、障害者雇用だけのものではない

「余っている仕事を探すのではなく、組織に不足している機能を見る」という考え方は、障害者雇用だけに使うものではありません。

採用が難しい会社でも、「いまの仕事の形に、そのまま合う人」を探し続けると、採用対象は狭くなります。

一方で、組織として必要な役割は何か、その役割に本当に必要な能力は何か、能力を発揮するためにどのような働き方や環境が必要なのか、と分けて考えると、人材の見え方が変わることがあります。

障害者雇用は、この問いが特に見えやすい領域です。

しかし本質的には、「今いる人に仕事を合わせるか」「今ある仕事に人を合わせるか」という二択ではなく、必要な役割と、人が力を発揮できる条件をどう組み合わせるかという採用・業務設計の問題でもあります。

「仕事がない」と感じたとき、どこを見ていますか?
  • 既存の定型業務だけを「任せる仕事」の候補にしている
  • 障害者雇用担当者の周辺だけで仕事を探している
  • 外部へ委託している業務は、社内の仕事候補として見ていない
  • 専門職が本来業務以外に使っている時間や仕事は、十分に見えていない
  • 「切り出せる仕事がない」というところで検討が止まっている
当てはまるものがある場合、仕事が本当にないのではなく、仕事を見る範囲や、探しているものがまだ限定されている可能性があります。
「仕事がない」の前提から、一度整理してみたい企業へ
「本当に任せる仕事がないのか」「仕事の探し方が限定されているのか」「仕事以外のところで判断が止まっているのか」は、社内にいると分かりにくいことがあります。
組織判断レビューでは、現在起きている事象を手がかりに、任せる仕事や期待する役割、判断、情報共有などを確認し、どこから整理する必要があるのかを見ていきます。具体的な仕組みをつくる前に、まず「何が問題なのか」を整理するためのサービスです。

専門職組織の障害者雇用と仕事づくりについてよくある質問

Q:専門職しかいない会社でも、障害者雇用は可能ですか

専門職が多いから障害者雇用ができない、と一律に決まるわけではありません。

一方で、定型業務が多い職場と同じ方法で仕事を探しても、候補が見つかりにくいことはあります。

「障害者にできそうな簡単な仕事」を探すだけでなく、組織として必要な役割は何か、その役割に必要な能力は何かというところから見ることで、別の可能性が見える場合があります。

Q:サテライトオフィスなどの外部サービスを使うのは問題ですか

外部サービスを利用すること自体が問題ということではありません。

社内に仕事が見つからない、受け入れノウハウがない、一定の期間内に雇用体制を整える必要があるなど、企業の状況によっては合理的な選択になり得ます。

確認したいのは、外部へ何を任せるのかと同時に、自社にはどのような経験や仕組みを残したいのかです。短期的な対応と、中長期で自社に蓄積したいものを分けて考えることが重要です。

Q:業務を見直すとき、最初にどこを見ればよいですか

「余っている仕事はないか」だけで探さないことが一つの出発点です。

必要なのに十分にできていないこと、後回しになっていること、外部に任せていることなど、組織として必要とされている機能へ視野を広げると、見え方が変わる場合があります。

ただし、実際にどこから確認するかは、業種、組織構造、現在の外注状況、採用したい人材像などによって異なります。

Q:外部サービスから内製化するには、どのくらいの期間がかかりますか

一律の期間を示すことはできません。任せる仕事がすでに明確な会社と、仕事そのものから整理する必要がある会社では準備が異なります。採用ルート、現場の受け入れ体制、管理職の役割などによっても変わります。

重要なのは、最初から「何か月で内製化する」と決めることより、自社では何を内側に持ちたいのかを明確にすることです。

Q:AIや自動化で定型業務がさらに減ったら、障害者雇用の仕事はなくなりませんか

定型的な作業の一部は、今後も自動化の対象になっていくと考えられます。だからこそ、「自動化されにくい単純作業を探す」という競争を続けるより、組織の中で必要なのに十分に担えていない機能や、どのような役割を人が担う必要があるのかを見ることが重要になります。

障害者雇用の仕事を確保するために業務を残すのではなく、組織に必要な仕事を起点に考えるということです。

まとめ|仕事がないのではなく、いままでの探し方では見つからなかった

専門職の多い組織で、「障害者雇用で任せる仕事がない」と感じること自体は不自然ではありません。

定型業務は少なくなり、従来のように既存業務から「渡せるもの」を切り出す方法だけでは、候補が見つからない企業もあります。

そこで確認したいのは、「仕事があるか、ないか」の前に、何を探しているのかです。探すのは「余っている仕事」ではない。

必要なのに十分にできていないこと。後回しになっていること。外部へ費用を支払っていること。組織に不足している機能を探す。

この視点に変えると、障害者雇用という枠の中だけでは見えなかった仕事が見えてくる場合があります。

もちろん、見つかった仕事を誰にでも任せられるわけではありません。その役割に何を期待するのか、どのような能力が必要なのか、本人が力を発揮するために何を整える必要があるのかは、別に考える必要があります。

だからこそ、これは単なる「業務の切り出し」の話ではありません。

仕事がないのではなく、いままでの探し方では見つからなかった。

そう考えて組織全体を見るところから、専門職組織の障害者雇用は違う形で動き始めることがあります。

参考資料

関連記事|「仕事がない」の次に考えたいこと
任せる仕事の見方を変えた後は、何を期待するのか、判断をどう言葉に残すのか、そして現場の課題を経営へどう伝えるのかまで視野を広げると、採用・配属・定着を一つの流れとして考えやすくなります。
障害者雇用を「誰を採るか」から始めるのではなく、会社としてどのような仕事・役割・期待を置くのかという入口から整理します。

任せる仕事や役割を考えた後、「なぜそう判断したのか」「何を見て決めたのか」を担当者の頭の中だけに置かず、組織に残す視点を整理します。

「仕事がない」「現場が困っている」といった言葉を、経営が組織課題として判断できる問いへどう変えるのかを考えます。

障害者雇用対策(厚生労働省)

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