ジョブコーチ(職場適応援助者)の活動と役割とは

障害者のジョブコーチ

ジョブコーチ(職場適応援助者)支援事業は、職場にジョブコーチが出向き、障害特性を踏まえた直接的で専門的な支援を行い、障害者の職場適応、定着を図ることを目的としています。

ジョブコーチの今までの経緯や、ジョブコーチになるための方法、また、求められる役割や資質について説明していきます。

ジョブコーチのこれまでの歩み

ジョブコーチは、障害者が職場で働きやすい環境を整えるため、障害者と企業を支援する障害者雇用に携わる専門家や専門的役割を指します。1986年に米国でリハビリテーション法の改正により「Supported Employment(援助付き雇用)」として制度化し、1980年代後半に日本に紹介されました。

米国における職業リハビリテーションは、身体障害者を対象として発展してきたため、職業相談、職業評価、職業訓練など、就職前の準備にポイントがおかれてきました。一方、知的障害者や精神障害者の就労においては成果があがりにくい状況があり、実際の職場において、仕事の訓練や人間関係の調整、休憩の過ごし方など、就職して働くために必要かつ具体的な環境整備をサポートする役割をジョブコーチが担うことにより、成果をあげてきました。

日本においては、厚生労働省が、ジョブコーチによる雇用後の支援を試験的に実施し、ジョブコーチの考え方と方法論を取り入れ、就労支援事業を進めてきました。2002年に「職場適応援助者(ジョブコーチ)」事業を開始し、2005年に「職場適応援助者助成金」が創設されています。この背景には、障害者の雇用の促進等に関する法律により、事業主が一定数の障害者を雇用するように定められている障害者雇用率が関係しています。

2013年からは、民間企業における障害者雇用率が2.0%、つまり従業員50人に対して1名の障害者雇用が定められています。大企業だけでなく中小企業でも障害者雇用の取組が進んでいます。

ジョブコーチの活動と種類

ジョブコーチの活動は、障害者が職場に適応できるように、職場に出向き、本人を支援することや、職場の環境を整えることが含まれます。例えば、障害者本人に対する支援としては、担当する業務を遂行できるような仕組みづくりとしてスケジュールや、マニュアルの作成をします。

また、職場内での人間関係を円滑にするために担当者を決めて、報告・連絡・相談などのコミュニケーションの練習を行います。職場で一緒に働く従業員には、障害特性の理解を深める研修を行ったり、障害に配慮した雇用管理、職務内容や配置等についての相談に応じます。

職場環境づくり

ジョブコーチ研修

ジョブコーチは、一般的には職場適応援助者養成研修の修了者とされています。職場適応援助者養成研修は、高齢・障害者・求職者雇用支援機構や厚生労働大臣が認めるNPO等の団体で行われています。

平成27年度の職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修の概要

(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構

民間の研修機関

ジョブコーチ研修

ジョブコーチの種類

ジョブコーチは次の3種類に区分されています。

  • 配置型ジョブコーチ
  • 地域障害者職業センターに配置されており、直接的に支援を行ったり、間接的に訪問型ジョブコーチ及び企業在籍型ジョブコーチと連携して必要なアドバイスを行うこともあります。

  • 訪問型ジョブコーチ(旧第1号職場適応援助者)
  • 障害者の就労支援を行う社会福祉法人等に所属するジョブコーチです。障害者雇用の促進に係る事業等障害者の就労支援を行う法人等に雇用されている人や、医療機関に所属しており、精神障害者等の就労支援に係る業務を行っている人などがいます。

  • 企業在籍型ジョブコーチ(旧第2号職場適応援助者)
  • サポートする障害者と同じ企業に所属するジョブコーチです。専任ジョブコーチとして活動するジョブコーチもいますが、管理的な業務と兼務するジョブコーチもいます。

2005年に「ジョブコーチ助成金制度」が新設され、訪問型ジョブコーチ、企業在籍型ジョブコーチは助成金の対象になり、地域の社会福祉法人などが生活支援とあわせてジョブコーチ支援を担うとともに、雇用する企業自らもジョブコーチを配置し、自社内で必要な援助を行うことが期待されています。

このほかにも、地方自治体が独自に開催している研修を受講して就労支援に携わるジョブコーチや各所属先においてジョブコーチという職制のもとに活動している人もいます。

例えば、東京都においては、東京ジョブコーチ職場定着支援事業を(公財)東京しごと財団が認定した職場適応援助者として活動しています。障害者が就職し、新しい職場で円滑に働き続けることができることを目的として、また、障害者を雇用する企業がスムーズに受け入れられるように、都独自の「東京ジョブコーチ」を派遣し、障害者の作業適応支援や職場内の環境調整など、職場定着に向けた支援をしています。

東京ジョブコーチ支援事業

職場の報告連絡相談

ジョブコーチの役割と求められる資質

ジョブコーチの役割は守備範囲が広い

ジョブコーチの役割は、障害者が働く環境を整えることです。ジョブコーチは、障害者に仕事を教えることと捉えられることが多いのですが、直接仕事を教えること以外にも、幅広い役割が求められています。また、サポートする内容は就職する障害者の能力や特性、雇用する企業の社風、規模、業種、障害者雇用経験の有無、就職支援機関・特別支援学校等の連携状況により異なります。

ジョブコーチ支援では、障害者と職場の双方に対して事前に情報収集し、どのようなサポートが必要なのかを見極めます。そのために障害者が所属する支援機関からの情報や、職場の仕事内容や受け入れ環境の確認を行いますが、これは障害者と職場を適切に組み合わせるジョブマッチングにとても有効です。

ジョブコーチは障害者が働けるようにサポートしますが、いつまでもサポートし続けることはできません。そのためジョブコーチが障害者と職場の従業員とのコーディネータをし、ジョブコーチがいなくても仕事ができるようなナチュラルサポートの体制をつくります。

ナチュラルサポートとは、職場の上司や同僚が、職場で障害者が仕事を行なううえで必要なサポートを行なうことです。サポート内容には業務遂行に関わるサポート他に、昼食や休憩時間の社会的行動に関するサポート、対人関係の調整なども含まれます。
職場の環境調整

ジョブコーチに求められる資質

ジョブコーチは、障害者の雇用と就業の継続を図ることを目的としており、障害者本人をサポートするとともに、雇用する企業や人事担当者、雇用する障害者と一緒に働く社員をサポートすることが大切なミッションとなっています。

障害者雇用は、いろいろなバックグラウンドがある人たちが関わる仕事です。障害者を企業へ送り出す側としては、特別支援学校の教員や就労支援機関の指導員、障害者福祉に携わってきた人たちが関わりますし、障害者を企業で受けいれる側としては、企業の人事関係者、現場のマネジメントに関わる人たちが関わります。そのため、ジョブコーチは、障害者本人、企業のどちらかに偏るのではなく、お互いをコーディネートしていくような能力、態度、姿勢が求められます。

具体的に言うと・・・

  • 障害者本人の支援ニーズや障害特性等と事業主の求める要因の双方を考慮し、それに応じた的確な支援ができること。
  • それぞれの事業所の社風やニーズを理解し、それに対応した支援が柔軟にできること。
  • 職場における障害者本人の不適応要因と、事業主の生産性、効率性のバランスを図り、過度な配慮が難しいことを理解すること。
  • 障害者本人が活躍できる業務、場所を見つけながら、事業所のチーム(組織)でサポートできる体制を築くこと。
  • ジョブコーチの一人よがりの押し付けにならないように気をつけながらも、粘り強く仕事ができるように教えること。

などが含まれます。

一度職場で仕事ができるようになったとしても、職場の環境や障害者本人の環境は変化し続けているので、時間の経過とともに問題や課題がでてくることがあります。そのような時にはナチュラルサポートへ移行しても、必要に応じてジョブコーチがサポートすることが職場定着に役立ちます。

ジョブコーチは、障害者の雇用と職場定着を図るため障害者と職場のニーズを把握し、柔軟に対応するスキルや資質が求められています。
障害者と職場のコーディネート

まとめ

日本におけるジョブコーチは、障害者が職場で働きやすい環境を整えるため、障害者と企業を支援する障害者雇用に携わる専門家や専門的役割を指します。米国の「Supported Employment(援助付き雇用)」が元になっており、1980年代後半に日本に紹介されました。

ジョブコーチは、職場適応援助者養成研修の修了者がなることができます。職場適応援助者養成研修は、高齢・障害者・求職者雇用支援機構や厚生労働大臣が認めるNPO等の団体で行われています。

地域障害者職業センターにいる配置型ジョブコーチのほか、障害者の就労支援を行う社会福祉法人等に所属する訪問型ジョブコーチ、サポートする障害者と同じ企業に所属する企業在籍型ジョブコーチ、地方自治体が独自に開催している研修を受講して就労支援に携わるジョブコーチや各所属先においてジョブコーチという職制のもとに活動している人もいます。

障害者雇用は、いろいろなバックグラウンドがある人たちが関わる仕事です。そのため、ジョブコーチは、障害者本人、企業のどちらかに偏るのではなく、お互いをコーディネートしていくような能力、態度、姿勢が求められます。

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