知的障害者を雇用するために工夫できるポイントとは

障害者雇用のサポート

障害者雇用するということは、障害者手帳を持っている人を雇用する必要があります。障害者手帳には、身体、知的、精神とあります。障害者と普段接する機会が少ない企業の人事担当者と話していると、「うちの会社には知的障害者の人ができる仕事はない」と、はっきり断言される方もいらっしゃいます。

しかし、たくさんの知的障害者が働いている職場を見てきて、また、たくさんの知的障害者が学ぶ特別支援学校を見ていると、彼らの能力を活かせるかどうかは、周囲にいる職場の人の配慮や教えるスキル、マネジメント力が大きいのではないかと感じることがおおくあります。(もちろん、知的障害者が働くのが難しいと思う職場や事業所も中にはありますが・・・。)

今回は知的障害者がどのような特性をもった人たちなのか、また、知的障害者社員が活躍している職場では、どのような工夫がされているのかを見ていきたいと思います。


読み書きの能力

知的障害の特性

知的障害は、知的な能力が、IQ70以下で、コミュニケーション、社会的スキル、実用的な読み書き、計算等で何らかの制約をもつとされています。IQは100が平均ですから、知的障害児・者は、平均よりも何らかの点で苦手さが見られる場合が多くあります。

知的障害の定義については、その時代により解釈が変化していますが、一般的な定義としては、心身の発達期(おおむね18歳まで)に何らかの原因による障害で、一般的に知的機能が明らかに平均より低く、生活上の適応障害を伴っているものとされています。知的障害の定義の変化については、別の機会に紹介したいと思います。

では、何らかの点で苦手さや難しい点があるので、働くことが難しいのではないのかというと、そんなことはありません。仕事はもしかしたら一般と比べるとゆっくりかもしれませんが、まじめに与えられた業務に取り組むことや、素直に指示を聞けること、応用は苦手であるものの、決められたことは定型どおりに業務をこなせる点などを活かして、知的障害者が活躍できる業務は多くあります。

とはいっても、一般的な新たに業務に携わった人に教えるように業務指示や、伝達をしても難しい場合があります。特に、導入部分では、ちょっとした配慮をしておくと、ぐっと一緒に仕事しやすい環境や雰囲気をつくることができます。

障害者雇用の仕事

専任者、担当者の配置をおこなう

慣れない環境の中で、いろいろな人からの説明や指示をうけると混乱してしまうことがあります。企業の人は親切心から、「わからないことがあれば、誰にもでも聞いてね」と言ってくださることが多いのですが、知的障害者からすると、だれに相談すればよいのか迷うことになります。

また、業務に直接関わっていない方に質問や相談をしてしまって、周囲のスタッフの方の業務の手を止めてしまったり、普段業務に携わっていない方から教えてもらうことによって、いつものやり方でないことを教えてもらったりすることも見受けられます。周囲の人間がよかれと思って行っていることが、逆に知的障害者に覚えるのが難しい状況をつくりだすことにもなりかねないので、特に当初は、専任者、担当者をはっきりさせ、相談、質問できる体制をつくるとよいでしょう。

このような専任者、担当者のことを障害者雇用の中では「キーパーソン」と呼んでいます。担当している業務に精通している人であり、かつ知的障害者に業務を教える担当者として配置すると、職場の他のスタッフの人も、知的障害者自身にも仕事をしやすい環境をつくりやすくなります。

マニュアル

作業指示や伝達事項のだしかた

ついつい使ってしまっているのが、「それ」、「あれ」などの代名詞です。特に、スタッフの入れ替わりが少ない会社や年齢層が高い会社では、頻繁に使われていることがありますが、この表現は知的障害者にとってとてもわかりにくい表現です。また、抽象的な表現やどちらにとってよいか迷ってしまう表現などもしないほうがよいでしょう。

例えば、業務をして一段落したところで、休憩をとってもらうときに、「5分~10分くらい、休憩してください。」と声をかけていただくことがあります。本人の意思や調子に配慮していただいての表現なのですが、これが知的障害者にとってわかりにくい表現となることもあります。

「5分」と「10分」の休憩、この意味は「少し休憩とっていいですよ」という意味ですが、「10分」は「5分」の2倍です。その「少し」や「だいたいこのくらい」を判断することが苦手な人が多いので、こういう時には、「5分休憩しましょう。」と指示をだすほうが、本人にとってもわかりやすく、落ち着いて休憩をとれることが多いように感じます。

肯定的な指示をだすことも効果的です。「○○をしてはダメです」ではなく、「△△をします」という感じです。例えば、自閉傾向のある知的障害者は、ピョンピョン飛び跳ねることがありますが、「飛び跳ねてはダメ」というのではなく、「歩きます」と言ったほうが、本人に受け入れやすくなります。ダメなことを指摘や注意するのではなく、望ましい行動を示してあげると効果的です。

仕事の合格ライン

業務などの教え方

具体的に・・・・

実際に見本をやって見せて、次に本人にやらせて理解を確かめるという方法は、とても有効です。口頭で説明して理解できたか聞くと、理解していなくても「わかりました」と反射的に答える人も多くいます。本当に理解できたか、自分でできるかどうかは、実際にやって見せて確認するとよいでしょう。また、一緒にやってみてできれば、一人でやらせてみて、その反復を行うことで習得することがしやすくなります。

正確に・・・・

よく知的障害者が一生懸命にやった仕事だから、今の時点ではとりあえず合格とする人がいます。しかし、そのように教えていると、教えられた知的障害者は、その程度の完成度で大丈夫なんだと認識してしまいます。また、合格の基準が甘いと、後で職場の他のスタッフが、もう一度見直しをかけたり、二度手間になってしまうこともあります。

初めに設定した合格ラインが基準になります。(後での変更は、かえって彼らに混乱を招くことに繋がることも多いです。)初めは時間がかかるかもしれません。ゆっくりでもいいので、合格の基準は曖昧にせず正確に教えるほうが、結局、職場のためにも、障害者本人のためにもなることが多いです。急がばまわれではありませんが、継続しているとだんだん慣れてきてスピードもでてきますので、正確に教えてください。

仕事をする仲間

一貫して・・・・

同じ説明、同じ方法で、反復して教えると、彼らにとって覚えやすくなります。逆に別の説明や違ったやり方で教えると混乱します。ですから、特に初めのうちは、特定の専任者、担当者から教えることが適しているといえます。

例えば、業務を行うときにマニュアルを用いて教えると効果的ですが、ある人は「マニュアル」と呼んでいるものが、別の人は「手順書」と呼んでいるかもしれません。状況の雰囲気や文脈を読み取ると、マニュアルも手順書も同じものだと一般的には気づくのですが、知的障害者の中には、それがわからない場合もあります。ですから、同じ文言で、同じ手順通りに教えてください。

それには、前もって手順を確認したり、マニュアルを作成しておくなどの準備をすることが不可欠です。その場で慌てて教えると、手順が一貫していなかったり、文言が一貫していなかったりして、混乱を招くことにつながります。受け入れ側の不手際で、知的障害者が混乱を招かないように気をつけたいものです。

繰り返して・・・

練習しても時間はかかります。しかし、マニュアルなど活用し、同じ方法で、正確に、繰り返すことにより、習得できますので、少し長い目で見ながら取り組むとよいでしょう。あまりにも成長が見られず、状況が厳しい場合は、手順がもっと簡単にならないか、マニュアルの表現が難しくないか、業務自体があまりにも本人の能力とかけ離れていないか等、見直すことが必要かもしれません。

数えられないと仕事はできない・・・?数が数えられなくても、文字が読めなくても仕事ができる工夫

数がかぞえられないから仕事ができない、文字が読めないから仕事ができないと決めつけていませんか?少し工夫すれば、数がかぞえられなくても、文字が読めなくても仕事はできます。

例えば、数をかぞえるのは苦手でも、検品が得意な知的障害者がいます。良品とそうでないものをしっかり見分けてくれるので、細かな機械部品や精密部品を扱う工場で活躍している知的障害者はたくさんいます。

もちろん検品した数をかぞえる必要はあるので、もしかすると10個に仕切ってあるトレーを横に置き、良品と検品したものをトレーに入れ、それがいっぱいになったら、次のトレーに入れるという方法をとれば、数を数える必要はなくなるでしょう。

知的障害と時計また、別のやり方としては、検品が終わると、その後にカウンターを押して数がわかるようにすることができるかもしれません。

時計が読めない知的障害者もたくさんいます。その場合は、砂時計やタイマーを利用して、正しいタイミングや必要な時間の長さを測ることができるかもしれません。

重さをはかるときに、メモリの数字が読めないようであれば、所定の重さのメモリの位置にテープを貼り、そこに針が合わされば所定の量を測ることもできます。

文字が読めない場合はどうでしょうか。文字ではなく、わかりやすい絵や写真を使うことができるかもしれません。

知的障害者が全社員の7割を占めるチョークの会社

川崎市にある日本理化学工業はチョークの製造メーカーで、全80名の社員のうち、7割を超える60名が知的障害者です。そして、知的障害者のうち半数近くが「重度」です。
ここでは、知的の重度の社員でも業務ができるような工夫がたくさんされています。

時計が読めなくても砂時計でミキサーをまぜる時間などを計測できます。また、できた製品は検品をしますが、治具(ジグ)にチョークを入れるだけで、曲がりや長さ、太さの検査ができます。

治具(ジグ)は、加工や組立ての際、部品や工具の作業位置を指示・誘導するために用いる器具の総称で、知的障害者が仕事をするときに業務がしやすいようにサポートするツールです。

色分け秤おもりや原料の容器、計量容器には、チョークの色がついていて、目盛りが読めなくても正確に計量できるように工夫されています。

知的障害者の雇用工夫

まとめ

知的障害者は、コミュニケーション、社会的スキル、実用的な読み書き、計算等で何らかの苦手さはありますが、彼らが仕事をしやすいように少し工夫すれば、かなり多くのことができます。実際、多くの会社がその体験をしてきています。しかし、知的障害者が活躍するためには少しの工夫、専任者、担当者の配置をおこなうこと、指示の出し方を工夫すること、具体的に、正確に、一貫して、繰り返し教えることが大切です。

数がかぞえられない、漢字が読めないから、仕事ができないと決めつけてしまうのは簡単です。でも、本当にそうでしょうか。職場に新しい人がきたら、周りの人が仕事を教えていないでしょうか。誰でもはじめての職場で仕事するには、その職場のルールややり方を教えてもらわなければ、仕事をすることは難しいはずです。知的障害者の能力を活かせるかどうかは、周りにいる職場の人の配慮や教えるスキル、マネジメント力が大きな影響を与えているのです。

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