企業における障害者雇用、障害者は戦力になりうるのか

障害者の戦力化

障害者の働く職場の職場改善好事例

9月は障害者雇用月間として、障害者雇用の推進を図り、障害者の職業的自立を支援することに力をいれる月となっています。そのため9月は、障害者を雇用する企業をはじめとして、社会に広く障害者雇用について知ってもらい、障害者の職業的自立を支援するため、厚生労働省、都道府県が、さまざまな啓発活動を展開しています。


その一環として、毎年障害者の雇用促進と職域拡大のための職場改善好事例が9月に発表されます。職場改善好事例は、各企業で創意工夫された雇用管理、雇用環境等の改善事例の募集を行い、改善好事例集が公にされることで、障害者雇用に対する理解の向上や促進に役立っています。また、障害者雇用支援月間の行事として、障害者を積極的に雇用している優良事業所等の表彰を行います。

平成27年度障害者雇用優良事業所等厚生労働大臣表彰受賞者を受賞したヤオコーの事例が日経ビジネス2016年9月号に掲載されていました。ヤオコーの事例から、雇用した障害者が戦力となりうるのかについて見ていきたいと思います。

小売業の障害者雇用

ヤオコーは、関東一都六県に150店舗を構えるスーパーマーケットです。各店舗につき1~2人の割合で障害者雇用をしています。現在、法定障害者雇用率は2.0%ですが、ヤオコーの障害者雇用率は2.28%と法定雇用率を上回り、障害者であっても他の従業員と同じように育成し戦力として活躍しているそうです。

とはいっても、はじめから障害者を育成して、戦力とできていたわけではありませんでした。もともと、ヤオコーが障害者雇用を始めたのは15年以上前にさかのぼり、当初は他の企業と同じように、法定雇用率に届かず行政指導受けたこともあったそうです。

ヤオコーでは、障害者雇用の改善を図るために、特別支援学校や障害者就労支援センター、障害者職業センターをはじめとした各種支援機関などを活用し、雇用を促進していきました。はじめは行政指導を受けるくらいですから、雇用納付金を払っていたものと思われますが、現在では、年800万円ほどの障害者雇用調整金を支給されるまでになったようです。

スーパー

雇用納付金とは

障害者の雇用の促進等に関する法律において、障害者雇用率制度が設けられており、企業は、雇用している労働者数の2.0%以上の障害者を雇用することが求められています。

障害者を雇用するには、作業施設や設備の改善、特別の雇用管理等が必要となるなど障害のない人の雇用に比べて一定の経済的負担を伴うこともあり、障害者雇用率制度に基づく雇用義務を守っている企業とそうでない企業とでは、経済的負担のアンバランスが生じます。

そのため障害者の雇用に関する事業主の社会連帯責任の円滑な実現を図る観点から、経済的負担を調整するとともに、障害者の雇用の促進等を図るため、事業主の共同拠出による障害者雇用納付金制度が定められています。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、事業主から障害者雇用納付金を徴収するとともに、その納付金を財源として障害者雇用調整金、報奨金、在宅就業障害者特例調整金、在宅就業障害者特例報奨金及び各種助成金の支給を行っています。

障害者雇用率(2.0%)未達成の事業主は、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて1人につき月額50,000円の障害者雇用納付金を納付しなければならないこととされています。障害者雇用納付金制度の改正により、平成27年4月1日からは、常時雇用している労働者数が100人を超え200人以下の中小企業事業主に納付金制度の適用が拡大されました。

常時雇用している労働者数が100人を超え200人以下の事業主については、障害者雇用納付金の減額特例が適用されるため、平成27年4月1日から平成32年3月31日までは、不足する障害者1人あたりの納付金は、月額50,000円を40,000円に減額されます。

障害者雇用調整金とは?

常時雇用している労働者数が100人を超える事業主で障害者雇用率(2.0%)を超えて障害者を雇用している場合は、その超えて雇用している障害者数に応じて1人につき月額27,000円の障害者雇用調整金が支給されます。この支給される財源は、障害者雇用納付金が元になっています。

障害者雇用を受け入れる拠点の戸惑い

ヤオコーで障害者雇用をはじめた当初、店舗側からは、障害者の受け入れを断られることが多くありました。その理由は、店舗側が雇用する障害者が人件費に見合う業務がきちんとできるのかという経営リスクを不安に感じていたからです。

そのため障害者を各店舗で採用するのではなく、本社の人事部で採用することとし、各店舗は人件費の負担はゼロで障害者の労働力を確保することができる体制でスタートしました。多くの店舗や拠点を構える企業では、各店、各支店に何人と障害者の人数を割り当てるケースも多いのですが、なかなかうまくいかないケースが見られます。その理由は、それぞれの拠点において、売上や管理費、利益を見ていきますが、どこでも利益を上げるために支出となる人件費を減らしたいと考えているからです。

障害者が携わっている業務は、商品陳列や青果・生肉加工補助等、各個人に適した業務を担当し成功体験を積むことで、モチベーションを維持できるようにしているそうです。このように社内の中で障害者雇用を進める仕組みや体制を整えて障害者雇用に取り組んでいったことがわかります。

障害者雇用

障害者と一緒に働く社員の理解を深める

障害者雇用を進めていくときに、障害者社員に仕事を覚えて任せられるようになるまでは、やはりある程度の時間やマンパワーがかかるのは事実です。経営層や人事部の方は、障害者雇用が法律で定められており、障害者雇用を進めるためにいろいろな情報収集やセミナーなどに参加しているので、障害者雇用の概要を知っているものの、実際に障害者と一緒に働く部門のスタッフに伝わっていないケースも多く見られます。

障害者雇用をトップダウンで進めることは、一つの方法でもありますが、現場で一緒に働く社員がなぜ障害者雇用が必要なのか、障害者社員にどのように対応するのか、人事部や上司がどのようにサポートしてくれるのかを伝えないと、現場のスタッフが障害者雇用の負担を感じている様子を見聞きすることが少なからずあります。ぜひ、障害者と一緒に働く社員の方に障害者雇用についての目的を伝え、理解を深めてもらいたいと思います。

障害者と一緒に働く社員の理解は、なぜ必要なのでしょうか。それは、一緒に働く社員が理解していないと、せっかく時間をかけて障害者雇用をしたとしても、退職に至るケースが良く見られるからです。

社内理解

障害者雇用の職場定着

ヤオコーの障害者雇用で素晴らしいのは、定着率の高さです。障害のある従業員のうち勤続5年以上を占める割合が54.4%と、半数以上の障害者が5年以上定着しているそうです。きっと社内や店舗で障害者雇用に関する理解を深める機会や風土が企業内で生み出されているのではないかと思われます。

また、障害者が携わる業務の難易度を少しずつ上げていくことで、戦力として活躍しており、今では店舗の現場から障害者のある従業員をもっと配属してほしいとリクエストされるようになっているそうです。これまでに採用された障害者が現場で高く評価されている結果の表れとなっているようです。

同じ障害者雇用を行うと言っても、企業によって障害者に求めることと、働く障害者が企業に求めることがマッチしていないケースは、職場定着が難しくなるケースが見られます。

例えば、ある企業では障害者雇用率を達成することが最優先課題であり、雇用率をカウントできる週30時間勤務をしてほしいと考えています。また、ある別の企業では、ダイバーシティを重視しており、障害があってもなくても同じような条件で働くことを重視しているとします。

はじめは体力的な点から6時間くらいの勤務から始めたとしても、いずれ8時間勤務したいと思っている障害者が、もし前者の企業を選んでしまったら、途中から物足りなさを感じてしまい、退職に至ってしまうこともあります。

職場定着のために行える取り組み

ヤオコーでは、職場定着の取り組みとして、店舗担当者と年2回の育成面談、社内のジョブコーチと年1回から2回の巡回面談を行っています。直接、近くでマネジメントしている人からのフィードバックとともに、少し間接的な人とも話せる機会を作ることにより、本人の悩みなどを聞き出すことができています。

ジョブコーチは、いくつかの種類がありますが、企業内で活躍するジョブコーチは、企業在籍型職場援助適応者(ジョブコーチ)と呼ばれ、サポートする障害者と同じ企業に所属するジョブコーチです。専任ジョブコーチとして活動するジョブコーチもいますが、管理的な業務と兼務するジョブコーチもいます。

また、店舗担当者やジョブコーチとの面談を地道にていねいに本人とコミュニケーションをはかることが、育成と定着に結びついているようです。他にも職場定着のために行われているのが、全店舗で働く障害者を対象とした年1回のフォロー研修です。グループワークや発表を行ったり、仲間との交流や情報交換によって、働き続ける決意を新たにしている従業員も多いそうです。ちなみにこの取組は、渉外社員の声から生まれたそうです。

さらに、2年前から勤続3年、5年の従業員への表彰制度も導入しています。職場で受け入れられている、活躍できる場があるということを障害者社員が実感し、仕事の戦力として活躍する一連の取り組みが実を結び、障害者の社員が昇格しています。

障害者社員の力を引き出し、戦力とするためには、障害のある社員と真剣に向き合うことが大切です。障害者社員も、会社にとって必要な人材と認められることにより、モチベーションが上がり、離職を防ぐことにもつながります。障害者が働きやすい職場は、すべての従業員が働きやすい職場ともなり、結果的に企業全体の組織力が強くなり、従業員が定着する企業となり、社会からの信頼が高まることにつながります。

表彰制度

まとめ

障害者が戦力として活躍できるのかという点について、考えてきました。小売業のヤオコーの事例からは、障害者が携わる業務の難易度を少しずつ上げていくことで、戦力として活躍しており、今では店舗の現場から障害者のある従業員をもっと配属してほしいとリクエストされるようになっているそうです。障害者が十分戦力として活躍していることがわかります。

しかし、障害者社員が活躍するためには、ただ雇用しているだけではありません。企業としていろいろな仕組みや体制を整えています。例えば、採用は各店舗で行うのではなく、人事部として採用することや、面談、フォロー研修、表彰制度などです。このような地道な、かつ、ていねいな取り組みが、障害者雇用の定着につながり、離職の減少や障害者社員のキャリアアップにつながっています。

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